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竹皮冠

 12月15日。

 娑婆から解放された時、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるような眠気に苛まれることもなかったので、高修釣具店によってから帰ることにした。
 バスバブル時代の芳香が残るかの店で、ジグヘッドのトレーラーに良いエバーグリーンのビビッドテールを買うためである。
 残念ながら、目的の品は無かったが、店内を物色しているうちに“SVS”と書かれたカルカッタ・コンケストの箱が目に留まる。
 100と101。
 シマノのフライングアームブレーキは信用できないし、SVSを搭載した新型のカルカッタは組み付けが密すぎて、注油メンテナンスで壊してしまったことがあったので怖くて使う気になれない。
 やはり、シマノはベートフィネスとやらに手を出しておかしくなってしまう前の物が良い。
 と、結局コンケスト101を買ってしまった。

 帰宅し、早速ラインを巻き「今日はコンケストが釣れるかの実験」とする。
 また、主君に献上するスイミングジグ、同僚をねぎらうためのワンダー60を早々に渡して「今日のオレの仕事は終了」としておきたい。
 伝説三輪氏は誰よりも釣れない言い訳が上手かった。だからこそ伝説になれたのだ。

 せせらぎ館からポイントを目指す。
 堰上を見れば、登戸側、狛江側共にそれほど人は多くないものの修羅の捕食は可能な程度には釣り人が居て一安心。
 堰下プールには多数のコイ、40クラスのスモールマウスの5,6匹の群れ、プール最下流部のへこみを陣取る巨ニゴイが目視される。
 ここを打とうとは思わないが、ここに魚が見えると見えないでは期待値が違ってくる。
 ルアー対象魚が見えるのは良いしるしだ。
 下流側を見渡してみるも、対岸から見てもわかるほどカッコ悪いキャストは見えない。世間の人々と休日を同じくする職業に就いてこそ、の人が日曜日の今日に見えないのは何故か。
 それは既に天敵が来ていたためだった。
 水門前に公孫戍と夏侯章を見る。
 諸々のことはさておいて、まずは主君の御機嫌を伺うのが臣の務めである。
 朕はスイムジグを差し出しながら、
 「君似君には今日もおかんむりですか」
 と言った。
 「寡人は常に無冠である」
 と、夏侯章はスイムジグを収め、今日の実験ネタを見せてくれた。
 ヘッドの下にブレードの付いたチャターベイトである。いかにもナマズが釣れそうな一品だ。
 「失くしたら勿体ないから投げねえけど」
 夏侯章はいつになく饒舌だった。
 主君にいとまごいをし、先輩史官にワンダー60を渡したところで「今日のオレの仕事は終了!」を宣言。
 もはや釣れようと釣れまいと我が腕前の外のこと。
 しかし、そもそもの基本わかっていないために釣れていないことがばればれであることを、本人だけはわかっていなかった。狂人だと偽って劉邦に接近した知恵者、酈食其れいいきとは正反対のアピールである。

 目に見える魚はコイのみだったが、寡数ながらも魚食鳥は入ってきていて、流芯に絡めてベートを引けばアタったとかバレたとかそんな話はある。
 ここでキャッチに成功したのは公孫戍だった。
 ワンダーとファットセンコーのローテーションの末、ファットセンコーで釣れたとのこと。
 朕は「オレもスピニング持ってくればよかった」と、スピニングタックルで挑んだところで所詮釣れない程度の釣り人の唾で応じた。
 釣れないこともない状況にある、ということで続けるも、その後は誰も釣れないまま日没を迎える。
 対岸に現れた釣り人が水際伝いに下ってきたことにより、ポイントが潰れたことを悟り、以前より少しだけ水位の上がった韓流ポイントの様子を見に行くことにする。

 先ほど、対岸のアングラーが「バレた~!」と悔しがっていたが、見ていた限りではコイにラインかルアーがぶつかっただけのことであろう。
 そんなことでもアタったとかバレたとかそんな話にしてしまうルアーマンは、この多摩川に案外多い。
 とにかく釣りたいという願望が強すぎて、客観的な状況分析を妨げてしまうのだろう。
 こういう人に、アタリだけだったり、バレたりがそんなに多いのならアプローチやタックルバランスを見直してみてはどうかと提言したことがある。
 しかし、あまりにもちんぷんかんぷんな回答で己を正当化しようとするので、そもそものことがわかっていないことが判明したことがある。
 「オレだってこんなもん」
 とは、本当にこんな程度だから始末が悪い。
 探りのキャストを行いつつ、伝説には及ばないながらも忘れ去るには惜しい出来事を編纂しながら過ごしていたが、特に反応も得られず。
 少々水が増えた程度では厳しいのか。
 諦めが入りかけていた頃、夏侯章が「ゲジゲジワームが釣れるかの実験」と、伝説式をぶちかます。
 表示価格の安さに食らいついてしまったものの、よくよく見れば本数が少なく、一本当り100円以上する高級ワームである。
 朕も公孫戍も見事騙された夏侯章を笑ったが、しかし程なくしてバイトを捉えていた。
 被であったものが剥に転じた瞬間である。
 かくして、夜だから釣れることを示せたことに満足し、ここで終了とする。
 一人、ノーフィッシュに終わった朕が、「でもよお、おめえら新川では釣ったことないよな。大したことねえなあ…オォーイ!」と泣きキレて締め括り、解散とした。


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テーマ : プロレス
ジャンル : スポーツ

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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