終焉のオペラ座?

 2月4日。

 漆園の誓いはまだ果たせていない。
 日限を切っているわけではないが、我々はもう若くはない。
 朕など特に肉体の衰えが顕著である。廓遊びはともかく、チャレンジメニューに胃袋が耐えられるのか。
 誓いを果たせぬまま生涯を閉じるのか、果たせる頃には老衰の域に入っているかもしれない。
 我が主君には、またしても誓いの実行は延期となったことを伝えなければならないのは心苦しいことではあるが、たとえ都合の悪いことであってもありのままを伝えるのが良臣というものだろう。

 今日は南からの風が吹く。
 晴天で寒さに厳しさを感じない。
 こんな日なら聖衣GETTの装甲を強化するまでもない。
 GETTの下にカベラスを着込んだだけの装備で家を出た。

 開放された窟の前に到着し、川辺を一望するが、これほど易しい天候であるにもかかわらず、新川の捕食者は見えず。追放者も見えなかったが、窟を窺えるどこかで身を潜めているのだろう。
 かつてこの界隈を賑わした名物たちの往時を知るだけに、この現状はとても信じられないものがある。
 ひとまず、かつての名物たちのことは捨て置き、ユークリッド幾何学を用いて降臨跡に入ってみれば、既に公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょう 侯嬴こうえいといった釣り廃人たちが到着していたので、朕は「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、伝説式で一喝。
 南からの風が水面を波立たせていたので、朕はジャークベートやリップレスクランクを引いてみたが反応は得られない。ボトムを引いていた公孫戍、夏侯章も芳しくない様子。 もう一段温かくならなければ降臨跡は厳しいのかもしれない。
 しばし釣りの手を休め、修羅はぐれ者が席巻した時代を懐かしんだり、スモールマウス、ナマズ、そして間も無くやって来るマルタ、マルタの遡上に紛れてやって来るシーバス、この時は肉食モードを露わにしてルアーに積極的にアタックしてくるコイやニゴイ、と近い将来に味わえるだろう喜びについて論じ合う。
 「おしゃべりしてないで釣りしなよ!
 アナザー氏が健在だったなら、金切り声で怒られていただろう。

 夕刻が近付き、突如という感じで風向きが変わる。
 冷たい北風が降臨跡に吹きつけるようになった。
 天がキングオブヒルになれなかった伝説人たちの無念を悲しんでいるのか。
 韓流ポイントに移動したいところではあったが、手マンポイントには不動の人影が見えている。
 風はいよいよ寒さを増し、陽が翳ってきたのを機に侯嬴は撤退。
 我々は「何だ、もう諦めるのか。おめえには根性が無え」と、礼儀正しく送り出した。
 手マンポイントにはまだまとまった数の人影がみえていたことと、朝から飲料しか口にしていない朕がから空腹だったことにより、いつもより早く僕たちは今恋をしているコンビニで時間を潰すことにする。
 或いは、こちらも予想外の時間帯に行けば伝説式疾駆を見られるのではないかという期待もあった。

 恋するコンビニへ向かう道中、水門工事の現場を見てそれぞれの予測を話し合っていると、顔の半分以上を布で覆った追放者が速足で通り過ぎて行った。
 かつてはこちらを発見するや、わざわざ寄ってきて聞きたくもないどうでもいい景気の良い話を吹きに来ていたものだが、猫肉骨粉問題のもつれから大人同士の心の戦いに敗れ、心境の変化があったのだろう。今ではベイトを避けるような行動を見せている。
 歩を進めていると、中途半端なヘルメットにサングラス、短パンモモヒキといういでたちのチャリダーがこちらに近付いてきた。
 こんな恥ずかしい扮装をしているような輩とは関わり合いになりたくないものだ、と避けようとした朕だったが、このチャリダーの正体は何と童威だった。
 「童威よ、お前もか…」

 かくして僕たちは今恋をしているコンビニへ。
 朕はここで存分に腹ごしらえをし、韓流ポイントの夜に備えた。
 腹が落ち着いてきたところで、朕は夏侯章に、またしても漆園の誓いは儚くなってしまったことを伝えた。
 これにより、夏侯章が不興を囲ってしまうことを恐れたが、近頃は筋肉をデカくするという大望に夢中のためか、さほど気にならないようだった。
 「章子しょうしの度量は今でも十分にデカいですよ」と、朕は我が主君を誉めそやした。
 体感的な寒さが収まり、17時になるまで僕たちは今恋をしているコンビニ前で過ごしていたが、この時間帯でも伝説式疾駆を見ることはできなかった。

 韓流ポイント。
 降臨跡から見えていた手マンポイントの人影はまだあったが、その数は減っていた。
 もしかしたら伝説三輪氏の捕食活動があったのかもしれない。
 ゾッド将軍と金正男、修羅はぐれ者の競演を死ぬ前に一度は観てみたいものだ。
 それにしてもここまで寒くなろうとは。せめてフルアーマーガンダムレベルの装甲は施しておくべきだった。
 チャリダー装束の童威は、朕よりも寒さが堪えていたようで、立っているのも辛いといった様子。
 そこで、朕は相羽セットを貸し、蝦採りをしてもらうことにした。蝦採りには体を温める効果があり、朕には面倒な作業を他人任せにできるという利点がある。

 朕は主に表層を引き、マニックに一度バイトが出るだけだったが、ボトムを引いていた公孫戍はバイトをしっかり捉えキャッチに成功。
 童威に「ああ、そのサイズかあ」と言って欲しい場面ではあったが、蝦採りから戻らないため、速やかにリリースとなった。
 やがて童威がライブベートフィッシング成立可能なだけの蝦や小魚を携えてやってくる。
 ケーポップポイントでは夏侯章が45のスモールマウスを釣っていたとのこと。
 証拠写真が無ければ伝説式で僻んでやるところだが、キャメラに収めていたという。
 凍てつく寒さに、肉体は悲鳴を上げていたが、明日も休日の朕は「釣れるまで帰らん。お前も付き合え」という気力が残っていた。
 最初にタップアウトしたのは薄着が祟った童威だった。
 普段なら、おめえ根性が無え」と伝説式に罵ってやるところだが、今回はライブベート捕獲の功によって免じてやった。
 体は辛くとも、釣れる日なのだ、と粘る気満々の朕だったが、夏侯章が飽きてきたようで、撤退を宣言する。
 朕と公孫戍は、小賢しいひねくれ者という恥ずべき一面を具えていており、つまらぬ小人しょうじんの言には耳も貸さぬという傲慢さがある。しかし夏侯章は隣人でありながら、仰ぎ見ぬわけにはいかぬ絶対君主。天下に名を知られていなくとも、聖人の資質を持った大人たいじんである。
 我々は素直にその言に従い、次回の合流を楽しみにしての現地解散となった。

 駐輪所に戻ってみれば、この時間になっても窟の扉は開いていた。
 プレッシャーは皆無という状況である。
 もしや水門工事はいよいよ窟を取り壊すに至るのだろうか。
 だとするならば、日中見た追放者はここを去り行くところであり、あれが見納めだったのかもしれない。
 
 ※マー語


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フェンスノーモア

 2月3日。

 寒さの厳しさと、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気のため、平日の釣行機会すべてを逃してしまっていた。 
 「おめえはそれで悔しくねえのか」というわけで、土曜日の多摩川へ。

 水門工事がオペラ座にまで及べば、追放者の棲息場所が危機に陥るだろう。あそこを追われてしまえば路頭に迷って…いや、初めから迷っていたというべきか。
 開放された窟から大回りして釣り廃人たちが来ているであろう降臨跡に向かう。
 工事現場には重機が入り、水門前は深く広く掘られている。
 見た目通り、大きな流れが常時流れ込むような状況が造られるのなら、迷惑事業に対する悪感情も少しは和らごうというものだ。

 降臨跡に入ってみれば、バギーズベイトと釣り廃人のセニョール、張横、侯嬴こうえいが既にポイント入りしており、遅れて公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょうがやって来る。
 これだけハイプレッシャーになってしまっては、いかに新川節を謳いたくとも橋は跨げまい。
 伝説三輪氏には悪いことをしてしまったなと思いながらも、釣り廃人たちにはここで戯れるのが無上の喜びであるため止めることはできない。

 何の気配も無いまま時間が過ぎてゆく。
 魚が留まるわかり易い条件を備えた韓流ポイントに入りたいところではあったが、多くの釣り人が見えていたので、せめて向こう側だけは修羅の捕食活動を妨げてはならないと思い、バギーズベイトが消えるまで移動は控えることにした。
 夕刻を迎える前に張横が撤退。
 「何だ、もう諦めるのか。おめえには根性が無え
 と、伝説式に罵って見送った。
 少しずつ光量が落ち始め、バスが入って来る、或いはカバーから出てくるであろう時間帯に入る。
 依然誰も反応を得られない。
 セニョールが撤退するという。
 「おめえはそれで悔しくねえのか
 と、朕はいつも釣れなくてガチで泣いていた人の物真似をして見送った。

 17時の鐘が鳴る。
 この時間でもまだ十分な明るさがある。
 春を感じさせる光景だ。
 実釣では春を先取りしたメソッドは通用しなかったが、春を思えば気分の良いものである。
 「オレはよお、釣れなくてもフィールド立ってルアーキャストするだけで満足なんだよ
 後輩の好釣に、石を投げて妨害するほどガチな性格で、そのヘボっぷりはⅡを遥かに凌駕していたレジェンドⅠの言葉が偲ばれる。
 場を包む空気は実に穏やかなもので、釣り廃人としての時を愉しむ一同であったが、ここで公孫戍がバイトを捉える。
 場の雰囲気は一転し、皆「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、レジェンドⅡのように怒り、かつ泣いた。
 韓流ポイントのベイトが見えなくなる頃、侯嬴が撤退。
 「釣れるまで帰らん。お前も付き合え
 たとえ気が緩んでいても、伝説式の礼を欠かしてはならないのがこの地での作法だ。

 バギーズベイトの居なくなった韓流ポイント。
 捕食活動があったため、皆うんざりして逃げたのだろうか、それともそれぞれに帰るべき事情があって撤退して行ったのかまではわからない。
 願わくば、降臨があって、伝説とは釣り廃人たちのでっち上げた妄想ではないということを知らしめる出来事があって欲しかったものである。
 釣りだけを楽しむなら、伝説人なしでも楽しめる。しかし、人というものは貪欲なもので、ひとつ満たされればまたひとつ満たされたくなってしまうもの。
 朕は世俗的な喜びは特に求めていないが、漆園で得られる喜びに対してはあくまで貪欲なのだ。

 手マン、ケーポップとそれぞれに散り、粘り続ける。
 しかし、あの陰陽二気の働きに近いところに在る夏侯章でさえ寒さを口にする夜である。近付こうとしても近付けない未熟者の朕ではあるが、自分の弱点は熟知しており、寒さにはパーフェクトガンダム仕様で臨んでいたためにそれほど苦になっていなかった。
 夜は更け、しばらく誰も反応を得られずにいたが、突如夏侯章がファイトを始めていた。
 バスではなさそうだが大魚であるのは間違いない。
 水面に長い魚体のうねりが見える。
 ナマズか?
 と期待したのも束の間。バレてしまう。
 「アタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!
 朕と公孫戍は伝説アナザー式で、身分の上下も顧ず夏侯章を叱責した。
 「やたら重くて引っ張るだけで、首振らねえし、ジャンプもしねえし、コイだな」
 と、ハナクソをほじくりながらどうでもいいや感を出す夏侯章。
 臣下たる我々は、アユに絡んでいるときでないコイをルアーで釣るのはいかに難しいことか、現時点ではナマズやスモールマウスを釣るより価値がある魚種であると説き、主君の軽率な振る舞いを諌めた。
 夏侯章は「この先はあらゆるバイトをおろそかにせぬであろう」と言った。
 聖天子の道を歩む夏侯章の徳がいちだんと高まったことを見届けた朕は、安んじて蝦採りに励もうとしたが、見える蝦の数は多かったものの、相羽リグには適さないサイズのものばかりであったため、結局ルアーフィッシングに戻ることにした。
 しばらくすると、公孫戍が「今日は二種達成かも」と言ってファイトしているのが見えた。
 駆け寄ってみるとそれはナマズだった。
 60には届かなかったが、なかなかのナマズ。
 スモールマウスとナマズのキャッチは、通常の多摩川ゲームを攻略したことの証である。
 とはいえ、自分が釣れたわけではないので甚だ面白くない。
 そこで朕は「ナマズにワームは無いよ」と、伝説未満人の言葉で僻み、今日の勝者になり損ねた夏侯章は「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と言って泣いた。
 ナマズ、コイといった厳しいと思われていた魚種さえも反応する日なのだから、頑張ればまだチャンスはあるはずだ、と粘りに粘り、20時を過ぎてもキャストを続けていたが、やがて公孫戍と夏侯章は寒さに、朕は空腹に集中力を失い、僕たちは今恋をしているコンビニで体を休めることにする。

 21時を過ぎての恋するコンビニ。
 これまで伝説式疾駆を見てきた時間帯を大きく過ぎてしまっているが、プレッシャーの高い昨今、プライムタイムは従来のものからずれてしまった可能性もある。
 まだまだデカくしたいというアイアンマンの夏侯章の筋肉話などを拝聴しながら通りを注視していたが、寒さがプレッシャー要因となってしまったのか、期待していた現象は見られずの解散となった。

 駐輪所に戻ってみれば、窟の扉は閉じられていた。
 こちら側は閉じることが出来ても、反対側は吹き抜けの窟である。
 朕は、夏侯章でさえも寒いという夜を、ほぼ野天に近いところで凌ぐ追放者の鋼鉄のごとき耐寒能力に感心し、帰路に就くのだった。




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孰殺歯抜



 1月28日。

 先日の降雪以降、ワークを怠っていた。
 路面の凍結、マイナスの気温にあってはいかに釣り廃人だとて欠勤もやむなし、というところではあるが、伝説三輪氏に名指しで釣り廃人呼ばわりされた李立と施恩は川崎ドブでその称号に恥じぬ釣果を得ていたのだった。
 新川で鍛え変態タックルで研鑽を重ね、バスに限らず色んな魚種を狙ってきたという、根っからのバサーである釣れないベテランににくまれた者たちの行いは度を外れている。
 これでは修羅ならずとも「オレはおめえらと違ってガチじゃねえからよお」と返すしゃない。

 迎えた当日。
 表通りの雪はほとんど融けたが、裏に回れば至る所で残雪が見られる。街中でさえこの有様なのだから、多摩川に流れ込む雪代の影響が大であることは容易に想像できる。
 水の中の状況は悪そうだが、地上は比較的穏やかな天候にあり、釣り廃人たちの活動を抑え込むほどでもない。
 プレッシャーの問題から、登戸名物が降りて来ることは望めそうもないが、三輪氏の好物であるベイトアングラーは日曜日ということもあって多数訪れることだろう。

 登戸入り。
 水門工事がいよいよ河川敷の中にも拡大し、窟だけでなく歩道までも圧迫していた。
 仕方がないので、朕はユークリッド幾何学を用いて降臨跡に入った。
 降臨跡には伝説三輪氏のベイトの他、公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょう侯嬴こうえい、セニョール、張横といった釣り廃人たち。
 いかにベイトが多くても、これではプレッシャーが掛かり過ぎである。
 朕は、誰よりもガチでありながら、シュートには滅法弱い修羅に代わって「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、吠えてやった。
 尽きぬ伝説話を愉しみながらも、割と真剣にキャストを続ける一同だったが誰も反応を得られず。
 冷え続けた前日までの天候を見れば、釣れないのも当然ではあるが、釣りをすることが無上の喜びな釣り廃人は「やってみなきゃわかんねえじゃねえかよお!」と、伝説三輪氏のように泣きながらもやり続けるしかないのである。
 夕刻が近付いても何事も起こらなかったことにより、公孫戍と夏侯章はオペラ座下へ、朕は韓流ポイントに移動することにした。

 韓流ポイントには李立と下野さんが居た。
 ここでも朕は礼儀正しく「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と挨拶した。
 打ちたいところは随意に打てる状態にはあったが、上も下も反応を得られない。
 ルアーでは反応を得られないからといって、魚が居ないとは限らない。こういう時こそ相羽リグを使いたいところだが今日まで蝦を捕獲している時間を取れなかった。
 厳しくともルアーで何とかするしゃない。
 夕暮れ時となり、誰も反応を得られないまま、下野さんは移動。
 完全に陽が落ちてからは公孫戍と夏侯章がやって来る。
 これを機に、朕はルアー釣りを止め、相羽セットを持ち出し、次回分の蝦を捕獲することにする。ところが表水温が低すぎるのか、小魚は方々で水面直下に見えても、蝦はわずか一匹だけしか見えず。
 仕方が無いのでルアー釣りに戻ることにする。

 今日の寒さの厳しさは今季最大かもしれない。
 聖性が戻り、耐寒能力の高さも戻ってきた我が主君、夏侯章でさえも寒さを嘆くほどである。
 遂に誰一人反応を得ることなく20時が来る。
 芯からの冷えに僕たちは今恋をしているコンビニで寛ごうという気力も湧かず、寒さから逃れたいという一心から現地解散とする。

 魚は釣れず、蝦も居らず、伝説諸氏も拝めず、と何の喜びも得られない一日となってしまった。
 がっかりとうなだれて駐輪所に戻ってみれば、窟の耐寒扉は閉じられていた。日中は気配すら感じなかったほどだが、どこかに身を潜めていたのだろう。
 まことに巧みなものである。

 ※マー語



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歯抜回遊

 1月21日。

 相羽リグを使えばノーフィッシュだけは免れられる。
 極端な冷え込みが来るまでは間違いないはず、と多摩川に向かう。
 温暖とまではいかないが冬にしては過ごし易い方だ。
 ベイト、ビリーバー、釣り廃人といった釣り人のほか、数多くの人が登戸を訪れるだろう。冬は代謝機能が鈍るとしても、条件が揃えば捕食を行うものである。

 登戸入り。
 「多摩川はもう飽きた
 かつて伝説三輪氏はそう言って釣りという低レベルな競争から卒業した。しかし、そう言った後にも、昨年は正月早々に降臨してこられたのだ。修羅には吐いた唾を呑むなど朝飯前のこと。いつまでも新川節への衝動を抑えてもいられまい。
 窟の扉は開いていたが追放者は不在。オペラ開演の予兆か、取り込めなかった釣り廃人たちが来ているために棲家には居づらいのか。
 なるほど、川岸を見渡せばセニョール、張横、侯嬴こうえいといった釣り廃人
 バギーズベイトの数も多い。
 伝説式の礼を行おうとしていたところ、ナマズさんが現れる。早速韓流ポイントへ行くというので、ひとまず別れ、朕は降臨跡へ向かった。

 降臨跡の釣り廃人たちに「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、お約束の伝説式。
 暖かな南風が強ければハードベートでの早くて心地の良い釣りが通用するだろうが、それが通用するのはもう少し先の話だろう。そう思いながらもフェイキードッグで一流し。
 案の定、何事も起こらないので、韓流ポイントへ相羽リグをやりに行くことにした。
 移動しようとしたところ蔡沢さいたくがやってくる。降臨跡の様子を見てから韓流ポイントへ行くとのこと。
 自転車で多摩川へ来るのは大変だろうが、一度来てしまえばポイント移動が楽なのが自転車釣行の利点である。

 韓流ポイントに向かって歩いていると、土手に座る追放者を発見。
 プレッシャーの掛かる日中はこういったところで釣り廃人や座員の目を逃れているのだろう。伝説人たちのように自前のカバーが無いために、プレッシャーから逃れるのも苦労が多そうだ。
 かつてはわざわざこちらに来てまで調子のいい話を吹いていたものだが、今では朕が見えても気付かぬふりを決め込まなければならないほどスプーキーになってしまっている。
 オペラ座で繰り広げられていた大人同士の心の戦いとはどれほどのものだったのかが垣間見えようというものだ。

 韓流ポイントにはナマズさんの他、数名の釣り人。水路を挟んで下野さん。
 降臨跡ほどではないが、伝説三輪氏を喜ばせるだけの人出があった。
 日中は流れとカバーが重なる、やや深みのあるポイントに相羽リグを打ち込みたいところだが、そこは打てなかったので、直接カバー周りに相羽リグを打ち込んでみたものの、予想通り無反応。
 蔡沢がやってくる。
 降臨跡ではミミズ釣り師が一匹釣っていたとのこと。
 同じ餌なら、それ自体がアクションし誘う蝦のほうが強いはずだが、ポイントを外していれば、いかによく釣れるベートであろうと無力である。光量が落ちてプレッシャーが緩み、魚の活動範囲が広がるまでどうにもならないという感じだ。
 そして夕暮れ時に入ってから水深の浅いカバー周りでもバイトが出るようになり三匹キャッチできた。
 しかし、ライブベートが力を発揮するだけの光量は瞬く間に落ちて行く。
 蝦を使いきるだけ釣ってやろうと臨んだライブベートフィッシングも消化不良気味に終了となる。
 ナマズさんが撤退した後はルアーフィッシングに集中。
 風が出ればトップ、穏やかならばボトムとやっていたが反応は得られず。
 蔡沢も今日は反応を得られなかったとのことだが、下野さんが40以上はありそうなナイスサイズのバスを釣っていたという。

 冷え込みが厳しくなってくる頃、公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょうがやって来る。
 降臨跡では何事も起こらず、ただ伝説人の再降臨を待つのみだったとのことだが、来月に侯嬴も交え旧来の正月を祝う小宴を開こうという運びになったというので、朕も参加を表明した。
 ホーリーネームを司馬遷の歴史書から拝借している朕としては大いに太陰暦を重用したいところであるが、その算出方法をまったく知らない。
 西洋化とはこの民族にとって良かったことなのだろうか。かえって弊害のほうが多くはないか。
 生活からテレビを排し、書に親しむ時間が増えてからというものますますその疑念が強くなっている。

 ケーポップポイントに入った公孫戍よりメール着信。
 公孫戍は40超え、夏侯章は30クラスを釣ったとのこと。
 今回は写真が添えられていたので伝説三輪式に僻んでやることができなかった。
 ここで蔡沢は撤退。

 風の吹く時間が長くなっている。
 公孫戍は手マンポイントに腰を据え、夏侯章は手マンとケーポップを行き来している。
 夏侯章はとめどなく言葉を衝き出し、最後は「落合学」と言って締め括った。これぞ日ごと出ずる卮言。
 「章子、本復おめでとうございます」
 朕は君主の聖性が戻ってきたことを心から喜んだ。

 20時になり、いよいよ寒さが身に滲みてきたことにより、僕たちは今恋をしているコンビニへ避難。
 伝説式疾駆という慶事を待つ。
 かつてアナザー氏が何度か疾駆して行ったこのポイントもプレッシャーが掛かりすぎているのだろう。
 君主の卮言に酔いしれながら待ち続けるも、結局この日も伝説式疾駆を拝めずの解散となってしまった。



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不閉扉

 1月20日。

 晴れた穏やかな土曜日。
 伝説三輪氏が捕食を行うのに最適の日だ。
 この名物的光景を再び見てみたいとは思うが、生き物はプレッシャーが掛かればカバーに拠ってしまうのが相場である。
 期待を抱きつつも半ば諦めての登戸入り。

 窟の扉は開かれており、追放者は不在。登戸名物の三輪車も見当たらない。
 川岸を見渡せば多くの釣り人。
 オペラ座下に蔡沢さいたくを発見。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!
 朕は一年と十九日も不在の修羅に代わって吠えてやった。
 昨日の状況を伝え、他に釣り廃人も見当たらなかったので、ライブベートを保管してある韓流ポイントに向かった。

 韓流手マンポイントには下野さん。
 今日はバイトを得ることは出来たがキャッチまでには至らなかったとのこと。
 朕は待ってましたとばかりに「アタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!」と、アナザー式にブチキレてやった。
 “アタったとかバレたとか…”に惑わされずに済ますには何といっても相羽リグだ。
 相羽リグを始める頃、蔡沢も手マンポイントにやって来て、早々にストライクを得ていた。
 しかし「アタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!」とキレられるのみ。
 やがて、久しぶりとなる巻物師、毛遂もうすいが現れる。
 相羽リグの話しをしたところ、毛遂は昨年、蝦を使わせてもらったことがあるとのとことで、その威力に驚愕し、しばらくルアーフィッシングが馬鹿らしくて出来なくなったという。
 “アタったとかバレたとか…”はあったものの相羽リグは好調で、短時間のうちに40少々を含む三匹のスモールマウスをキャッチし、餌釣りには満足できたので、ルアーで釣りたいという意欲が湧いてくる。
 蔡沢はキャロライナリグ、毛遂は小型プラグを引いていたので、朕は間で遠方にはマニック、足元のカバー周りにはスプリットショットリグをキャストし、それぞれバスの反応を待っていた。
 そこへ手ぶらのナマズさんがやってくる。
 今日は釣りをする時間は取れなかったが、様子が気になったので見に来たとのこと。完全な釣り廃人である。これではもう三輪氏のベイトにはなるまい。
 蔡沢が「ひとまずキャロで釣って、TDポッパーゼロが釣れるかの実験をしたかったのに」と嘆くほど反応を得られないという。
 毛遂の方はというとやはり反応を得られていないとのこと。
 ならばやってみようか相羽リグ。
 再び相羽リグをキャストしたところ、早々にストライクを得る。
 「かくもルアーとは釣れないものか」
 「いや、我々がヘボいだけでやり方がまずいだけのことだ」
 などと口々に言い合い、下野さんはポイント移動、ナマズさんは撤退。

 時は経ち、陽が沈む頃、毛遂は完敗宣言して撤退。
 「おめえはそれで悔しくねえのか
 と言って送り出すのが伝説の地での礼儀ではあるが、毛遂は趙から来た外国人である。この地の礼を用いたところで意は伝わるまい、と控えた。
 やがて蔡沢も納竿を始めたので、これを機に朕も釣りを止め、今日使った分の蝦の補充をすることにした。
 しばらく蔡沢は見学していたが、あまりにも原始的な捕獲の現場を知り、相羽リグへの挑戦に躊躇いが生じたかのようだった。
 どうにか飛距離を出せるトレーラーを五匹揃えたところで蝦採りは終了。
 残った時間をルーフィッシングに費やし、何事も起こらぬまま20時を迎える。

 さて、帰ろうかと駐輪場に戻ってみれば20時を過ぎているにもかかわらず、窟の耐寒扉は開いたままで追放者は不在。
 宿無し生活から脱出できたのだろうか。
 結局今日は公孫戍こうそんじゅは来れなかったのだろうか…と、川岸には夏侯章かこうしょうの姿。
 君主様に様子を伺ってみたところ「アタったけど釣れねえ」との仰せ。
 いよいよ呪いも解けたようで、普段通りの卮言が出るようになっていた。
 喜ばしいことではあるが、先日の一件で、夏侯章は道に近いところには在るけれども、まだ蠍の一刺しで倒れる脆さがあることが判明してしまった。本人もびっくりしたようである。
 上流側から公孫戍が現れる。
 先ほどまで侯嬴こうえいとささやかな同窓会を楽しんでいたとのこと。
 今日はセニョール、張横といった釣り廃人も来ていたとか。
 上にも下にも釣り廃人だらけでは相当なプレッシャーであろう。追放者が棲家に戻れないのも無理はない。
 
 して、実釣のほうはというとアタったとかバレとかそんな話に止まっている。
 ベートの波紋、地形に絡む流れの存在。魚が寄る条件は揃っているのだが。
 いかに食わせのワームでも、所詮ルアーでは厳しいのか。
 20時を過ぎてから時間が経っている。そろそろ帰ろうか、と諦めムードが覆う中、公孫戍がバイトを捉える。
 どうにかルアーでの釣果を見ることができた。
 そういうことならまだチャンスはあろう、と更に粘り続けるも遂に22時を迎えてしまう。
 いかに釣り廃人だとて、これ以上集中力を保つのは困難であった。
 この時間まできてしまっては僕たちは今恋をしているコンビニでくつろいでいる暇は無い。
 明日の予定などを話し合い、耐寒扉が開放されたままの窟の前で解散とした。
 これでようやく追放者も棲家に帰れることだろう。

 ※マー語









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プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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