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降臨四年の始まり

 1月1日。

 電話着信で起こされる。
 発信主は聖人候補生の施恩だった。
 年少者とはいえ、いずれ非凡な境地に至ろうという人である。粗相があってはならぬということですぐに折り返した。
 今日は休みだが、事故に遭いタックルのほとんどを破損させてしまったので、まずはカースティングに行きたいという。
 ちょうど朕もフック、シンカーを補充しなければならなかったので「15分で準備しろ」の伝説三輪式を決め、カースティングで合流することになった。
 
 カースティングに入り、程なくして施恩到着。
 台風以降、有力ポイントが変わり、攻め方も少々変わったが、相変わらず釣れないこともない程度に釣れていることを伝え、再び現地で合流することにした。
 フック、シンカーだけのつもりが、特に必要でもないのにバークレーのフィネスワームとワンノッカーラトルのブザービーター、デュエルの金属鰭の付いたリップレスクランクを買い散財。

 多摩川入り。
 堰から登戸エリアを見回してみたが、狛江側に何人かの釣り人を見るだけで、川崎側には修羅のベイトは居らず。
 三年前のこの日に起きた奇蹟は望めそうも無い。
 ポイントには餌釣り師が居たので諦め、更に下流に下る。
 浅く緩む一帯にスモールマウスとナマズを見ることはできたが、案の定スプーキーだった。
 やはり近い間合いではどうにもならない。しかし魚は動き回っているようだったので、ロングキャストでブレークラインと程よい流れを探しながら流していたところ、アンダーショットリグに組んだ実験ネタのバークレーのフィネスワームもどきにバイトが出る。
 合わせをくれたところ結構な重さを感じたのでナマズかもしれない、と取り込み場所に下りて再び巻き始めたところ軽くなる。
 アタったとかバレたとかそんな話である。
 「新年早々からいいものを見させていただきました」
 いつの間にか来ていた施恩よりお褒めの言葉をいただく。
 朕のルーティンを嗤う施恩だったが、ファットイカを投げていた施恩もまた何度かのアタったとかバレたとかそんな話を演じていた。
 
 もうひとつの降臨も起こらぬまま時間は経過。
 やがて陽が傾きだす。
 「何だ、釣れてねえのか。だらしがねえなあ
 「オレだってちゃんとやってるよ!
 伝説三輪式の応酬をおろそかにはしないのがこの土地での礼である。
 我々の礼に欠くところが無いのを喜ばれたのか、聖人が従者を伴って現れる。
 朕は夏侯章に歩み寄り、拱手しながら御機嫌を伺った。
 「我が君には今日もおかんむりですか」
 「寡人は常に無冠である」
 有冠者の何と謙虚なことよ。
 このことにより、朕は君子のなんたるかを知るのだった。

 無反応の時間が続く。
 陽が落ちなければ厳しいのだろうか。
 とりあえずのキャストはしていたが、朕と公孫戍は礼について論じ合い、日没を待つようになっていた。
 施恩は一帯を縦横しキャストを続けている。あれが遠ざかる若さというものなのだろう。
 聖人はといえば…と、ロッドをしならせている。
 寄せてみればンボなナマズ。
 つい先ほどまでハナクソをほじり、放屁までしていた痴れ者が転じて明晰な切れ者に。まさしく、陰と陽、被と剥が入れ替わる瞬間だった。
 かくして夏侯章、「多摩川で二回連続ボーズなし」の伝説式自慢権を獲得。 
 聖人が示した真実に皆心動かされ、改めてキャストに身を入れるが、ここまでだった。
 日没後、施恩が「寒いじゃねえか!」と、礼に則り、伝説三輪泣きで撤退。

 施恩撤退後、韓流ポイントに移動してみたが、こちらはもうひとつの降臨跡以上に手応えが無く、遂に諦める。
 また明日も堰下からスタートということで話がまとまり、ノーフィッシュに終わった朕と公孫戍が「おめえは一軍、オレらは二軍。そういう考えやめねえか。オレたちそもそもそういう付き合いだったか」と、泣いて夏侯章に噛み付いたところで解散とした。
 修羅が独りで繰り広げていた、大人同士の心の戦いは決して無駄になっていない。このように釣れない釣り人たちに受け継がれているのである。

 ※よく肥えて、丈もある様
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テーマ : プロレス
ジャンル : スポーツ

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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