芒碭山巡幸記

 12月6日。

 楽和との合流。
 人生が狂うまでは、しばしば合流していたものだが、ながらく交流が途絶えていた。
 四年前に都落ちしていた頃、我が故郷を訪ね、ライギョフィッシングに興じて以来である。
 日本円が得られるようになった今、こちらから訪ねていくべきだろう。

 合流前に、最近の釣果が送られてくる。
 復活後の打ち込みようは求道者のそれであることを示していた。
 合流への期待も高まろうというもの。

 合流前日に、日中のメバル攻略用のソアレジグを買い揃え、シーバス対応のミノーとリップレスクランクもボックスに加えた。青物は現われなくなったとのことだが、シーバスはまだ沿岸での可能性があるとのことだからだ。
 漁港の小物をメインに狙う備えだが、勝負は日中と定め、ソフトプラスチックは一切持たなかった。これは物がはっきりと見える光量に於いて、視覚を頼りに捕食を行う魚を狙うのであれば視覚のトリックを仕掛けるほうが有効であるためだ。
 ワームは持たなかったが、ローライトでの釣りも考慮し、動きの良いトラウト用の小型シンキングプラグは用意した。
 こういう釣りをする時、軽いルアーから重いルアーまで対応できる操作性の良いバーサタイルスピニングロッドが重宝するのだ。
 プラチナム入手がこの日に間に合ったことを喜ぶ。
 
 問題は李立のタックルである。
 先日、ダイワの安物スピニングロッドを折ってしまったという。
 海で使えるスピニングロッドがヒラスズキ用のロングロッドしか無い。メバルをメインに狙おうというときにこれでは致命的である。
 メバルのみを狙うのであれば、フェンウィックを貸してやれば済むのだが、シーバスの可能性もあるのなら、中量級プラグもキャストできるロッドでなければならない。
 そこで、Gルーミス・SJR762をくれてやることにした。プラチナムの入手により、乗せの釣りにしか使えない、感度の悪いルーミスロッドが不要になったためでもある。
 朕は梁山泊の流儀を信奉する者なので、不要になれば、たとえそれがどれほど高価なものであろうと値をつけたりはしない。中古屋に売って金にするぐらいなら、必用とする者に無償で譲渡するのだ。

 李立と合流し、小田原へ向かう。
 既にゲームフィッシングの要諦を心得ている李立のこと。多くを語る必用は無い。ただ朕の記憶の範囲でフィールド構成を伝えるのみである。
 道中は格別の話も無く、新松田到着。

 一見のどかな田舎の街並み。
 自然に囲まれ、豊かな生活が送れそう、と錯覚しがちだが、朕は知る。地方のほうが実は東京より世知辛いということを。
 それを証明するかのように、楽和との合流後、うまい魚料理でも食おうと早川港市場周辺の食堂を覗いてみれば、いずこも観光客をナメまくったぼったくり価格の店ばかり。アジ定食が千何百円という円天設定。
 無明の業火も燃え上ろうというものである。
 こんなふざけた商売をしているのだから、地方にも無味乾燥なファーストフードチェーン店や、コンビニエンスストアが侵入し、その土地土地の味わいを消してしまうのも無理からぬ話なのか。
 再会を祝しての海鮮料理などと考えていたが大甘だった。
 結局、我々は東京に本店のある海岸沿いの大勝軒で昼飯にした。
 リーズナブルな価格とはいえないが、味は良く、ボリュームもあり、周辺のボッタクリ食堂とは違い、適正価格といえるものだった。

 たかだか昼飯ごときで、けっこうな時間と労力を費やすこととなってしまったが、気を取り直し、最初のポイントへ。
 この時、朕がとんでもない過ちを犯していたことが発覚。
 ルーミスのロッドケースに、青物狙いで用意したスヌークロッドを入れっ放しだったのだ。李立の使うべきロッドを狛江のかりそめの皇居に忘れるという不手際。
 急遽、楽和からサーフ用のシーバスロッドを借り受けることとなった。

 岸際はゴロタ、沖にテトラの入る海岸線。
 ボトムマテリアルはロックフィッシュを寄せ、シャローの絡む地形構成は青物、シーバスの回遊が、と夢見られるような雰囲気はあったが、よくよく観察してみればいかにも平坦な一帯の一部であり、ベイトフィッシュの存在も認められない。
 メタルジグを一流しし、一切の気配を感じられることなく移動決定。

 当初の予定通り、日中のメバルを狙ってみようということで真鶴港へ。
 どうやらこの辺の土地は、楊志、魯智深が支配する前のニ竜山のような土地らしい。
 そしてそのような土地では、天の恵みが届くはずもなく、メバルの棲息をチェックすべく探りを入れるも、一切の反応は無く、目視できるベイトも無く、結局早川港一帯で粘ることにした。

 早川港。
 どれほどのどかな風景であっても、ここもやはり関東なのだ。
 関東ならではの世知辛さをここでも思い知らされることとなる。すなわち、立ち入り禁止エリア。責任逃れのもっとも手っ取り早い方法。
 本来、誰の物でもない天からの恵みを人間側の都合だけで“管理”などとぬかすとは片腹痛い。しかもその管理の実は杜撰なものであるのがほとんどというのがこの国である。
 ベイトの魚影は濃く、魚食魚を呼び込むだけの規模はあった。

 港内にシーバス、ヒラメを呼び寄せてもおかしくないと思わせる。
 特に魚の通り道となる突堤周りはプラス要因が絡み合い、探りを入れなければならないポイントとなるが、上記の理由により手を出せない。
 外っ面は良いが、胸中何の真心も無い…芦ノ湖、丹沢湖で感じられた神奈川県南部の印象はここでも適用された。

 その心象をなぞるかのように、楽和はアナハゼ3匹、朕は極小エソ1匹、メッキ1匹、李立がメッキ1匹という、釣れるには釣れたがあまりにもお粗末な釣果。
 日没後、楽和の友人である地元スペシャルが現れ話を聞くが、県北部と南部の気候の違いを思い知らされることとなる。そしてこの気候の読み違いが今回の敗因であるということも。
 
 芒碭山ぼうとうざん勢力との久々の合流ということでは大いに意義はあったものの、本筋の釣りはというと実にお寒いものとなり、ほうほうの体での帰路となってしまった。
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tag : ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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