無限の岸辺

 3月12日。

 ハンドルのがたつきに起因するどうにもならない振動は、リールをがたつきの無いステラにすれば解消できるということは伝説三輪氏が教えてくれた。
 しかし、ステラを持っていない朕は今日も安物リールで頑張るしゃない。
 帰宅すると、多摩川入りしているという施恩より「釣堀状態」「伝説不在」であるということが伝えられる。
 「15分で準備しろ」と、伝説三輪式で脅されたものの、「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、これまたレジェンドⅡ式で返答し、しばし仮眠をとってから出発することにした。

 夕刻手前にポイント入りしてみれば、釣堀状態は解消されており一安心。
 江三子と童威が居たので「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、お定まりの挨拶をする。
 童威と親しげに話す少年は、先日軽く挨拶したやつだ。王孫賈おうそんかの仲間の斉人だという。
 斉人には蕃人には無い粋が備わっていて、この少年には工芸の才があった。飛びは悪くとも、動きと見た目の良いノイジープラグは自作だとのこと。
 下野さんは、今日はまだ一匹しか釣っていないとのことだったが、昨日は6匹という釣果をたたき出し、他にも童威、蔡沢さいたく、ナマズさんがそこそこに釣れていたとのこと。
 そんな中、夏侯章かこうしょうはバラしのみに終わったというので、朕は夏侯章に近付き昨日の結果について聞いてみた。
 「うん、みんな釣れてたけどオレはダメだったよ」
 期待外れの回答だ。
 そこへ公孫戍こうそんじゅがやってきて「D氏が何を期待してたのか気付いてやれよ!」と突っ込んでくれた。
 朕は梶原一騎ばりに「いいヤツ!公孫戍!」といった。
 「あ、アタリはあったけどバラしちゃったよ」
 時既に遅く「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」と、アナザーギレするタイミングを失ってしまった。
 伝説諸氏の話で盛り上がりつつ、一流企業の通行証を首からぶら下げるなら電通か、東芝か、あるいは豊田商事かというところまで話が進み、ポイント移動。

 移動した先には伝説三輪氏のベイトになりそうな釣り人が何人も居た。
 自分の世界では釣りウマな人の講釈を聞かされ苦笑いしている見ず知らずの釣り人…今日も見ることが出来なかったのは残念としか言いようが無い。
 これだけのベイトが居て何事も起こらないのはプレッシャーのせいであろう。

 陽が傾き、釣り人の数が減っていく。
 公孫戍の肩にも限界が来たようで、一足先に撤退するという。朕は「おめえはそれで悔しくねえのか」と、礼儀正しく送り出した。
 斉人の少年が再び現れ、童威とああだこうだとやっている。そのうちに童威が魚を手にしていた。
 今年見た中でもっともペケニシモなスモールマウスではなかろうか。
 これはこれで記録級だ、ということで喝采。
 コアユをキャストする下野さんは何度かバイトを出していたが、フッキングが決まらない。誰もフォローしてくれないので、朕は下野さんに「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」と、アナザー式でキレてやった。

 表層攻めに徹する朕が「釣れましたか?」「アタリはあるよ」から先へ進めずにいた頃、気付けば童威がまた魚をキャッチしていた。
 この魚もボトムを探った結果だという。
 状況的には表層で良いはずだと信じて疑わない朕は、泳ぎ、サイズ、カラーをこねくり回しやっとの思いでキャッチ成功。
 ここでは自分の釣果に箔をつけるために「今日のオレの仕事は終了」と、伝説三輪語録を用いた。
 ほぼ同時に夏侯章も釣果を得ていたので、釣れないからといってレジェンドたちのように荒れたり、泣いたり、キレたりする者も出ず、平和のうちに終わることが出来たのだった。

 ※マー語
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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