登戸無宿

 3月29日。

 韓流ポイントでのスモールマウスが好調だった昨日。
 降臨跡上流域に入っていた侯嬴こうえいはワッパープロッパーでナマズをキャッチしていた。
 水温が上がってきてナマズが活動している今、いかに釣りづらくなってしまったとはいえ、いつまでも「自分、根っからのバサーなもんで」と、肝心のバスが一番釣れていなかった人のように無関心を装うことは出来ない。

 侯嬴の釣果に刺激を受け、相羽リグの準備も万端。
 この日は昼食も摂らず、午前中に手マンポイント入り。
 早速相羽リグを組もうとしていたところ、先ほどトップウォータープラグでバスを釣り上げていたバサーが魚を持ってうろつきつつこちらに近付いて来る。
 どうしたのかと尋ねると、リリースしたいので網を貸してくれという。
 30少々のバス。そのまま放ってやればいいじゃないか、と朕は敢えて断った。
 丁寧なリリースをしたいというのはわからないでもないが、ならば最初からそれなりの準備をして来て然るべきだし、だいいちいかに優しく水に戻そうが、それ以前に魚を素手で掴み、長いこと空気中に晒しておくことの方がよっぽど魚体にダメージを与えていることに気付いていない。
 昨日のヤング正恩といい、気の滅入るような釣り人(?)がやけに目に付く近頃である。

 相羽リグ投入。
 ここへ別のアングラーがやって来る。
 ちょうど相羽リグにヒットがあったところで、蝦の話が始まる。
 この人物もまた、多摩川は中野島界隈に通う釣り廃人のようで、足元のネスト準備中らしきバスの動きを観察しながら、含蓄のある話を聞くことができた。
 釣りの下手くそ、人の下手くそが多い近頃、普通の釣り人と見えるとどこかほっとする。

 やがてナマズさんや、王孫賈おうそんかとその仲間がやって来る。
 「何だ、釣れてねえのか。だらしがねえなあ」王孫賈も伝説式を使いこなし、礼に欠くことは無い。
 この日は蝦の数だけバスを釣ってやろうという意気込みでいたが、岸寄りをうろつくバスはよく見られても、通り道、餌場と目される所への寄りは悪く、単発を拾いながらぽつぽつと、という感じの釣れ方だった。
 それでも30~40台を12匹と二桁釣果を得ることが出来、満足できた。
 一方、同じく相羽リグを使うナマズさんは「アタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!」に止まる。
 今日の相羽リグの釣果の差は、リグのフォールスピードの速さと、細かく打ち込むポイントを変えて行ったかどうかにあった。
 いかによく釣れる餌釣りとはいえ“ミミズ投げれば一発”とはいかないのが難しいところである。
 ナマズさんの撤退に合わせてライブベートフィッシングを終え、ルアーフィッシングに移行。侯嬴と合流予定になっている降臨跡より更に上流のポイントを目指す。

 降臨跡を通ってみれば、韓流ポイントの賑わいとは逆に閑散としていた。
 降臨跡は一瞥するに留め、五本松対岸まで上る。
 ナマズ狙いで打つべきポイントがわかり易く、アプローチもし易くなっていたが、生命感が希薄。
 旧第一ワンドまで下る頃に日没を迎える。
 本流の水深は非常に浅く、潜ってしまうベイトは使い物にならないという状態。
 果たしてマニックがナマズにアピールするのかどうかは不明だが、これが手持で一番使い易かった。
 そしてこれなら「マニックでナマズが釣れるかの実験」という伝説式保険にもなるのでマニックで通してみることにした。
 魚種不明ながら何度か水面でのバイトはあったが、いずれもフッキングには至らず。
 やがて上流側に侯嬴が見えたので「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、お約束の挨拶をし、ここであったことを話したところ「アタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!」と、お約束の文句をいただく。
 朕は上下に往復し、再びバイトを得るが乗せられず。その間に侯嬴もバイトを得ていたがやはり乗せられなかったという。
 居るには居るが乗せられない、かといって打開するにはどうすればいいのかわからない。
 いずれにせよ、何も食わずほぼ半日を多摩川で過ごしてきた朕は空腹が限界に達しており、まだ粘るという侯嬴に別れを告げ、撤退することにした。

 駐輪所に戻ってきたところ、追放者は不在。窟の周りには工事用の資材も置かれている。もしや追放者はオペラ座からだけではなく、お上からも追放されてしまったのだろうか。
 ここを追われて行く当てなどあるのだろうか。
 現代の無宿渡世とは、かくも過酷な世界なのである。
 




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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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