沽券

 7月18日。

 フェイキードッグのストックが出来たことと、クリアボデのものがあったことにより、現在使用中のフェイキードッグの消音化に着手。
 この日、エポキシの削りと防水処理を終え、伝説式保険が仕上がった。
 しかし、作業が完了する頃、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならな眠気に襲われる。加えて外は雷雨。
 今日は欠勤か、と考えていたところ公孫戍こうそんじゅより、今日は雨が鎮まり次第、新川で鍛えた本気を実釣をもって示すといわんばかりの、修羅な意気込みを表したメールが着信する。
 朕は、何はともあれ一寝入りしてからだと返信し、眠りに就いた。

 目が覚める。
温かい時期の雨は釣りにとってプラスである。このプラス要素が、長潮というマイナス要素を上回ってくれれば機はある。
 サイレント化したフェイキードッグも使用可能な状態になっている。
 もし、釣れなくて僭称釣りウマのプライドが傷付きそうになったって、実はあの人ヘボいんじゃないか、と見下されそうになったって、実験だったのだからという方向に持って行けば、己の貴さは保たれようというもの。
 少年たちの上達ぶりが顕著になってきた後年、己の立ち位置を守ろうと、こんな風に必死で考えていたのだろう。
 朕が、やり方のまずさを指摘したところ「オレが考えなしにやってると思うか?」と噛み付いてきたのも納得である。
 こうした三輪氏が流してきた涙のおかげで、今、我々はボーズを恐れずに釣り場に臨めるようになったことを感謝せねばなるまい。

 登戸名物がベイトを捕食するのにうってつけの場所にプレッシャーを掛けるのはあまり気が進まなかったが、降臨跡へ。
 今日は平日にもかかわらず、ソープオペラが開演されていた。
 肉骨粉問題は一通りの解決を見せたようで、再びプリンセス・オブ・バワリーと、それに群がる全作、半作たちの物語が紡がれていた。
 既に現地入りしている公孫戍を見つけたら「おめえどこに居るんだよ!」 とブチキレようとする朕であったが、向こうが先にこちらに気付いたようで、琵琶湖式キャスティングを決めてみせてくれた。
 朕は今見てきたばかりのソープオペラの話をもって挨拶代わりとする。
 上流側にいるのは李立だというので、朕は近寄り「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、礼儀作法というものを蒙昧なる若者に示してやった。
 しかし、李立はまだ物足りなさそうにしていたので、下野さん曰く「対岸からでもわかる」ほどの特徴的なアナザー式キャスティングを披露してやったところ、ようやく満足した表情を見せた…というより、バカウケだった。
 先ほど、ナマズを一匹釣ったという。当然「突き落としてやろうか」と泣いてみせることは忘れなかった。

 雨のおかげで濁りが入り、強い流れが生じている。
 水位上昇は吉、下降は凶という状況である。
 堰の開閉が成否の鍵を握っているが、役人のやることは、理解、予測不能なことが多いので困る。
 朕が来てから、堰操作による水位の変動が二度あり、高水位、上昇の動きの時に反応を得られていて、李立が更に一匹釣り上げる。
 結局、キャッチまで持ち込むことが出来たのは李立だけで、朕と公孫戍はアタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!に終わる。
 李立が「何だ、釣れなかったのか。だらしがねえなあ」と、最もだらしがなかった人の真似をするので、朕は半開きの涙目で「まあよお、オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」という伝説式皮肉で応じた。

 そもそも今日は、ラトル音を殺したフェイキードッグが釣れるかの実験であり、釣れなかったとしても自分がヘボいからではなく、何でおまえらそんなにガチなんだ?楽しみ方は人それぞれじゃねえか、と伝説式思考を働かせていたので、むやみに高いプライドも傷付くことななかった。
 同じくノーフィッシュに終わった公孫戍も穏やかだった。それというのも、今日はエバーグリーンのサイレントペンシルベートが釣れるかの実験だったからである。
 もし、伝説式保険を用意していなかったら「ハードだってさんざん引いたさ!でも釣れなかったんだよ!」と、無様に泣きキレていたことだろう。


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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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