辺境無頼甲斐路

 5月4日。

 西湖。
 朕がこれまでに行ったフィールドの中で、最も気に入っているフィールド。
 ボート免許も、二馬力以下のパワーユニットも高嶺の花という、天子にあるまじき生活水準にある没落貴族にとって、岸からきっちりゲームを行える数少ないフィールドのひとつである。
 成功にしても、失敗に終わっても、このフィールドは“何故?”について測ることが出来るのが良い。
 視覚情報を得易いために、経験と知識で得たことから現状を予測し易く、それを当てはめていくだけのブラックも生息している。

 バスフィッシングに於いては相応の蓄積がある朕ではあるが、この数年、活かせる場面が少なく、バス用に備えてきたものたちのほとんどが、他魚種に転用せざるを得なくなっていたが、武松がクルマを手に入れたことにより、再び本格的にバスフィッシャーマンとして復活できた。
 道を歩む中で知り合った仲間の存在は貴重なものだ。
 改めてここで感謝の意を表したい。
 そして知る。
 平和は世の中にあるのではなく、道を歩く者の心にあるという言葉の正しさを。

 今回は、朕、武松、李立の三人で行く予定だったが、トレードマークであるバギーが逝ってしまったため、当初予定していたフローターバッシングに行けなくなってしまったおっちゃんぢょんが、苦手とするクリアレイク挑戦を表明。
 多摩川ナマ師四人での参戦となった。

 西湖到着。
 湖岸には虫が涌いている。
 水際にテントを張る者さえいる。あまりにも自然に対する構えが甘すぎるから、ちょっとした自然の悪戯に殺されてしまう者が出てくるのだろう。
 
 恒例となっている松屋ボートで遊漁券を購入。
 西湖漁協には気持ちよく銭を払える。バスを有用な資源として扱っている団体には微力でも協力したい。
 
 最初に入るべきポイントはどこか。
 日光の加減、風向き、ストラクチャーの作りを気にしながら決めたいところだが、駐車スペース、湖岸の他の釣り師のことも考えてポイントを決めなければならない、という状況。
 こんな混雑するようなところにわざわざ、とも思えるが、朕の技量で40アップを狙える、プリスポーン期にあるフィールドといえば、近郊ではここぐらいのものだろう。

 そもそも本当にプリスポーン期なのか。
 それをこれから確かめようというわけである。
 スポーニングを行うのに相応しい場所は至るところにあるし、これまで「こんなところで?」という場所でベッドを見たこともある。
 カバーにプロテクトされたシャローと、冬の場所から至る経路を意識してワンドの中の水中をチェック。
 ベッドにはまだ早いようだ。
 シャローカバー周辺に見えるバスも居る。見える魚は小さくても35はありそうな魚体。数は少ないが、皆ナイスサイズばかりである。
 シャローで勝負可能な個体が出てきていることがここでわかる。
 しかし、今見えている個体を釣ることは朕には不可能。
 わかっていながら手を出してしまうのは悲しい性。
 その中に、カバーとカバーの間の決まったコースを行き来する個体を発見。ベッドが無いところを見ると、ベッドの候補地を探しているか、ベッドそのものを探しているということか。
 この個体を釣ることはできなくとも、シャローにチャンスがあることがより明確になる。
 釣るために必要な条件とは何か。
 シャローフラットに向かう風とベイトであろう、とは予測されるが、確信は無い。
 岸近くにボートを連ねて浮かぶワカサギ釣りにも動きは無い。ワカサギが寄っていないから、この付近のバスもニュートラル状態なのだろう。

 きっかけは偶然から。
 ヒントを求めてショアラインを流しているとき、ベイトフィッシュの群れが岸寄りを通り、その後ろを泳ぐブラックの姿が見えた。
 付近にジャークベイトをキャストしてみたところ、案の定反応を示した。
 こちらの姿に気付き、違和感を察知したようで、途中でチェイスを止めてしまったが、釣るべき魚が見えてきた。

 一同集合。
 ベイトフィッシュの寄るショアラインを探そう、と、湖をほぼ半周するが、風向きは安定せず、ベイトフィッシュが居ても群れというにはあまりにも小規模なものばかり。
 集中して打つべきポイントが定まらない。
 せめぎ合う要素が一箇所に集中し、かつ、それが長い時間続くというような現象が起こらなければノーフィッシュということもあり得る。
 今じたばたし、メッソドに解決策を求めても無駄なことだ。釣るために必要な条件は見えているのだから。
 西湖初挑戦の、ぢょんと武松はあまりの無反応ぶりに焦っていたが、朕と李立は来るべきときが来れば釣れると思っていたので、少し早いが昼飯を兼ねてキャリルへ行こうと提案。

 まずはキャリルへ。
 この時期、ワームが有効になるとは思えないが、探れるところはすべて探っておきたいというぢょんはストレートタイプのポークリンドを購入。
 朕は、カースティングより安く売られていたジョイントの小型スイムベイトを購入。
 心情的には、JBの重鎮であるサワヅラさんの店で散財し、大いに業界に貢献したいところではあったが、ペリカ生活目前という経済状態にあった朕は買い控えに走った。

 昼食を終え、再び西湖。
 ひたすらベイトフィッシュの寄るショアラインを探したが、気付けば風は河口湖放水路側に向かって吹き続けているようになっていた。
 こうなってくると、他のポイントであの手この手を試みたところで無駄だろうと思われたため、朕は昼寝をしたり、適当にルアーをキャストしての脱力モード。
 ハードベイトでは手の届かないスポットにポークのダウンショットリグを打ち込んでいたぢょんはノーバイト。一見ストレートワームのようなフォルムのポークだが、やはりソフトプラスチックのワームとは違う。
 わずかな水流で動くのは良いが、見た目の感覚だけでも生き物として感じられるものがなく、単体として使うには心もとないという印象を受けた。
 また、もしワーム使用可であったとしても、季節柄、外した攻めであると言わざるを得ない。

 既に勝負どころは決まっていた。
 ポイントはボートがひしめき合っていたため、キャストを控えていたが、ボート返却の時間が近付く頃、河口湖放水路側のシャローフラットへ向かう。
 かれこれ二時間以上はこちら側に風が吹き付けており、湖面に一本の川筋が出来ているかのように見えていた。
 ベイトフィッシュの姿そのものは見えなくとも、こちらに集まってくるのは自然の法則。何故かについては多くの媒体で語り尽くされている。
 ここしかない、という状況に釣果を確信するが、朕が釣れるとは限らない。しかし、仲間内で誰かが釣れば、朕の読みは当たったことになり、ゲームは成功と言えるのだ。
 のっこみヘラがショアラインを占拠し、度々のスレ当たりに悩まされることにはなったが心は折れない。
 現に李立が、40アップのチェイス、バイトを目視し、ボーターがシャッドプラグで40アップを釣り上げていた。
 ボーターの「今日8kg行ったかも」という声が聞こえ、このポイントの確かさを知る。
 反応をなかなか得られないのは、単に捕食体勢が出来ている大型の個体が少ないからであって、しかし釣れれば40以上の世界であることは間違いない。
 田辺先生の「KeepCasting」を守り、キャストを続ける。

 リップレスクランクをこまめにローテーションし、朕はナイスフィッシュをキャッチ。重い引き心地にコイが食ったか、大型のヘラのスレかと思ったが、寄せてみればブラック。
 45以上だが50には届いていない。
 Powなら50は行っているだろうが…。
 何はともあれ“釣った”一匹である。
 更にバイトしてくる感触を得たが、これは“釣れちゃった”ヘラ。

 また、クリアウォーターに対する苦手意識から、バスバブル期は富士五湖を避けていたぢょんであったが、西湖初挑戦にして40アップをキャッチ。
 シーズナルパターンに則って釣りをするならば、霞水系も富士五湖も無く、バスはバスであることを理解いただけたであろう。

 結局、ブラックはこの二本しか釣れなかったが、ゲームとしては概ね成功といっていいだろう。
 バスフィッシングの教科書から学んだ知識を元に、これまでの経験で得たノウハウを駆使し、仮説を立て、実証することが出来たのだから。

 それにしても、今尚ワームをキャストしている輩が居るのには驚き、かつ呆れた。
 この時期の正解から外れているばかりでなく、バスフィッシングの存続に協力的な西湖漁協に唾吐く行為である。
 ここは、「釣れないからワーム」というレベルから抜けられない者の来るところではないのだ。

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tag : ルアーフィッシング バスフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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