Arm Joe

 1月1日。

 ちょうど一年前のこの日、かの伝説人が降臨し、元号は“伝説”から“降臨”へと改まった。
 今年も奇蹟が起こることを期待して多摩川に向かう。

 登戸入り。
 窟の扉は開いており、追放者は不在。無事年を越せたのだろうか。どうでもいい心配というものだ。
 今日は人出が極めて少ない。
 これでは例え新参の釣り人が好物の伝説三輪氏が降りてこられても、寂しい思いをさせてしまうことだろう。朕はレジェンドⅡのために悲しんだ。
 
 降臨跡には公孫戍こうそんじゅ侯嬴こうえいの姿があるのみ。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!
 以って新年の挨拶とする。
 伝説三輪氏の姿を見た者は無い。
 このまま元号は二年、三年…萬年と続いていくのか。
 もしかしたら、昨年の経験から、元旦はベイトが居ないと知って来ないだけのことなのかもしれない。
 伝説ネタはともかくとして、我らの君主、夏侯章かこうしょうが見当たらぬが、どうしたことであろう。
 公孫戍に尋ねてみたところ、どうやら昨年末以降、陰陽の調和が乱れてしまったという。
 何があろうとハナクソをほじり意に介さずの無敵の君子も、燕雀が媒介したバイラスに屈してしまったのだ。
 漆園の民には太陽のような存在である聖人の不在は大いに痛手である。
 我々は偉大なる君子の本復をこころから願った。
 我らの心を豊にしてくれる卮言しげんを聞くことが出来なくなってしまったとはいえ、釣り廃人たちは伝説の地での釣りという低レベルな競争を楽しむことはできていた。
 過ごし易い天候、川には適度な流れもあり、釣れる雰囲気はあったためである。
 しかし、結局誰も反応を得られることは無く、夕刻が近付く頃、侯嬴は撤退。
 侯嬴の撤退を機に朕と公孫戍は韓流ポイントに移動することにする。

 韓流手マンポイントにはナマズさんと下野さん、二、三人の釣り人。
 ナマズさんに手応えを尋ねてみたところ、バイトがあったのみとのこと。
 「アタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!」と、アナザー式で応じる。
 既にナマズさんは帰宅の準備に入っており「何だ、諦めるのか。おめえには根性が無え」と言って送り出すのみ。
 下野さんが移動した後、朕はガチで相羽リグのトレーラー捕獲に身を入れることにする。
 
 やはり大潮の日は浅場に出てくる蝦が多い。
 調子よく、とはいかなかったが使えるだけの量を確保できたので、餌釣りをしようと思ったが、風が強くなってきたので結局ルアー釣りをするしゃなくなってしまった。
 ケーポップで粘っていた公孫戍がこちらにやってくる。
 既に20時も近い。
 最後はここで粘ろうと続けていたところ、公孫戍がバイトを捉える。
 朕は蝦獲り網でランディングをサポート。
 この網は思っていたより頑丈で使い易く、ランカシャーとカルガリーのツープラトンを決めることが出来た。
 「明けましておめでとうフィ―――ッシュ!
 伝説三輪氏ならそう言ってはしゃぐことだろう。
 しかし、我々は喜びつつも冷静に状況を読み解こうとしていた。どうやら魚が入ってきたような気配である。バスとは限らないが生命感を示す感触が顕著になってきたためだ。
 「釣れるまで帰らん。お前も付き合え」とばかりにキャストを続ける。
 朕は主に表層を、公孫戍はボトム寄りをという分担作業で粘り続けるも、既に22時が近付いていた。
 これでは僕たちは今恋をしているコンビニで寛いでいる訳にも行かない。
 遂に朕はノーフィッシュを受け容れ、解散となった。

 登戸名物は降臨せず、伝説式疾駆を見る機会を失い、意気消沈して駐輪場に戻ってみれば、窟の耐寒扉は閉じられていた。その姿を目にすることはなかったが、どうやら追放者は無事年を越すことができたようである。
 かくして降臨二年が始まった。
 今年はどんな歴史が刻まれるのか。
 伝説の地に於ける釣りという低レベルな競争はまだまだ続く。

 ※マー語









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ジャンル : スポーツ

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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