夏草や、伝説どもが、夢の痕

 5月21日。

 登戸名物の三輪車は滅んだかのようだが、朕の二輪車は復活した。
 十里程度の道のりも徒歩ではやはり辛い。
 携帯電話が無くてもさしたる不便無く感じている近頃だが、移動の足はそうもいかず。
 どうやら朕は純白に近付くことはできても、至ることは出来ない人間のようである。

 復活した二輪車に跨り、降臨跡へ。
 降臨跡に人出は多い。しかし、暑さのせいか、釣り人の数は昨日と同程度。休日にしては少ない方だ。
 こんな日でも、進んで大して釣れるわけでもないところに、暑さに滅入りながらも来てしまうのは、レジェンドⅡいうところの“釣り廃人”であり“金も無ければ女もいない負け組”だからであろう。
 それでも、自分だけいつも釣れなくていじけてしまったり、ジンにはわからない新しい愛の形に熱を上げるよりはましかもしれない。
 失なる者は失に同ず、という。

 水の澱んだ降臨跡は一瞥するに止め、今日も始めから韓流ポイントに入る。
 開始当初は「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、伝説三輪氏に咎められそうな状態にあったが、公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょう、セニョールがやって来て、下野さん、師匠、植野行雄といった顔見知りがぞくぞくとやって来る。
 師匠はここでは釣りをせず、今年の小物釣りの見込みや、ロブ・ゾンビの新作映画、サモハンの新作映画、トニー・ジャーとウー・ジンの共演映画を紹介して帰っていった。
 師匠の感性は相変わらず冴えている。

 日光に晒され、立ちっ放しで集中力を保つのは不可能だ。時に木陰に逃れ、無為のキャストをしなければならないこともあった。
 フィッシュイーターにとって魅力的な条件について考えれば、ナイスサイズを狙うならここではないというのは明白だが、今はここでペケニシモを狙うのが早道のようである。
 しかし、日々叩かれている場所。小バスとて容易ではない。
 スティッコーもマイクロスプーンもフッキングにまで至らず、それ以外のベイトでは反応が鈍い。
 だからといってまったく釣れないのも癪でならず、むきになってしまった。

 やがて陽の翳りとともに小バスの動きは鎮静化し、いつの間にかセニョール、下野さん、植野行雄も消えていた。
 朕は、小バスに気を取られ、彼らに対し礼を欠いてしまったことをじた。
 夏侯章の動きがせわしない。あちらかと思えばこちら、そして見えなくなったかと思えばそこに居る。どうやらその心に純白備わっていないようで、軸とすべきルアーも終始定まらず、最初にギブアップを口にしたのも夏侯章だった。
 混沌氏の術を修めてはいるが、まだ至ってはおらず、ために君子ではあっても聖人には足りぬといわれる所以である。
 君子がこの体たらくであるのをいいことに、朕も便乗し、公孫戍に撤退を告げようとしていたところ、公孫戍は目に捉えられない流れの道筋を掴み、二匹のキャッチに成功していのだった。
 ナイスサイズのナマズとスモールマウス。
 ページを飾るに相応しい釣果である。
 勿論「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」泣きで讃えることは忘れない。
 伝説式を用いるならば、見極めるべきものが見えない己の力不足をブチキレることによって誤魔化せるから便利である。
 そしてノーフィッシュに終わった朕と夏侯章は、半泣きになりながら「おめえは一軍、オレらは二軍。そういう考えやめねえか。オレたちそもそもそういう付き合いだったか?」と、公孫戍に咬みつき、ガチではないはずなのに、その言動がガチそのものの伝説三輪式で締め括った。

 ※『北の国から』より
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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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