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楢山邦

 7月25日。

 昨晩、早朝のクロムツを釣りに行くと言って一人出かけていった御老公。
 子供の頃アメリカザリガニを食っていたというだけあって、老人とは思えない頑丈さである。
 クロムツが終わったら老爺と合流してテンヤマダイに挑戦するというから恐れ入る。
 老爺の出発に合わせて朕も出発である。
 老爺宅からさほど離れていない所にも二つ、三つと野池がある。
 大型はともかく、小バスなら何匹か確実に釣れるはず、と向かってみればことごとく立ち入り禁止の立て看板。とりあえず水辺を覗いてみても、バス、ギルの姿どころかコイの姿さえ見えず。
 立ち入りは禁じていなくても、池の生物の採取、釣り禁止の場所もあった。
 いすみ市は釣り人を受け容れない姿勢のようだ。
 ならば川はどうかと探り歩くが、川辺は切り立った崖と藪で進入困難。入れる場所はポイントとしてプア、という具合でまったく救いが無い。
 結局、ただ暑い中に田舎道を走り回るだけのことになり、陽が傾く前に敗退。

 独居老人を見舞うついでに、シーもラージマウスも思いのまま、を夢見て訪れた千葉も、ただ世知辛いだけの田舎だった。
 早く東京に帰りたい気分になるが、御老公がお戻りになるまで身動きが取れない。
 二日間をまったく無駄に過ごしてしまった感はあっても、近所に知り合いも居らず、身寄りも無い老爺には、朕の如きちんぴらオヤジの来訪さえも喜びであるというのだから、それなりに来た意味はあったのかもしれない。
 孤独死を覚悟している朕も、この先の身の振り方について考えさせられる機会になった。
 要らぬ世話は焼きたがり、本当に助けが必要な時には見向きもされないこの社会と関わらずに生きていくのは不可能だが、可能な限り関わらずに生きて行きたいものだ。
 釣り廃人としての楽しみを尽くすつもりで来たものが、はからずも沈思の機会になろうとは。
 思いも寄らぬ展開と結果にため息をついている頃、紅蠍より新河岸川での釣果の報が届く。
 フッコはアタったとかバレたとか、そんな話に終わってしまったようだがセイゴが釣れ、○回連続ボーズなし!の伝説式自慢権を獲得していた。
 多摩川の公孫戍といえば二種二匹の50オーバーと30台半ばのスモールマウスをキャッチしており、こちらも伝説式自慢権を獲得していた。
 いずれも彼らの自宅から労せずして行けるフィールドである。
 そのことが妬ましくてならなかった朕は、「おめえには冒険心が無え」と、それぞれに伝説三輪式で返信した。

 19時を過ぎて、ようやくじじい二人が戻って来る。
 テンヤマダイは不調だったというが、クロムツを始めとしてクーラーボックス一杯の大漁ぶり。
 勿論、御老公は絶好調で、まったく疲労の色を見せない。疲れきっている老爺との対比はあまりにも強烈だ。
 かくもザリガニ食の効力は大きなものか。
 帰り道も引き続き御老公が運転するという。
 老爺を独り残して去るのは不安ではあったが、お互い人生をしくじった烏合の衆。案じたところで何が出来るというわけでもない。
 仁という言葉が虚しく感じられる。

 帰路、絶好調で今日の話をまくしたてる御老公ではあったが、夜道は眼に厳しいと弱音を吐く。
 頑丈な人ではあるけれでも、やはりおじいちゃんなのだ、という訳で朕は快く運転を替わってやった。




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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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