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熱暑乞食屋敷

 6月9日。

 土曜日がやってきた。
 三輪車が健在であることは判明したが、現状では元祖登戸名物を期待するだけ無駄だろう。
 凡人の目から見れば、いつも自分だけ釣れなくて、いじけて来なくなったように見えるが、釣りという低レベルな競争から卒業した金もあるし女も居る勝ち組なのだ。負け組である釣り廃人が屯するような多摩川に降りてきて新川節や野池武勇伝を謳うまでもない。それよりも、釣りを知らない、興味もない人々の前で、釣りキャリアを吹聴していた方が一目置かれるだろうし、鍍金が剥がれる恐れも無い、といったところではなかろうか。
 或いは、釣り廃人たちの来ない流域、フィールドで、今も変わらず謳歌を続けているのかもしれない。
 そんな訳で、伝説ファンには絶望的な状況なのかといえばそれは違う。
 何故なら、もうひとつの伝説は降臨しており、朕は実際にコンタクトできたのである。
 それだけではない。
 実は、李立がかつて堰下エリアで何を釣りに来たのかと尋ねられ、シーバスを釣りに来たと答えたところ「こんなとこにシーバスなんて居るわけねーだろ!」とキレられたことがあるという。そのキレた人物が伝説の人であると知ったのは今年五月のこと。
 我々が知らなかっただけで、降臨は継続的にあったのだ。
 強力ではないが、今、多摩川の伝説ファンには追い風が吹いているといっていい。

 この日は少し早めの、昼食後の出発。
 窟前に着いてみれば、猫肉骨粉劇場が開演されていた。
 追放者の乞食おじさんはきっとこの様子を窺える場所に身を隠していることだろう。
 どれほど言葉で己を飾ろうと現実がその全てを否定している。
 そんな伝説諸氏にも似た面白さを持つ追放者は今どこに、と周囲を見回していたところ、セニョールと張横を発見。
 今日は張横がナイスサイズのスモールマウスを釣ったとのこと。
 朕が「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、釣れない人ならではの汚ねえ唾を吐いていたところ、師匠もやって来る。
 はからずも修羅が君臨していた時代からの釣り廃人集合となった。
 釣り廃人たちはそれぞれの感触を語らった後、朕と師匠は韓流ポイントへ下った。

 韓流ポイントへ向かう途中、公孫戍より、これから夏侯章を迎えに行くとの連絡が入ってくる。
 途中、小田急下に寝そべる追放者を発見。予想通りの動きだ。
 映画三昧だという師匠と映画の話を弾ませる朕だったが、朕の話す内容はあまりにも下品だとの指摘を受ける。
 下ネタが多いのは夏侯章の影響であるといって、全ての罪を夏侯章になすりつける朕であった。
 しかし師匠はいう。
 同じ下品な内容でも、貧賤なる身分のものが話せばいかにも野卑に聴こえるが、貴人が話せば下品ささえも気にならない、と。
 どうにも埋まらない、君子と小人の格差。
 いくら世の嘘つきたちが、やれ平等だの民主主義だなどと謳っても、人それぞれ生まれ持った性は違うもの。卑しい嘘つきたちが先進的な思想とやらを掲げ、時代に合った規範とやらを設えたところで、病はこじれ悪化するだけである。

 韓流ポイント到着。
 ポイントに主君の姿は見えなかったので、しばし師匠と共に夏侯章の到着を待っていたが、そろそろ映画が始まるとのことで師匠は撤退。
 朕は独り、主君の到着を待つ。

 程なくして夏侯章と公孫戍が現れる。
 手マンポイントにバスは見えていて、ルアーへの反応も良い。
 しかし、バイトを得るための決定打は見出せず、朕はこのポイントを諦め、伝説を釣りに行くと言って堰下エリアへ行くことにした。

 堰下エリア。
 足マンキー場から堰直下までを流して行くうちに、中間の瀬落ち込みポイントで二度のストライクがあったが、いずれもリーリング中にフックアウト。
 もうひとつの降臨が起こっていれば「アタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!」と、プレミアをちょうだい出来たかもしれないが、この日、ゾッド将軍の姿が見えることはなかった。

 韓流ポイントに戻る。
 昼間の暑さによる疲れがどっと押し寄せてくる。
 朕が堰下に入っている間に、公孫戍はペケニシモなサイズながら3匹のスモールマウスをキャッチしたとのこと。
 朕は「ああ、そのサイズかあ」と、汚ねえ唾を吐きかけてやれなかったことを悔やんだ。
 既に20時も近い。
 そろそろ僕たちは今恋をしているコンビニへ、という気分だったが、公孫戍は細君に無言の門限を定められている身であるため、門限に間に合うぎりぎりまで釣りをしていたいという。
 釣果を諦めている朕はこの間、夏侯章と漆園の誓い実現のための具体策を論じ合ったり、公孫戍と伝説論を戦わせていたが、遂に何事も起こらぬまま刻限が来てしまった。
 何かと寂しいまま帰るのは切ないものだが、我々は「お疲れえ!」と、口だけは勇ましい伝説三輪式で解散とした。

 窟前に戻ってみれば、窟前の土手に追放者が寝ていた。
 夏の装いになったとはいえ、窟の中は暑すぎるのだろう。
 こんな思いをしてまで果たさなければならない使命とは、夜中にやって来る猫への餌やりだという…。

 ボーズに終わってしまったので「メシなんか食わねえぞ!」と、ブチキレるのもありだが、結局空腹に耐え切れず、容易に言を翻すのはあまりにもみっともない。
 朕は三輪氏のような愚は犯さず、帰宅後素直に空腹に対処した。
 食事を終え、あとはシコるだけだと構えていたところ、公孫戍よりメール着信。
 予定がずれ、鬼の居ぬ間の洗濯が可能な状態になり、独り韓流ポイントに戻り、キャッチしたとのこと。
 勿論朕は「そこまでして釣りてえか」と、そこまでしても所詮釣れないレジェンドⅠ、Ⅱ共通の汚ねえ唾を吐きかけてやった。












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テーマ : プロレス
ジャンル : スポーツ

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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