聖王の帰還

 9月30日。

 雨続きの日々も終わり、そろそろ水勢も落ち着いてきているだろうということで、この日は江三子や李立と合流前に宇奈根に入ってみようとしていたが、昼食を終えたところ、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気のため、一寝入りしてからの出発となり、宇奈根行きを諦める。
 既に公孫戍と夏侯章は登戸に到着しているようである。

 登戸オペラ座前。
 ソープオペラは開催されておらず、登戸名物の三輪車も無かった。
 降臨跡一帯には伝説三輪氏のベイトが濃かったが、ベイトを漁っている様子は見られず。
 ベイトの群れの中に公孫戍、夏侯章、セニョール、蔡沢、師匠の姿あり。
 朕が居なくても、レジェンドⅡのヘボっぷりを知る人物がこれほど居ては朕が居なかったとて降臨は厳しいか。
 更には三輪氏の天敵の一人、李立もやってくる。
 ここで伝説降臨の希望は完全に断たれてしまった。
 
 今日の様子はといえば、夏侯章がオペラ座下でスモールマウスを一匹キャッチしたという。しかし、写真が無い。
 そこで朕は「みんな夏侯さんは上手い上手いっていうけどよお、あの人本当に上手えかあ?」と、降りてこられなかったレジェンドⅡの代わりに僻んでやった。

 琵琶湖ポイントのプレッシャーは高く、釣り人の行き来も激しい。
 アユの群れは少なくなく、李立がライブベートにしてキャストしていたが、あらゆる魚種の反応も得られなかったことにより、朕と李立、蔡沢は韓流ポイントの様子を見に行くことにした。
 この間、公孫戍はBスイムトリガーでウルティモペケニシモをキャッチしたとのことで「男らし~釣り」と、伝説三輪式アピールをしていたが、ブレードクロスシリーズはバギーのおっちゃんが認めない、使いどころがわからねえベイトであることを忘れているようだ。
 オペラ座は場末姫と新参のキャラクターたちで賑わっており、彼らの目を避けられる距離を置いて追放者が独演を行っている様子が見えた。
 登戸第一の名物は見られずとも、名物のひとつは見ることができたので、降臨跡に来た甲斐はあったといえる。

 韓流ポイント。
 昼には水が動いていなかったと聞いていたが、今は流れがある。
 公孫戍と夏侯章もやってくる。
 先ほど、オペラ座下で、セニョールがスモールマウスをキャッチしていたとのこと。これも写真が無かったので伝説式の僻みで応じるべきだが、釣った本人が撤退してしまったので噛みつくことが出来ない。
 それなりに釣れる日なのだな、と安心し、新川で鍛えた本気を実釣をもって示そうとする朕であったが、まずストライクを得たのは李立だった。
 李立の俗物化は著しく、かつての煌きは損なわれてしまったが、それでも釣りに関する感性、技量は相変わらず冴えている。
 陽が落ちる頃、蔡沢が帰るというので「何だ、もう諦めるのか。おめえには根性が無え」と、礼儀正しく送り出してやった。
 再び李立がバイトを捉える。
 朕は「突き落としてやろうか」と、伝説三輪式に泣いてその功を称えた。

 20時が近い。
 反応を得られずここまで来た朕は、釣果を諦め、ラインを解き始めていた。
 その時、夏侯章が「ホイッ!」と、雑なエスパー伊藤の物真似をする。
 何事かと思えば、バイトを捉えていたのである。
 長い魚体に、コイかナマズか、と皆で言い合っていたが寄せてみればナイスサイズのスモールマウス。
 なかなか大きいので測ってみるかとメジャーを当ててみれば46センチ。
 50センチには届かなかったけれども、混沌氏の術を体現してみせたことにより、先週地に墜ちた君子の権威は回復し、ここに居合わせた者は皆跪き「我が君」と、夏侯章への恭順の意を表した。

 恋するコンビニはサンクスからファミリーマートになるという。
 冷え込みと空腹に侵された今、休業は辛いが、店がリニューアルされ、恋するに値する女子店員でも入ってくれれば伝説出現率も高くなろうというもの。
 大事の前の小事。ここは堪えるべきであろう。
 空腹に耐え、通りを眺め続けるが、この日は遂に伝説式疾駆は見られず。いっそ登戸名物の三輪車でも駆け抜けていってくれないかと祈る一同。
 しかし、すべての望みはむなしく時間一杯となってしまった。



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孟津への道

 9月28日。

 深夜から朝にかけてまた雨が降った。
 宇奈根は増水で流れが強くなりすぎ、釣りがしづらくなっているだろうから、と捨て、登戸に向かうことにした。

 オペラ座に着いて歩き出したところ雨粒が当った。
 また雨か…と、不安がよぎる。
 北風が吹いているならこちらの方が良好だろうということで韓流ポイントに入ることにする。
 
 人工池の向こうに公孫戍こうそんじゅらしき人影が見える。凝視したところ公孫戍であると確信できたので、朕は「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、ポイントを横取りしたところでしょせん釣れない人のごとく大音声に呼ばわった。
 更に、ポイントに着いてみると、先日、庶民に落とされた夏侯章かこうしょうも来ていた。
 様子を聞けば、まだ釣れていないというので「何だ、釣れてねえのか。だらしがねえなあ」と、もっともだらしがねえままに釣りという低レベルな競争を卒業してしまった人のように罵った。

 小雨交じりの北風の中、伝説語録のやりとりとともに続けられる探りの作業。
 流れはあるが、風にラインを取られ、ボトムのカバーを拾っていくのが困難であったため、朕はボトムの釣りを中断し、風の当るシャローをレンジバイブで巻いていたが、反応が出ることは無く、ヤマモト・イモを丁寧に沈めていた公孫戍が最初のストライクを得る。
 「突き落としてやろうか」と、泣いて凄むいとまも無く、夏侯章が続く。
 こちらはスティッコー+によるものだった。
 よほどのイレギュラーでも発生しない限り、やはり流れの当るカバーにワームをコンタクトさせる釣りが堅いのだな、ということで、朕は現状で最もボトムの変化を掴みやすいタングステンシンカーのアンダーショットリグを組んで二人に続こうとした。
 しかし、次に反応を得たのは公孫戍だった。
 今度はスティッコーへのヒット。
 この時、皆雨に濡れ、風に晒され、辛さを覚えるようになっていたが、釣れているだけにやめるにやめられないでいる。
 いずれ朕も、と集中力を保つことに努めていたが、今度は夏侯章がキャッチ。
 再びのスティッコー+。
 ここは根性で…という場面。次にストライクを得たのは公孫戍だった。
 バイトすら得られずにいた朕は一番に耐えきれなくなり、ここで僕たちは今恋をしているコンビニへの避難を提案。
 「何だ、もう諦めるのか。おめえには根性が無え」と、伝説三輪式に則りつつも、公孫戍、夏侯章共に撤退に同意。

 いつもより早い、恋するコンビニでのアフターフィッシング。
 店頭の告知を見れば、明日から10月12日まで改装のため休業になるという。
 我々はその間の伝説式疾駆待ちポイントを探さなければならなくなった。
 ここに来るまでは冷やされてしまった体を戻すことしか考えられなかったが、休んでいるうちに伝説諸氏の思い出を語る余裕も生まれ、自分だけノーフィッシュだった朕は「おめえらは一軍、オレは二軍。そういう考えやめねえか、オレたちそもそもそういう付き合いだったか」と、三輪泣きしてこの日を締め括った。
 
 そして、解散してから気付く。次回疾駆待ちの場所については結論が出ていなかった、と。




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伝説の子ら

 9月26日。

 この日、李立も休日だという。
 合流しようということとなり、朕がこのところ気に入っている宇奈根へ行こうということになった。
 伝説三輪氏には「おめえには冒険心が無え」とか「おめえには根性が無え」と罵られていた者同士。お手軽な場所での釣りに異存は無い。

 現地入り。
 「おめえどこに居るんだよ!
 と、三輪式を決め、挨拶とする。
 相変わらず、見えるだけで釣れないシーバスが居た。
 水勢は依然強く、見えるスモールマウスは極めて少ないという状況だったが、短い区間にこれほど多くの生き物の活動する様が見えるのだから、ここが近所で最も良好なポイントのはずだ、と腰を据える。

 我々は伝説の修羅直撃世代である。
 こちらの不手際で不利、不遇に見舞われようと、自分には落ち度が無いように持っていき、異常なまでに高いプライドを守る術を知っている。
 この日は手を尽くすも釣果を得られず日没を迎えてしまったが、まず、宇奈根への誘いを受けた李立が「おめえがいいって言うから来てみたけどよお…釣れねえじゃねえか!」と泣きキレ、朕は「オレだってちゃんとやってるよ!」と泣いて応じた。
 ボーズに終わるのは残念なことではあるが、三輪氏が遺してきた名言たちのおかげで、我々は楽しい時間を過ごすことができたのだった。

 李立の次回釣行可能日は土曜日だという。
 土曜日は江三子に会えるという楽しみだけでなく、釣りを終えた後は僕たちは今恋をしているコンビニで伝説式疾駆を見られる可能性もある。
 と、次の土曜日を楽しみにしての解散となった。


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アジュンマ・デスストーカー

 9月25日。

 昨日は雨の影響か、その水勢の前にやりきれずじまいだった宇奈根。この日はきっちりやり込んでみるつもりで出発。

 現地入りしてみると、昨日に比べれば若干水勢が衰えたかのように見えたので1/16シンカーを挿入したスティッコーでボトムを流してみた。
 濁りは取れたが、水圧は昨日と大して変わっていない感触。
 しかし、足元のテトラ帯に20クラスのスモールマウスの他、シーバスも見えるようになっている。
 魚は戻っているのだ、とキャストを続けてみたが、スピナーを追う超小型のスモールマウスを見るのみだったので、以前からチェックしようと思いながらそのままになっていた、登戸宇奈根間にある足モンキー場下のポイントを見に行くことにした。

 足モンキー場下一帯は度々コイ科をキャッチしてきたポイントでもある。
 これまではハードベートしか引いてこなかったので、釣れた魚はコイ科やナマズといったところだったが、小さなソフトプラスチックをカバーに絡めてやればどうか、と入ってみたところ、ポイントのフラット化が進行し、以前まである程度の水深があった所がカバーも消え浅い急流となっていたため、探りを入れることも無く登戸に移動することにした。

 登戸降臨跡に入る。
 ここで植野行雄に会う。
 釣り道具は持っておらず、笑顔でこちらに近づいてくる。
 タックルは?と尋ねると「今日はお散歩」との仰せ。
 トム・ハーリックのピーター・アーツ評「あいつはいつもニコニコしている。何を考えているのか知らないが、幸せなやつだよ」を思い出す。
 植野行雄はいずれ聖人になれるのではないかという資質がある。

 琵琶湖ポイントには誰も居らず、自在にキャスト可能が可能だった。
 アユやその他の小魚、ガニの姿が見られ、流れもじゅうぶんにあったので、じっくり探ってやろうとスプリットショットリグを流していたが、反応は得られず、ここで粘るだけの情報も得られず。
 これなら、流れはきつくルアー操作には難儀するが宇奈根の方が集中力を保てる視覚情報が多かった。
 というわけで降臨跡を捨て、移動しようとしたところ、メーデンがオペラ座付近を徘徊していた。追放者が居ないので“いい匂い”を待つにはお誂え向きなのだろう。

 再び宇奈根。
 スティッコーでボトムを転がし、飽きてはスピナーやワンダーを巻き、スモールマウスがやってくるのを待つ。
 17時を過ぎると、単発ながらボイルが起こり、30クラスのスモールマウスをばらす。
 ワームの釣りはやりづらいがここで正解なのだ、と日没まで粘り続けたが、その後は何事も起こらず、無念の納竿。

 帰宅後、この日、中野島エリアに入っていた公孫戍こうそんじゅより釣果写真が届く。
 この日は童威にも会ったという。
 登戸の水門工事でオペラ座が解体され、こちらで“いい匂い”がするとなれば、いずれソープオペラの舞台は中野島になるのではないか、と我々は予測した。







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哭士無双

 9月24日。

 日曜日の登戸―。
 伝説三輪氏の新川節、場末のソープオペラ、恋するコンビニ前を疾駆するもうひとつの伝説といった、この土地ならではのプレミアという楽しみがある。
 所謂、お金で買えない価値というものだ。
 また、先週、侯嬴こうえいの復帰も確認されているので、今日も夕方になれば来るかもしれない。
 何かと楽しみの控えている登戸エリアだが、まずは先日、雨が降ってきたことによって途中退場してしまった宇奈根に入ってみることにする。
 運動不足の解消と、伝説人へのプレッシャー緩和のため、鉄の自転車で出発。

 宇奈根入り。
 雨の影響が残っているようで水量が多かった。
 ポイントは変わってしまったかもしれないが、釣りにならないというほどでもない。
 普段から流れの強い場所だが、今日は更に流れが強く、ベート操作が困難だった。
 このような状況下では巻いて答えを導き出したいところだが、スモールマウスのハードベイトへの反応の悪さはこれまで幾度となく思い知らされているので、始めからボトムをドリフトさせながら辛抱の釣りを続ける。
 しかし、一切の反応を得られなかったことにより、エリア違いを悟り、スピナーを一流しした後、登戸に向かうことにした。

 登戸エリアに入り、韓流ポイント一帯を見渡せば、手マンポイントに何人もの釣り人が見えたので寄ることなく降臨跡を目指す。
 降臨跡には師匠が居た。
 今日はオイカワが4匹釣れただけだという。
 「何だ、それだけか。だらしがねえなあ」「オレだってちゃんとやってるよ!」と言い合って、ちゃんとやれてなかったためにだらしがねえ結果にばかり終わっていた修羅を懐かしんだ。
 小ブナ、小ゴイが調子よく釣れていたのもわずかの期間だけだったようである。
 11月にはオペラ座に水門が通るという。

 琵琶湖ポイントに入ってみたところ、足元のテトラに30クラスのスモールマウスが見えた。
 釣れない見えバスというやつだが、いくら脅かしても同じ場所に固執しており、やり方によっては釣れるのかもしれない。しかし、朕には手出し無用の魚だ、と無視し、目には見えない流れの絡むカバーにワームを通すことに集中する。
 
 下流側から、公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょう、セニョールがやって来る。
 オペラ座下のポイントに居たとのこと。
 今日はソープオペラが開かれていなかったようだが、セニョールが釣果を得ていたという。
 これを見て、朕は「多摩川のバスはワームでボトムドリフトさせるのがパターン。つまらねえ釣りだ」と、セニョールに欲しくもないルアーを無理矢理押し付けた修羅の物真似で僻んでやった。

 徐々に琵琶湖ポイントはハイプレッシャー化してくる。
 伝説三輪氏のベイトとなりそうな釣り人の他に蔡沢さいたくもやって来た。
 開封府城内の人は、北狄や、城外の町人、西方からの渡来人などと違い、どこか垢抜けていて、さらりと事を成し遂げる器用さが備わっている。先日配布したスティッコーで既に釣果を得ていただけでなく、この日も現れてから程なくして30半ばのスモールマウスをキャッチしてみせていた。
 ここに居合わせたもの皆、怒りの涙目で「突き落としてやろうか」と称えた。
 更に、張良が仲間を伴って現れる。
 先ほどまで韓流ポイントに入っていたが、釣れなかったとのこと。張良をして釣れなかったのなら韓流ポイントに手出ししなかったのは正解だったか。
 とはいえ、降臨跡も蔡沢が釣ったのちは何事も起こらない。
 とりあえず、夕刻、侯嬴が現れるかどうかを確認するまで続けてから次を考えよう、ということで降臨跡で粘ることにする。

 日没が近付く。
 侯嬴が現れることはなく、セニョールと蔡沢はここで撤退。
 朕と公孫戍は、この流れなら悶死もやむなし、と腹を括っていたが、夏侯章がどうしても韓流ケーポップポイントの様子を見てみたいという。
 夏侯章は登戸に現れる釣り人の中で、最も道に近いところに処る人物なので、その発言は尊重するべきである。
 「Don't think feel」
 という訳で、朕と公孫戍は君子の意向に従うことにした。

 韓流ポイント。
 流れはあるが弱い。
 少しでも流れの強い筋を、と探しているうちに朕は飽きてきて油を売り始めていた。
 そんな、気の抜けた朕を尻目に、公孫戍が流れの筋を捉え、キャッチに至る。
 更に、このポイントへの移動を主張した夏侯章も続いた。
 かくして、混沌氏の術の真髄を見たところで時間一杯となる。
 ノーフィッシュに終わった朕が、「釣れなくても関係ありましぇ~ん」と、偽りの剛毅さで締め括り、僕たちは今恋をしているコンビニへ行くことにした。

 恋するコンビニで、『バットマンVSスーパーマン』が千円天で売られていた。
 光文社マーベル、小学館マーベルとアメリカンコミックを愛好してきた朕は大いに興をそそられ、既に見たという公孫戍がコミック版『バットマン・ダークナイトリターンズ』が好きならありかも、と言うので購入。
 話題はアメコミ、映画の話となり、途中、夏侯章が理解不能の意を表し「話についていけぬ寡人わたしは馬鹿なのであろうか」と呟いた。
 朕は慌てていう。
 「そのようなことはけっしてございません。章子しょうしは至聖至明なまことの君子であらせられます。理解不能は我々の言葉に誠意が足りていなかったがゆえにございましょう」
 すると夏侯章は得意げに「誠意大将軍」といった。
 朕はすかさず「者ども!今すぐこやつを玉座から引きずりおろせ!」と四方に命じた。
 かくして夏侯章は王族から庶民になってしまったのだった。 
 と、恋するコンビニでの小宴を楽しむ一同であったが、この日も伝説式疾駆は見られず、一抹の寂しさを覚えての解散となるのだった。

 ※マー語


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プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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