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進化窟

 2月14日。

 結局のところ、己が内に容れられぬものに依存しなければ生きて行けないのは何とも辛いものだ。
 そんな娑婆の責め苦の中にあった昨日、漆園では侯嬴こうえいと李立が遊を実践し、李立がアラバマリグでスモールマウスをキャッチしていたとの報が入る。
 朕は「オレにかまうな。上手い連中と仲良くやってくれ」と、皮肉と称した伝説三輪泣きで応じた。

 迎えた当日。
 他の釣り廃人の楽しむ様が羨ましくてならず、娑婆で悶えていたのは朕独りではなかった。
 同じく、漆園の劉邦に仕える公孫戍こうそんじゅも、娑婆での事を片付け次第、降臨跡へ向かうとの連絡あり。

 帰宅してみると、既に公孫戍は登戸入りしており、だけではなく早々に40クラスを釣ってしまったとのこと。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!
 伝説泣きしながら今すぐポイントへ、とは思ったが、暖かい日ではない。日没後の冷えに備え聖衣GETTに装甲を施しておく必要がある。

 和泉多摩川のミニストップにはクソ映画必至のDVDが新たに並べられていたが、これは狙い過ぎだろうと思えるタイトルばかりだったので、必要なものだけ買い、もう少しの距離にある降臨跡へ急いだ。
 その間にも好釣のメールは次々に舞い込んできて、センコーで40アップ3匹を含む4匹のスモールマウスをキャッチしていた。
 降臨跡に公孫戍を見つけるや「突き落としてやろうか」と、自分だけいつも釣れなくて、よく釣る者に本気で当り散らしていた人の物真似をしてその功を称えた。
 
 バスは次の動きに入っていて、どこかスポットに集結しているのではないか、と期待を込めてストライクの集中した一帯を攻めてみたが反応は得られず。
 強くはないが、南からの風は吹き続けていたので、琵琶湖ポイントの浅場にポイントが変わったか、と流すがこちらも反応は得られない。
 護岸の上には見事なサイズ、プロポーションのスモールマウスがこれみよがしに殺され、打ち捨てられていた。実際やりはしないが、このような所業を為す者はさんざんに打ち据えてやりたいものである。
 スポットだと思われていた一角でも、琵琶湖ポイントの浅場でも反応を得られぬまま時間が経過。
 水門工事が発する異常と、それを打ち消す強風が魚の動きを左右しているのだろう、と想像はついたが、風が来るまで惰性のキャストを続けて待つより他無い。
 韓流ポイントに入っていたという毛遂もうすいがやって来る。見た目の印象ではこちらの方が可能性があるように感じられるとのこと。
 ならば諦めずがむばってみようではないか。
 再び身を入れてのキャストが始まる。

 夕刻近付き、工事が終わり、風が強まりだす。
 いよいよ機が巡って来たか、と朕はスティックベート、ジャークベート、リップレスクランクをローテーションさせて引き倒していたが、ここで「ハードベイトでの男らし~釣り」を成功させていたのは公孫戍だった。
 グリマーのバイト誘発力についてはよく聞かされていたが、実際この目で見るのは今日が初めてだった。
 続けとばかりにヒットがあった付近でキャストを始める朕だったが、やがて風は弱まってしまった。
 光量が落ちてくる頃、公孫戍のリールに致命的な糸撚れが発生してしまったのを機に、韓流ポイントの様子を見に行くことにする。

 移動中、窟には追放者が見えていた。
 仕事は随意に選べ、オペラ座団員の誰よりも小金を持っているというだけにゆとりがあるのだ。しかし、そうではあっても電気、ガス、水道も通らない軒下に長期にわたって滞在するのは度外れのゆとりというものだろう。
 我々はこの光景を眺めながら、ゆとりとは何か、について議論を戦わせた。

 韓流ポイントに見知った人の姿あり。
 その人は我らが主君の夏侯章かこうしょうだった。
 公孫戍は連絡がつかず、消息不明を心配していたが、来るべきところにはこのように来ている。
 至人には小賢しさとせわしなさを増長させるだけの機械など無用のものなのだ。
 朕も携帯電話は所持しても多機能など不要、と昔の機器を使っており、特に大切にはしていないが、それでも完全に手放せない生活から抜け出せずにいる。これを小人なるがゆえの悲しみと謂う。
 伝説三輪氏のベイトは見当たらなかったが、張良が居り、ペンシルベートをキャストしていた。
 ここ最近はトップで釣れることが多いとのことだが、やはり今日の風はこちらに適していないようで、今日釣れた二匹はいずれも沖にイモを遠投しての釣果とのこと。
 降臨跡で粘った方が良かったか、とも思ったが、ここは釣りが上手く行かなくても蝦採りができるという利点がある。

 完全な日没となり、朕は蝦採りに移行。
 公孫戍と夏侯章はルアー釣りを続ける。
 蝦は相羽リグを楽しめるだけの数を補充できたが、ルアー釣りの方は不調。
 そして迎える納竿の時。
 ただ一人、40アップ含む5匹の釣果を得た公孫戍に対し、朕は「でもよお、公孫さんは新川では釣ったことないよな。大したことねえなあ…オォーイ!」とブチキレ、夏侯章は「オレが考え無しにやってると思うか?」と泣いて、それぞれ伝説式で咬みついた。

 今や伝説式疾駆は諦め、聖人の日ごと口を衝いて出てくる卮言を聞く場となった僕たちは今恋をしているコンビニでの寛ぎの時。
 夏侯章のでたらめな口からでまかせは已むことを知らない。そしてそのいい加減な話の中に真実を把えた言葉が含まれているので、聞き流すことはできない。
 大火もその身を焦がすことが出来ず、大水に沈められることも無い、至聖至徳の人である。彼を遮ることが出来るのは魔女の毒気ぐらいのものであろう。
 いつまでもこの卮言を聞いていたいところだが、釣りという低レベルな競争を続けていくには、切りたくても切れない俗世のことどもに応対していかなければならない。
 ということで、惜しみながらの解散となった。

 駐輪所に戻ってみれば、オペラ座には二、三人の釣り人の姿。
 伝説三輪氏が大いに蔑んだ釣り廃人は朕とその仲間だけではないのだ、と、どこかほっとする光景だった。
 振り返ってみれば窟の様子がこれまでと違っていた。
 追放者が抜けたかのように見えたのだがそうではなく、入り口と裏手に設えていた耐寒扉が俎板兼臥所を直接覆う高密度仕様となり、窟の耐寒性能を向上させていたのである。








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テーマ : プロレス
ジャンル : スポーツ

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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