Thank you God

 7月16日。

 昨日、降臨跡ではペケニシモながら公孫戍こうそんじゅ、セニョール、張横がスモールマウスをキャッチし、ソープオペラも開演され、伝説三輪氏の降臨こそ見られなかったものの、こちらに気付いていないふりをして駆け抜けてゆくアナザーレジェンド氏が見られたという、なかなか賑やかな土曜日だったとのこと。
 二回も姿を見せたもうひとつの伝説。
 二度あることは三度あるともいう。
 今日は、僕たちは今恋をしているコンビニへ行くのがますます楽しみになった。
 また、今回は“ラトル音を殺したK0ミノーが多摩川釣れるかの実験”という伝説式保険もあるので、ボーズを食らっても自分がヘボいからではないという方向に持っていけた気になれる。

 かくして帰宅してみると、先日、史進が送ると言っていたフェイキードッグの小さい方が届いていた。
 朕の生活圏内ではまったく見ないルアーだが、関西では普通に売られているという。
 ただ、このルアーは既に信を得ているベイトなので、持ち出したところで伝説式保険としては使えない。

 夕刻少し前に家を出ようとしていたところ、公孫戍と夏侯章かこうしょう侯嬴こうえいのテリトリーに侵入したとの連絡あり。
 道中、コンビニに寄ったところ、ムチムチコスチュームをまとった気色悪いオッサンの一団に出くわしてしまった。この目の汚れを浄めんと、ついに手にしてしまったのが『地獄の女囚コマンド』。
 テレ東でさんざん垂れ流された、安くて、下らなくて、志の低い、でもそこがたまらないクソ映画である。微妙な感じのセクシー美女軍団というのもまたそそられるではないか!
 「あなたのハートには何が残りましたか」と言われても、答えに窮するような傑作だ。
 棚から下ろされずに売れ残っていてくれたことに感謝せねばなるまい。
 醜悪なものを目にするという憂き目には遭ったが、素晴らしき激安映画を手に入れたことにより、すっかり御機嫌麗しくなった朕は、軽やかな気持ちで再び走りだした。

 降臨跡。
 名物の三輪車はまたしても見えなかったが、オペラ座では半作とアイアンメーデンが公演中だった。
 華無き舞台は一瞥するにとどめ、公孫戍と夏侯章の居るポイントを目指す。

 ポイントには飲料水の到着を待ち座り込んでいる夏侯章と、キャストしている公孫戍が見えた。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!
 レジェンドなお約束は欠かせない。
 君子にはお忘れになったという飲料水を献上し、史官には今日の感触を尋ねる。
 今日、この流域は、筏を浮かべる催し物のために堰が閉じられ、水の動きが著しく鈍り、エリアのほとんどが死に、流れが生きているここのようなポイントがより強力になっているとのこと。
 確かにここは見た目にも水が良く、アユの群れが岸際に寄り付いていた。
 魚の活発な様子は見えているが、なかなか反応は得られない。光量十分なクリアウォーターのシャローでもあるので、仕方のないことである。
 ポイントを休めながら、ソープオペラ人間模様やら、二週に渡って姿を見せたアナザーレジェンドのこと、そして真面目にルアー釣りの話などをして光量が落ちるのを待つ。

 陽が傾き、明らかに光量が落ちてくる頃、ルアーに反応するバスやナマズが出てくるようになった。
 盛んに、というほどではなかったがアタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!と楽しめる程度には反応があり、公孫戍がキャッチに成功する。
 トップウォータープラグでの男らし~釣りでの釣果である。
 朕は、新川で鍛えた本気を差し置いて釣られてしまったのが気分でならず「多摩川のナマズは流れの効いたシャローでコアユ引くのがパターン。つまらねえ釣りだ」と、伝説三輪式で僻んでやった。
 まだ続きそうな雰囲気はあったのでキャストの手を緩めずにいたが、ほどなくして風向きが変わってしまう。
 上流側からの風は、このポイントにはマイナスである。
 更に、上流側にあった雷雲が下って来たのを機に、撤退を決定。
 この日、侯嬴は現れなかったが、いずれ会えるだろう。その時は今年の感触を聞いてみたいものである。

 釣りは志半ばにして、という感じで終えることになってしまったものの、僕たちは今恋をしているコンビニでの“伝説のことを思う夕べ”という楽しみがある。
 宇宙の生エーテルを取り入れているかのような、アミューズのタレントが好きらしい御婦人を見てしまったのをきっかけに多摩川の磁場について語らうことになった。
 この時、またひとつ驚くべき事実を知る。
 何と、かつてこの近所にエーテル工場があったというのだ。
 エーテル精製の際、宇宙の神秘に関わる、生エーテルも発生していたのではないか。それは未だこの地域に残留しており、我々が不思議な磁場と称するものになっているのではなかろうか…そもそもエーテルとは何なのかを朕は知らなかったりする。
 「あっ、アナザーが向こう行った」
 と、不意に公孫戍が言った。
 朕は後ろ姿しか見られなかったが、確かにアナザー氏だった。
 これも生エーテルの作用か。
 ブラボー!エーテル!
 世の中には不快なものが満ち溢れている。そんな世の中の、数少ない愉快な出来事であった。

 さて、君子には、その忠義を果たせぬままになっている漆園の誓いだが、依然継続中であることを伝え、牛の肉一ポンドの話や、しをみ食堂のカツカレーの話をしていたところ、夏侯章は放屁なされた。
 朕はただただ恐れ入るばかり。
 すると「あ、また」と、公孫戍の声。
 視線を上げると、疾駆していく自転車と先ほども見た後ろ姿。
 思わず沸き上がる笑い声。
 二週連続にして、本日二度目の伝説式疾駆。

 釣果は得られずとも、休日ならではの味わいを楽しめたことにより、釣果を得た者に対し「おめえは一軍、オレらは二軍、そういう考えやめねえか?オレたちそもそもそういう付き合いだったか?」と、泣いて噛み付くことなく帰ることが出来たのだった。

 ※マー語



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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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