辺境無頼 甲斐路3

 7月8日。

 昨日、秦明より、今日はワーク可能との報せがあった。
 グランドマスターとの釣行は、己の今後に役立つものを得られる貴重な機会。しかし、二日に一日はワーク可能な朕も、そんな日に限って運悪くクソみたいな世間に囚われの身。
 泣く泣く秦明からの報を待つのみ。
 かくしてその日の夜、秦明からの釣果報告あり。
 少ない釣行回数でありながら、その状況下で得られるものをしっかり得るのが、グランドマスターたる所以である。

 一方、朕はというと7月10日に予定していた公孫先生との西湖ライブベイトフィッシングが、朕の事情で7月8日のこの日の決行となった。
 ライブベートで40アップだけを狙っていきたいところだが、このところ天候は不安定。雨風といった水中からの視界が利きづらい状況になるとライブベートは効力を著しく損なうので、ルアーも用意した。

 当日早朝、帰宅後ほどなくして公孫先生到着。
 昨日から一睡もしていない朕はハインション。
 道中、おおいにバスフィッシング理論、ルアーフィッシング論を語る。
 公孫先生に、近日開催の飲み会への誘いを受けるが、世間のわざとらしさ、白々しさ、まかり通る偽善に辟易している朕は、木枯らしの紋次郎的境地にあり、「あっしには関わり合いのねえことでごぜえやす」と、御免を被らせていただいた。娑婆には得られるものより、不快なことのほうが多い。はかない収穫のために、大きな犠牲を払うような愚はもう犯さぬ、と、いつしかこころに誓っていた朕である。

 果たして、富士山に世界遺産としての値打ちはあるのかどうかを論じ合っているうちに西湖到着。
 朝のハイランドレイクは肌寒さを感じられるほど。
 水面は穏やかだが、曇っていったため、最初はルアーの方がいいかもしれない、ということでシャローフラットの広がるワンドを打つことにした。
 小魚の波紋も多く見られたので、この群れを窺うブラックがいるはずだ。岬の近くではボイルも見られた。
 サミー100とXラップで流していくが、反応は得られず、やがて紅葉台溶岩帯付近に射す陽光が気になりだす。
 ライブベートでビッグバスを釣るのが今回の第一目的なのだ。ブルーギルを捕獲するには、水温が高い場所の方がいい。

 紅葉台エリア。
 まずはギル確保、というところだが、ギル用ベイト、よっちゃんいかを買い忘れていることに気付く。面倒だが、これが無くては釣りにならない。
 というわけで、一度河口湖まで下りタイムロス。
 現地に戻り、タックルを組む頃には西湖全体が晴れ渡り、すっかり夏の富士五湖になっていた。
 暑くて無風はちとキツいが、ライブベイトフィッシングを行うには好都合になってきた。
 溶岩帯と浜の境付近にはナイスサイズのブラックが見える。
 溶岩帯カバーには、ギル、小バスがしっかり居た。
 そして驚くべきことにナイスサイズのペアのベッドが二つ、40以下のバスが単独で守るベッドが一つ見えた。
 その先のラインをクルーズするナイスサイズのバスは少なくとも三匹以上居て、ベートフィッシュの群れの後を泳いだり、ベッドにちょっかいを出したり、と、どういう状態のバスなのか理解に苦しんだ。
 ギルはベッドを窺っているせいか、よほど近くにバスが寄らない限り釣りやすかった。
 五匹のギルを確保したところで、ダグ・ハノン先生言うところの“服を着ての最高の楽しみ”開始である。
 公孫先生に、この時期にスポーニングが行われていることの異常と、通常の季節ごとの生態について説明。
 我々が狙うべきは、ベッドより沖のラインを回遊するナイスサイズだということを理解いただいたところで、いざ実釣。

 ところがここで思わぬ苦戦。
 かつて紅蠍大先生がその威を知らしめ、ギルを用いたライブベートフィッシングが仲間内で流行ったのが2006年頃。
 あまりにも調子よくナイスサイズばかり釣れるものだから、ボートのバサーがわざわざ岸に降り、何をやっているのか聞きにきたほどである。
 また、我々も味を占め、西湖に来るたびにナイスサイズばかり釣っていたものだから、この様子が人から人へ伝わって行ったのだろう。
 やがて、ワーム使用禁止というレギュレーションもあって、ライブベートフィッシングはいつしかビッグバス狙いのポピュラーなメソッドになっていったと思われる。
 そのためか、かつては近くに人の姿があろうとお構いなしにバイトしてきたブラックも、今ではすっかり警戒モード。
 見えバスはギルに興味を示しはするが、その動きには躊躇いが見られる。互いに見える位置関係にあると、突こうともしない。
 バイトしても、吐き出されてしまうこともあった。
 危険に繋がる違和感を学習してしまったようだ。
 今回は、ウィードの陰でオイカワの群れを窺っているバスを偶然発見した朕が何とか一匹キャッチ。
 ライブベートでもルアー同様、こちらの存在が気取られぬアプローチが求められるようになった…。

 その後、風が吹き、ギルが岸際のカバーから消えるという事態が発生。
 ギル用タックルは朕が延べ竿。公孫先生はスピニングタックルで来ていたが、釣堀スプーンのようにある程度手広くサーチできるギル向きのハードベイトが無いため、追跡できず。
 風が何かを変えたのは間違いない。
 エリアを変えても、手の届くシャローカバーにギルの姿を見ることはなかった。

 合間、ワーム使用禁止を指摘したところ「知らなかった」とすっ呆けるDQNバサーたちに出くわす。
 リーダー格は短パンモモヒキのカナモレプリカ。
 自らもバサーでありながら「死ね!クソバサー!」と思う時である。

 エリアを変えても、ベイトの絡むショアラインではナイスサイズのバスが回遊しているのが見える。
 ギルさえあれば、そのうちの何匹かは獲れる。しかし、肝心のギルが確保できない。こうなってはライブベートフィッシングは諦めるしゃない。
 ルアーではどうにもならない。
 彼らはラインプレッシャーに対し、からナーバスになっているのが見て取れていたからだ。
 ブラックを釣るための手段はルアーしか残っていないが、ルアーで釣るには機が訪れるのを待つしかない。
 風と光量が望み通りの形にならなければこの先の追加は難しい。

 移動を繰り返しているうちに、風の当たり具合のよいショアラインを特定。
 雲も空を覆うようになり、機の到来を感じる。
 このワンドはシャローフラット全面が風を受けるようになっており、湖全体で最も食物連鎖発生の規模が大きくなっていることが見込まれた。
 中継点の岬からフラットに至るラインにはカバーも豊富。フラットの沖にはウィードが点在している。
 光量的にはまだ早いだろうから、と一帯を見て歩いたところ、ここでもナイスサイズペアのベッドを発見。
 このスポーニングの遅れ…冬に降った大雪の水温への影響という可能性も考えられなくもないが、今年春にプリスポーンのバスが普通に釣れていたことだし、春の動きから少し遅れていると言うにはあまりにも時差がありすぎることから、低水温の影響より、フィッシングプレッシャーがバスの行動に影響を与えているのだと朕は考えている。
 この時期に、西湖でこのような現象を見たのは今回が初めてである。

 スポーニング中のバスは無視して、ここはこの時期のフィーディングバスだけを意識してキャスト開始。 光量、風、ベイト…条件は揃っている。波立つ水面も注意深く観察すれば得られるものもある。
 SRフラッシュ、ショートアームアグラベーター、クリスタルSをローテーション…同じスピナーベートでも使い分けるのは、それぞれにアピールの質が違うためだ。
 風が吹いたらスピナーベートというミラクルジムの名言だけでなく、ヒロ内藤や、ケン・クックに学んだ朕はスピナーベイトを使うべき場面をよく心得ているのである。
 また、リーリングだけでランダムアクションを出すことが出来るので、ロッドアクションを必要とするジャークベートやジグより、ラインプレッシャーを軽減でき、今日のようなバスには適切なのではないかとも考えられた。
 結局、ルアーで釣れたのは朕が釣った一尾のみであったが、偶然の釣果ではないことを喜んだ…が、それにしてもこのバス、産卵期の最中にあるのではないかという身体的特徴が見られ、いくつかあったスポーニング中のベッドのこともあり、朕は首を傾げた。
 釣魚として幅広く研究され、関連書籍も多く出回り、朕自身十年以上も傾倒していながら、バスについてはわからないことだらけだ。昔より、釣り方が少し上手くなっただけに過ぎないという現実にうなだれる。

 公孫先生はバイトを得ていたが、残念ながらバラし。
 これはバス釣り初心者ゆえに仕方がないことでもあった。向かい風でのベイトキャスティングに不安を覚えるとのことで、スヌークロッドにブラストという、朕がショアジギで使うスピニングタックルに、キャストのし易さ重視で結んだSRフラッシュというセッティングが、バランス的に難があったということだろう。
 しかし、新利根釣行で初バスを得たのがハイピッチャーであったため、スピナーベイトというルアーを信用し投げ倒せたことが、バイトを招いたともいえる。
 釣れなかったのは無念だが、ライブベートでの魚の反応を見ることが出来たり、バスのストライクを得たりと、まったく脈の無い釣りではなかったので、それなりに満足できたとのこと。

 朕はというと、ブラックに対する謎は深まったが、バサーとしてやるべきことはやり、二本とも40アップだったということで、満たされた気持ちでの帰路となった。

 ※マー語
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tag : ルアーフィッシング バスフィッシング 多摩川

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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