天下谷

 6月11日。

 過ごし易い陽気に恵まれた日曜日。
 気軽に釣りを楽しみたい人には特にありがたい気候である。ライトなアングラーがエントリーし易い休日、というわけで、修羅がベイトを漁るのに最適な日でもある。
 朕が今や降臨跡を捨て、新たなポイント探しに走っているということも知っているだろうから、登戸に行けばレジェンドⅡがここぞとばかりにベイトを捕食している様が見られるかもしれない。
 ぜひともその光景を見てみたい、というのはあるが、余計なプレッシャーを与えぬように、流れを追って釣り易い魚を求める方を選んだ。

 調布に向かい、昨年のニゴイポイント下流に入る。
 普段は何人かの釣り人が常に居るため避けている場所だが、今日は誰も居ない。
 フェイキードッグ、マニック、レンジバイブ、Bフォロワーといった自分的定番をローテーションしてみたが反応は得られず。
 このようなメソッドで釣るには彼方上流に見える瀬周りの方が良さそうだ。しかし、調布側からあの場所に入っていくのは不可能に思われる。
 エントリー可能な太い流れのある場所を、ということで五本松に移動。

 ポイントに着いたところ張横が居た。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 折り目正しく伝説式の挨拶をする。
 儒家ならずとも礼は重んじたいもの。そして、礼とはその様式よりも、根底にある心を理解することが大切なのだ。
 並んで張横と釣りをするのは珍しい。
 現在のバスフィッシング事情、ルアー業界、多摩川、東京湾シーバス、ニゴイの話題の他、かつて張横は伝説三輪氏の前でクランクベートで釣ったことがあるという話も出てくる。そんな経験をしていたのに今こうして無事にいるのは、当時は突き落としてやらなければならないほど追い詰められていなかったからであろう。
 喋りに興じながらもしっかりキャストは続けていたので、張横は度々見るという伝説アナザー氏が現れたとしてもキレられる恐れは無かった。
 限られたポイントに並び立つのが可能だったのは、メーンに狙う魚と用いるメソッドが異なっていたためだ。
 「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」という展開の中、レンジバイブへのアタリは確かに多かった。
 どうせスレでしょ、とハナクソをほじくりながら余裕をくれている朕に対し、スレかバイトかなんてのは釣り上げてから確認すれば良いことだろうと張横が指摘する。
 ごもっともなのだが、残念ながらその辺の緩さは生まれつきのものであってどうにもできない。
 やがて遂に朕が明確なストライクを捉える。
 走るのではなく、のたうつような引きにナマズと確信するがラインブレイク。
 トライリーン12lbとPE30lbの組み合わせにそんなことは無いと思っていたが、強引に外した根掛りや、ライン強度恃みの強気のカバーコンタクトでラインが傷んでいたのだろう。
 張横はたとえ強いラインを使っていてもラインチェックは神経質なまでに行うとのこと。
 「ラインチェックアタリマエ~」
 アルシンドを真似たミラクルジムの映像を思い出す朕であった。
 その後、再びストライクを得たものの、今度は手前バラし。
 「バラしまくりっすねえ」と笑う張横。
 そう言われては、新川で鍛え、トップウォーターロッドにラバージグという変態タックルでバスを釣り、野池のフローターフィッシングではあまりにもポップXで釣るのでポップXを封印させられた経験を持つ僭称釣りウマのガラスのプライドは粉々である。
 そこで「オレだってちゃんとやってるよ!」と泣きキレてしまうのである。
 「ちゃんとやってるんなら釣ってますよね~」と、張横は伝説式に対する回答を出す。
 結局ここで釣ることはできなかったが、伝説の風はここでも吹き荒れるのだった。

 張横が帰宅するのを機に、朕も移動することにした。
 今日はまだ君子への挨拶が済んでいないためである。
 混沌氏の術を修める夏侯章かこうしょうに謁見するには、公孫戍こうそんじゅに取り次いでもらうのが手っ取り早いのだが、朕も無名のあらきに還ることを望む者なので、みだりにテクノロジー頼みの連絡手法には依存せず、己の意気と足で求めることにした。
 そろそろ来ている頃であろう、と韓流ポイントに向かってみる。

 韓流ポイントに入ったところ、下野さんを発見。
 互いに距離を隔てていたので揖の礼で挨拶したのち、釣り糸を垂らしながら君子が現れるのを待った。
 しかし、まったく反応を得られず、君子も従者も現れなかったので、再び流れを追い、堰下エリアに移動することにした。

 堰下エリアに下りてみれば、おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ状態。
 釣りをする上では好ましい状態ではあったが、はぐれ者が現れる気配が無いのはちょっと残念だった。
 また、調布や五本松に比べ、見えるコイ、アユ共に少ないという印象で、とりあえず瀬の落ち込み周辺を打ってみたがバイトどころか魚がどこかしらに当るという感触すらも無かったのでこのポイントを諦める。

 再び韓流ポイント。
 植野行雄がやってきて、次いで夏侯章が現れる。
 風向きの関係上、流れ以外に目印とするべきものを見出せず、そうなると徘徊してくる個体との偶発的事故の発生に賭ける釣り方しかやりようが無い。
 ひたすらCD7を巻き続ける朕と、デブセンで発射し続ける夏侯章。
 そのうちあまりの気配のなさに共に倦んできて、公孫戍の様子を見に行くことにする。
 公孫戍は流れの当るカバーで粘っている。
 朕は巻くのに飽きていたので、トップウォータープラグを投げ始めた。トップウォーターをやっていればとりあえずゲームをしているという気になれるからだ、というだけではない。
 これだけ光量が落ちてくれば、水中を巻いたり、ボトムを取ったりしているより、魚を寄せることが出来るだろう、という訳だが、ストライクを得ていたのはボトム寄りを攻める公孫戍の方だった。
 ぴったり40センチといった感じのナイスサイズ。
 今は降臨の年。
 功に対する賛辞は時代に即したものがよろしい。
 そこで朕は「韓流ポイントのバスはトルキーストレートでカバーを引いてくるのがパターン。つまらねえ釣りだ」と、伝説氏三輪式で僻んでやった。
 ところが公孫戍は寂しげな表情で首を振る。
 「今日はトルキーストレートじゃないんだな。センコーなんだよ…」
 何という日であろうか。
 魚が釣れなかっただけではなく、伝説式もしくじってしまうとは…。

 この日、混沌廟に詣ることはできなかったが、伝説アナザー氏ゆかりのコンビニエンスストアでささやかな“伝説たちを思う会”が開かれた。
 そんな一時に、匹夫はただコーヒーを飲むだけであったが、君子はソフトクリームを食しておられた。
 聖人は為さずして、しかしすべてを為しているという。
 今、不言の教化というものに触れた気がした朕は心が満たされ、今日のしくじりへの悔いを捨て去ることができたのだった。


テーマ : プロレス
ジャンル : スポーツ

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

登戸芸能

 6月10日。

 名物が現れなくなって久しい週末の登戸だが、セルマ&パティとホーマー軍団のごとき登場人物たちの、華無きソープオペラは見ることができる。詳細を描けば表現から品が損なわれるので詳しくは述べないが、伝説不在の今、ちょっとした楽しみになっている。
 そんな週末の多摩川を楽しみに過ごしていると、久しぶりに流浪のハンドメイドビルダー、ヂョイ兄いから、博多での釣果写真が届く。
 作品名“切り身”での釣果。
 魚丸ごと一匹では食べづらいのなら食べ易くして提供いたしましょう、といったところか。

 かくして迎えた当日。
 現在この一帯は正解の場所ではないと承知しつつも、修羅やはぐれ者が見られやしないかと降臨跡に向かう。
 また、先日、大きく水が動いた痕跡がみられたので、終わってる場所も息を吹き返している可能性が無いともいえない。
 いずれにせよ期待は出来ないが、見るだけは見ておこうという訳である。

 現地入りしてみると、ソープオペラの舞台はまだ開いておらず、名物の三輪車も見えなかった。
 上流側を見れば、字は玄徳の夏侯章かこうしょうと、もうひとつの伝説史官である公孫戍こうそんじゅが居り、更に上流には師匠と植野行雄が居た。
 「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 この地に於ける正しい作法である。
 師匠はオイカワを10匹、植野行雄は4匹釣っているという。小さいスモールマウスは居るとのことだが、この水を見る限りキャストする気にならない。
 一通り感触を話し合った後、朕と夏侯章は、ベイトが多く見えていたオペラ舞台下の様子を見に行くことにした。
 水は良さそうには見えないが、岸際、沖側ともにベイトの群れが居り、周辺のカバーを丁寧に通していけばペケニシモの反応ぐらいは得られるのではないかとやってみたが、バスからの反応はまったく得られず、結局リベラの話に興じていた。
 「玄徳どの、わたくしは肉300グラムとご飯普通盛りとビールで十分です」
 と、朕がいえば
 「なんだ、それだけか。だらしがねえなあ」
 と、伝説三輪する。
 曰く、夏侯章は今でも肉はキロアップ、ご飯大盛り二杯は可能だという。
 よもやそこまでとは…。
 朕は、
 「我が君、さすがです」
 と、ひたすら敬服した。
 特殊浴場に遊び、リベラで晩餐という夢は果たして実現するのだろうか。既に運命は定まっているのに、朕はその結果を知ろうともせぬまま、今日も妄想話を弾ませるのであった。
 そして、やはりここも違う、ということで韓流ポイントへ移動することにした。

 移動途中に下野さんとすれ違う。
 最下流部でペケニシモを一匹キャッチしたとのことで、朕は「何だ、一匹だけか。だらしがねえなあ」と伝説式でその功を讃えた。

 韓流ポイントの水は、やはり上流側より良質だった。
 これは川のつくりがそうさせている。
 ペケニシモのボイルも見られた。
 しかし、堰と堰の間をひとつの水域として見るならば、こことて現在は一級の場所ではない。
 やがて、公孫戍、夏侯章の他、セニョール、張横もやってくる。
 張横は先日、デスアダー6インチで流芯を打ち、47センチのスモールマウスを釣ったという。
 ソフトベートでの釣果でも6インチというサイズ、スラップショット使用で“男らし~釣り”ではないか、とのことだが安易に判定はできない。これもまた、次回、伝説審議委員会に俎上されるべき問題である。

 陽が落ち始め、ベートの浮いてくる様は盛んに見られたが、ごくたまにペケニシモのボイルがあるのみ。
 セニョールと張横が帰るというので「何だ、諦めるのか。おめえらには根性が無え」と、伝説式で礼儀正しく見送る。
 次第に北風強く、波立つようになってきたのでスプーンやスプリットショットリグといった繊細な攻めから、CDラパラやトップウォータープラグでの釣りに切り替え、投げ倒すことにした。
 しかし、結果むなしく。
 終了の時刻を迎え、それぞれの感触を聞いてみたところ、公孫戍はナマズの反応を二回得たがいずれもバラしてしまったという。
 勿論、「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」である。
 夏侯章といえば、今日は心に純白定まらず、迷走のままの終了。リベラのことが気になり欲に心が乱されてしまったのだ。
 これは、少私寡欲を上とする混沌氏の術を妨害してしまった朕の咎だということは明白である。ならば、その贖いもまたリベラで為されるべきであろう。
 釣れなかったことにより皆泣いていたのだが、ヘボいから釣れなかったという事実をことさらごまかすために「釣れなくても関係ありましぇ~ん」と、伝説式でおどけての解散とした。

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上古の夢

 6月8日。

 伝説界の高祖、王倫氏。
 彼無くして、多摩川にレジェンドの誕生は無かったといえよう。
 言うことは立派でもその実はからっきし、しかしプライドだけは異常に高いというキャラクターは王倫氏が確立したといってもいい。
 そんな高祖が収められたフィルムを成増花和尚の紅蠍が持っているという。
 どうにかPCで閲覧可能な状態に加工できないものか、というところだが、紅蠍のPC環境は昔のウィンドウズを使う朕より悲惨だ。ただ所有しているだけで機能していない、機能したとしても現在では使い途の無い20年前のマッキントッシュであるためだ。
 残念といえば残念だが、つとめて事を為そうとすればほとんどが失敗に終わるということを朕は重々承知しているので、時の進むに任せるのみである。
 王倫氏を再び見ることは、多摩川のレジェンドたちの降臨が起こるより困難な状況にあるといわねばならないが、伝説界の高祖が収められたフィルムが発掘されたことは、伝説愛好家にとって殷墟発見にも匹敵するインパクトである、といえば言い過ぎであろう。

 そしてこの日、雨の予報に期待して多摩川に向かってみれば晴天。
 調布水門ポイントから一帯を眺めてみたところ増水の跡。
 平地ではぱらつく程度に降った時もあったぐらいの感覚だが、山の方では堰を開けなければならないぐらいの量が降ったのかもしれない。
 今は平常時の水位に戻ったのかもしれないが、減水の動きはよろしくない。アユやコイの濃い様子は見えるが、このような時、魚は糧を得るより、生存への行動を優先するものだ。
 
 どうしても釣りたいのであれば多摩川全体を見て打つべきポイントを探すべきだが、「おめえには冒険心が無え」というわけで、手軽に移動できる範囲に少しでも可能性を感じられる場所を求めることにする。

 ということで五本松へ。
 太い流れが一度溜り、下流側のシャローフラットで散らされるつくりなので、この一帯を仮の最下流部として見れば、川が減水の動きに入った時、この一帯で留まる個体もいるはずだ。
 泳力の強いスモールマウスや他の魚種のことはわからないが、ナマズにはあてはまるだろうと考えられた。
 ということで、まとわりつくゴミやアオミドロに悩ませられながらも流芯を引いていたところ、レンジバイブでナマズのストライクを得られた。
 しかし、フッキングが甘かったか足元でバラし。
 「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」
 独り、アナザーギレである。
 陽が落ちてきて、そろそろ激浅の巻き返しにナマズの徘徊が見られるのではないか、と向かってみればポイントには先客あり。
 仕方が無いので、広範囲に渡ってチャギンスプークJr、フラットラップで流してみたが、反応は得られず。
 「ハードだってさんざん引いたさ!でも釣れなかったんだよ!」と、伝説三輪泣きしての撤退となってしまった。

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ジャンル : スポーツ

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輪廻三輪

 6月6日。

 先日、西湖でのライブベイト釣果を食らわせられたと思ったら、今度は河口湖でのライブベート釣果を送ってきた李立。
 「あいつは見込みがある。おめえもいろいろ教えてやってくれねえか」と、他人のことには関心の無い朕に、李立へのルアーフィッシング指南を伝説三輪氏に押し付けられたのは今から5、6年前か。
 バスフィッシングにはルアーだけではなくライブベートで釣るという楽しみ方もある、と提唱したのは朕であった。それが今や、朕がライブベイトでも釣ったことの無い50アップを釣り「ライブベートやるなら河口湖のほうが良いですよ」と言うようになった。
 そこで朕は、自分が優位に立っているという感覚が、自尊心、虚栄心を満たしていたのに、その中身の薄っぺらなことを見抜かれ、やがて敬意を持たれなくなっていったことが面白くなかったレジェンドⅡのように「そのビッグマウスがいつまで続くかな!?」と泣いた。

 同日、童威が和泉多摩川で登戸名物らしきものを見た、という報が入る。
 確証は無いが、伝説三輪氏と伝説アナザー氏に関する出没の疑惑。吹き止まぬ伝説の風。
 原題は忘れたが、デビッド・キャラダイン主演(?)の『キル・エヴィル』であったような、ちっぽけな舞台での、しかし壮絶な修羅とはぐれ者の対決がいずれ見られるのかもしれない。
 或いは人知れずその戦いは既に繰り広げられているとか、或いはそれぞれに帝国の再建を目指しているとか、或いは同盟に至り“釣りという低レベルな競走”に興じる“ガチ”な釣り人を見下しているのかもしれない。
 「プロレスについて考えることは喜びである」という言葉もあったように、レジェンドについて考えることは喜びである。

 この日は平日ということもあり、ひとまず伝説諸氏への執着は置き、短い時間でいかに手軽に釣りを楽しみ、かつ、釣果を得るかを優先することにした。
 ということで調布、五本松の様子を見に行く。
 
 アユの量が増え、サイズも大きくなってきたことにより、前回はまるで手ごたえを感じなかった去年のアユ瀬下に入ってみる。
 アユは豊富で、流れの合流点でバスらしきボイルを見、フェイキードッグにコイらしきバイトが出る。
 ここは粘るべき良いポイントかといえば違う。
 強い流れ、地形変化は明確にあるが、去年に比べると全てにおいて直線的、平面的である。
 もしかしたら魚はそれなりにストックされているのかもしれないが、フィッシュイーターの認識の誤りにつけこむのは難しい条件だと判断し、五本松に下る。

 五本松。
 「前にここで釣れたから」「前にこれで釣れたから」というわけで、レンジバイブをキャスト。水勢のある流れを釣るのに、これより優れたベイトを知らないということもある。
 キャストのたびにどこかしらに絡み付いてくる、流れに紛れたアオミドロは腹立たしいものの、今はここより良い条件の揃った場所が思い浮かばない。
 絡み付くアオミドロによってキャスト&リトリーブにストレスを感じていたが、強い流れの一帯に魚が濃いのは間違いなく、魚が当る感触も度々あり、やがてストライクの感触があった。
 時同じくして「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」の声。
 振り返れば蔡沢さいたくだった。
 ちょうどヒットがあった時に現れるとは気分が良い。しかしナマズではなさそうだ。
 30クラスのスモールマウス、はたまたニゴイか。とにかくバラさないようにと寄せてみればマルタ…。
 期待は裏切られたが、とりあえずとはいえノーフィッシュを免れることはできたということで安心。
 蔡沢に今日の様子を聞いてみたところ、堰より上のエリアでバスを釣ったという。
 写真を見せてくれたので、ここは昭和の荒技で。
 何と、ドッグXでの釣果ではないか。
 さり気なく芸達者の蔡沢。
 勿論「おめえこの前までドッグX全否定だったじゃねえか!」と、レジェンド式で称賛である。
 羨ましい釣果を得ていた蔡沢であったが、このエリアもやはりのっぺりとした印象のつくりで、粘りたくなるだけの強さは感じなかったとのこと。

 朕も蔡沢も、伝説の人たちのように絶望的にヘボいわけではないが、傑出して上手いわけでもない。環境を味方に付け、得意を活かせる条件を見つけられなければ釣れない、凡庸の釣り師である。
 故に、川のつくりが単調になってしまえば、魚の集まるポイントを絞れなくなり、たちどころに苦戦を強いられてしまう。

 ベート、流れを恃みに魚からの回答を待つが、朕はキャスティングでPE30lbを二回もぶち切ってしまったところで意気消沈。帰宅準備をしていた蔡沢に「おめえには根性が無え」と罵っておきながら、結局時同じくして撤退することになってしまった。
 偉そうなことを口にしながら、いちばん情けない結末で終える三輪氏のごとき過ちを犯してしまったことを恥じる朕であった。

 

テーマ : 仕事探し
ジャンル : 就職・お仕事

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

長溝剛だぁ

 6月4日。

 引き続き“釣りという低レベルな競走”に興じる。
 まずは先日悪臭に堪えきれず捨ててしまったPEラインを補充しなければ、ということで玉屋へ行く。
 ラインを巻き終え、昼食を摂ったところ、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気が押し寄せてきてうとうととしてしまい、気付けば15時を過ぎていた。
 今日は調布側を一流ししてから登戸、堰下と行くつもりでいたが、調布行きは諦め登戸に向かう。
 風は北風だったので降臨跡は捨て、最初から韓流ポイントに入る。

 ポイントには蔡沢さいたくの姿が見えた。
 伝説式一喝をくれてやろうと近付いていったところ、公孫戍こうそんじゅと、先日の読者氏も居た。
 「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 礼儀正しく伝説式で挨拶だ。
 昨日は岸寄りに見えたベートが、今日は沖側に見える。
 居ついている釣れない良型のスモールマウス、最大でも30程度のスモールマウスのボイルが見え、一帯にはある程度の数が存在していることが示される。
 朕は反応を得られずにいたが、公孫戍は表層にバスをコーリングアップしていた。しかし釣れない。魚は居るが釣れないという困った状況である。
 そんな状況の中、読者氏がボイル打ちを成功させていた。ペケニシモではあるが誰も釣れていない時の一尾。
 妬ましくとも、ポイントを共有しての釣果のため「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」とキレることができない。
 その後は渋いまま時間が経過してゆく。
 流れが弱まったこと、長潮。釣りを難しくしている要因はあるものの、魚が居るのは確かなのだ。

 どうにも出来ないもどかしさにしびれを切らした朕は、ここであちこちに油を売りに行くことにした。
 公孫戍、読者氏、蔡沢にそれぞれの今年の多摩川の感触を聞き、伝説諸氏の逸話を語る。
 登戸名物を生で見たことが無いという蔡沢と読者氏。彼らは今後あの伝説を見ることができるのだろうか…このままでは朕が妄言を吐いているように思われてしまうのではないかと不安になる。
 そういえば今日は朕が、この人こそ君子と仰ぎ見る夏侯章かこうしょうに挨拶していない。
 また、混沌氏の術を修めている人なので、例え釣れていたとしても記録しておく機器を持っていないのだから、誰かが介添役を務めなければならないだろう。
 夏侯章を訪ねると、近くに公孫戍が居た。記録係は公孫戍が務めてくれるだろう。
 夏侯章には臣下としての礼を済ませ、朕は環境を味方につけられない韓流ポイントを諦め、堰下を目指すことにした。
 強い流れのはっきりとある場所のほうが、投げて巻くだけの釣りを成功させ易い、ということだけではなく、まだ見ぬもうひとつの伝説探しの範囲を拡げるという目的もあってのこと。
 読者氏がまた一匹追加したとのこと。
 朕が青年だった頃に見ていた『千夜釣行』を少年の時分に見ていたというだけあって、そのキャリアの長さと伊達ではないスキルが窺えた。

 堰下に入る。
 堰直下のプールには今日も無数のアユ、コイ、ニゴイの姿が見える。太い流れの中に居るアユは、ここでも緩みに居るアユより格段に大きい。
 ポイント対岸にはアングラーが居たが、この程度の数ならスポットが被ることもなく、かなりゆとりのある状態の中釣りができた。
 あとは魚食魚の到来を待つばかりである、としばらくキャストをしていたが、魚のからの反応を得られないまま、やがて北風が強まりだす。
 日没過ぎまで様子を見るつもりでいたが、この風は韓流ポイントのシャローフラットが生きてくるものに思われた。
 そして何より、今日はここでポストイットするべき出来事が起こりそうもない。
 躊躇することなく韓流ポイントに戻る。
 
 蔡沢がまだ粘っていたので様子を聞いてみる。
 今日はまったく反応を得られていないとのこと。
 ここはこれまでの経緯、この日の全体的な環境について鑑みることなく、また自分自身も釣るための手立てが思い浮かばぬのにもかかわらず「何だ、釣れてねえのか。だらしがねえなあ」と答えるのが礼儀である。
 
 下野さん、植野行雄もやってくる。
 植野行雄は今朝ボイル打ちを成功させ一匹釣れたとのこと。
 朝からやってるの?という問いに、自然な笑顔で答える植野行雄。
 本当に根性がある者は、自分に根性があるとか無いとかなんて考えたりはせず、ただ行動を貫くのみなのだ。そして、根性を説く修羅ほど、根性から程遠いところにあるものだ、と二つの対象を比べてみるとよくわかる。

 上流側に居た夏侯章がやってくる。
 今日はまったく反応を得られなかったという。
 釣れない釣りに倦んでいたので、朕がもし富貴を得たら、という前提の元に行動計画を練ることにした。
 大いに富んだなら川崎ではなく吉原が良い、と夏侯章から注文が入る。君子の言うことには説得力があるので異存は無い。中くらいに富んだなら川崎。いずれもリベラは絶対に外せない。
 小さく富んだなら川崎ですべてをまかなおうということでまとまる。
 リベラに行けないのなら二郎はどうか、と夏侯章は言ったが、あの近辺なら絶対龍盛菜館だ、と朕はつよくいった。
 伝説アナザー氏が健在なら「おしゃべりしてないで釣りしなよ!」とキレられてしまいそうな時間を楽しむ我々だったが、釣果をまったく諦めてしまったというわけではない。
 朕はひたすらCD7を、夏侯章はセンコーを投げ続けていた。

 公孫戍がやって来る。
 伝説三輪氏なら出したところでどうにもならない本気を出し、遂に釣果を得たとのこと。
 夏侯章が諦めたポイントに、ひとつだけ突出したカバーを探り出すことができたのだという。
 今回は写真無しのページになってしまうかと危惧していたが、それは避けられた。
 これは感謝したいところである、が、朕が決して使うことの無いヤマモトのワームで苦手とするライトリグでの釣果だということで、朕に三輪式で僻む資格は十分にあるだろう。
 そこで「韓流ポイントのバスはトルキーストレートでカバー通すのがパターン。つまらねえ釣りだ」と、伝説三輪語録をアレンジして用いた。

 20時を迎える。
 遂に連続ボーズ無し自慢が途絶えた夏侯章。
 「オレが考え無しにやってると思うか?バカヤロウ」
 三輪氏とビートがひとつになったレジェンドプレミアをキメる。
 二日連続ボーズの朕は「おめえは一軍、オレらは二軍。そういう考えやめねえか?オレたちそもそもそういう付き合いだったか?」と三輪式で泣いた。
 いつでも自分を貴く見せようとするレジェンドⅡだったが、その噛みつく泣き声は、どこかすべてが負けていた。

テーマ : スペイン語
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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