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藪を突いて乞食を出す

 5月20日。

 近代の毒が蔓延する以前の書物には素晴らしい英知が記されている。
 どうやら朕は疲れているのではなく貧しいのだ。
 そう知って安心し、やむなく娑婆に出ようとしていた昨日の朝、伝説三輪氏が好んで行っていた朝練に行っていたという李立より、堰下エリアからの釣果報告が入る。
 コイ、ナマズだけでなく、またしてもシーバス。
 妬ましいことこの上なかったが、あからさまにはせず「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、僻み味特濃な伝説三輪式大人の対応をしてやった。
 更に同日夜、登戸エリアに入っていた公孫戍と侯嬴こうえいより、釣果報告が入ってくる。
 公孫戍は40クラスを含む4匹のスモールマウスを。
 侯嬴はナマズを2匹。
 勿論、「オレにかまうな、上手い連中と仲良くやってくれ」と、伝説三輪泣きである。

 三輪氏はいわずもがな、どうしてアナザー氏がいつも釣れていなかったのかの理解も深まって迎えた当日。
 昼寝して起きてみれば18時を過ぎていた。
 久しぶりに多摩川に来た、と言っていたナマズさんはもう帰ってしまっただろう。
 今日は早めに上がると言っていた公孫戍と主君の夏侯章はまだ居るかもしれない。
 急ぎ登戸へ向かう。

 窟前から一帯を眺めるも、今日も降臨の気配は無し。もうひとつの風は吹くようになっているが、新川節が流れることはもう無いのだろうか。
 全ては天のみが知る、詮無きこと、ということで我が主君への謁見を優先させる。
 韓流ポイントに入ってみたところ下野さんと夏侯章。
 下野さんには布衣の年長者に対する礼、夏侯章には王侯への礼で挨拶した。公孫戍は職分という点では朕と同格だが、年長者である。やはり礼はおろそかにしない。
 人には分け隔てなく接せよ、という兼愛の思想がある一方で、尊卑親疎の度合いで用いる礼式は異なるべしという思想もある。
 いつぞや、儒教を非難する毛唐の主張が見出しの雑誌を目にしたが、異民族の差し出がましい思い上がりに他ならない。
 名誉白人になるぐらいなら、東夷でいたほうがましである。
 やはり人には貴賎があり、並の人間と君子ではものが違う。
 朕は夏侯章に、先日達成者となったライギョの写真を見せ、我が君のお褒めにあずかった。
 侯嬴よりメール着信。
 18時には出発するつもりだったが寝過ごしてしまい、これから出発するとのこと。
 この日は侯嬴がワッパープロッパーを譲ってくれるというので、韓流ポイントには脈が無いと判断した朕は主従に別れを告げ、降臨跡上流に向かうことにした。

 陽が沈む頃、降臨跡上流に到着。
 侯嬴もちょうど来たところで、楽しみにしていたワッパープロッパーを受け取る。
 ナマズが良く釣れるという話を聞かされていたし、スモールマウスが何度もアタックしてくる様を目の当たりにした。
 その辺の釣具店では手に入らないベイト、と半ば諦めていた商品がようやく我が手に届いた。
 受け取り後、早速キャストしてみたところ、数投のうちにバイトが出る。
 今日は良き日と期待したが、その後は何も起こらないまま時間だけが経過していった。
 「おめえが釣れるって言うからさっきから投げてるけどよお…釣れねえぞ
 「おめえさん、ワッパープロッパーは良い良いっていうけどよお、オレには使いどころがわからねえ
 釣れないのは自分の落ち度ではないという方向に捻じ曲げられた気になれる術を心得ている朕は、伝説三輪式のいずれかを侯嬴にぶっ放そうと思っていた矢先、侯嬴がストライクを得ていた。
 40には届かなかったがフローティングミノーに食ってきたスモールマウス。
 朕は顔を赤らめ、怒気を含んだ涙目で「夜のスモールはフローティングミノー引いてくるのがパターン。つまらねえ釣りだ」と、伝説式で僻んでやった。
 この頃、集中力が切れていた朕は撤退を表明。
 「何だ、もう諦めるのか。おめえには根性が無え
 もう少し粘ってみるという侯嬴より、伝説式をちょうだいしての納竿となった。
 帰り道、独り南蛮の地に遊ぶ史進より便りが届く。
 イカは釣って楽しく、食って美味いので最高だと言うので、朕は「尻尾の無い生き物を釣ってどうするんだ」と、捏造のカリスマ式で応じた。

 窟の前に戻り、夏の装いとなった窟を覗き込んでみたところ、追放者が寝ていた。
 こちらに気付くや、必死の“オレは負けてねえ”アピールを怒涛のごとくまくし立てる。己を取り繕うことにのみ心を奪われ、朕が冷笑していることにまったく気付いていない。
 朕は藪を突いてしまったことを後悔しつつ、喋り続ける乞食をそのままにして黙ってアクセルを開けた。







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テーマ : プロレス
ジャンル : スポーツ

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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