夕暮れの明星

 5月28日。

 週末ともなれば、かつてはよく檄文が飛んできたものだ。
 それは修羅の勢いに満ちたものだったが、その結果のほとんどが惨惨たるものであって、修羅という鍍金が剥がれる原因であり、伝説の生まれるきっかけになるものであった。
 物は、勢い盛んなれば早くに已むとか。

 今日もまた、伝説の舞台となった登戸へ。
 おめえらと違ってガチの朕は、登戸を外したときは堰下、という具合に、異なる条件の場所を探れるようにトゥータックルで多摩川に向かった。

 韓流ポイントに入ったところ、師匠と植野行雄が居た。
 今日は共にノーフィッシュで、これから帰るところだというので「おめえらはそれで悔しくねえのか?」と、伝説三輪式で送り出した。
 ナマズさんも居り、まだ釣れていないという。
 韓流ポイントの様子は昨日とは違っていて、小さなアユの群れの回遊が頻繁に見えていた。しかし、それを追い回す魚が見えない。
 一部では既に20センチを超えるアユの群れが居るのだから、この程度の大きさのアユでは、大規模な群れであるとはいえ、フィッシュイーターを寄せる力が足りないのだろう。

 バスがまったく居ないのかといえばそうでもなく、頻度は低いが単発で捕食を行う様子を見ることはできた。朕はそのうちのひとつに口を使わせることはできたが、フッキングを決められず、その様子をナマズさんに見られてしまうという失態を演じてしまった。これがアナザーレジェンド氏だったなら「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」と、キレられていたことだろう。

 不意に見知らぬ人物に話しかけられる。
 この人物、先週隣で二匹のペケニシモを釣っていた読者氏だと判明。
 普段は上流域で釣りをしているが、韓流ポイントが面白そうだということを見て来ているという。
 今日は既にペケニシモを釣っているとのことで、話を聞いていると、やはり伝説三輪氏を泣かせてしまいそうな技量の持ち主であることがわかる。
 よく晴れていて、しかし熱だれしない程度の日曜日の午後。
 そんな心地よい休日に、明らかに自分より上手の者が居て、自慢の新川節を苦笑と共にあしらってしまうような釣り人しか居なかったとしたら、せっかくの休日が台無しになってしまうことだろう。
 そう思うと、三輪氏が降臨されなかったのは、今日に限っていえば彼にとって幸運だったといえよう。
 そして、この読者氏はその後、朕が見ている前で一匹釣ってみせ、その技量の確かさを示していた。
 レジェンドギレしたいところではあったが、ポイントを共有しているので「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と泣くわけにもいかず…。

 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 伝説式お約束と共に公孫戍こうそんじゅと、夏侯章かこうしょうがやってくる。
 降臨跡でセニョールに会い、釣りしないでおしゃべりばかりしていたため、まだ釣れてないし、状況もわかってないとのこと。
 話を聞いても内容を理解しないのが伝説式。
 朕は「何だ、釣れてねえのか。だらしがねえなあ」と罵った。

 反応はしても釣れない、しかしある程度の数は居るスペルペケニシモが溜まる場所がある。マイクロスプーンを巻いて様子を見てみるが、まったくその姿が見えない。
 観察を続けていたナマズさん曰く、その一帯は、投石のごとき着水でルアーが落とされるようになってから魚が消えてしまったとのこと。
 危険から身を守ることと、糧を得ること、生き物にとってどちらが優先されるかは考えるまでもない。

 夕刻に入っていることもあり、朕は小型のブラックを諦め、堰下に入ることにした。
 既にマルタは消えているだろうが、アユと流れに惹き寄せられて、ナマズやニゴイがやってくることが考えられるうえ、先日、シーバスが釣れた場所でもある。
 ポイントには伝説三輪氏が好む釣りをする先客があった。これはポストイットしておくべきことかもしれない。
 朕も、次に降臨があった時に罵倒されないよう、ハードベートのみをキャストしていたが、中途半端な追いを見るだけに止まり、打つべきスポットも少ない一帯でもあるので、やり切らずして釣果を諦め、韓流ポイントの様子を見てから帰ることにした。

 韓流ポイントでは公孫戍と夏侯章が粘っているので様子を訊いてみる。
 夏侯章がナマズのキャッチに成功したとのこと。
 わざわざ移動してナマズを狙いに行って外れを食らった朕は甚だ面白くない。
 そこで「おう、おめえよお、オレが僻んでるみてえに思ってるだろうけどよお、オレは別に僻んでる訳じゃねえからな」と、レジェンド式で泣き、夏侯章に咬みついた。
 すると「僻みてえのはオレだよ」と公孫戍。
 どうやら、公孫戍がひたすら機を窺い待ち続けたところに、夏侯章がひょっこりやってきて呆気なく釣ってしまったのだという。
 為すこと無くして自ずから然るの術を体現する夏侯章に、朕は深く感心した。
 そして、この日のヒットルアーはタイニーブラッシュホッグに似たニセモノワームだとのこと。
 そこで朕は、この日見てしまったかもしれない伝説アナザー氏のように「章くん、そのワーム大事に使ったほうがいいよ」と、自分は釣れてもいないのに何故か上から目線、を用いた。

 帰宅後、久しく見ていない童威からメールが届いていた。
 津久井湖の陸っぱりで七匹釣れたという自慢であった。
 このところ多摩川に現れないのは女学生と青春真っ盛りのためかと思っていたが、こういうことだったとは…。
 この週末、連続ノーフィッシュだった朕は、当然のごとく「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と返信した。


スポンサーサイト

テーマ : 髪型
ジャンル : ファッション・ブランド

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

最新記事
月別アーカイブ
リンク
検索フォーム
QRコード
QRコード