憧憬の豊饒巻き

 1月27日。

 先日、またしても伝説三輪氏のように無様に泣きキレなければならない事態が発生していた。
 昨年の晩夏以降見失っているナマズを、義士がさらりと多摩川でキャッチしていたのだった。
 普段「オレはよお、おめえらと違ってガチじゃねえからよお」と言っておきながら、自分には釣れない魚を釣られてしまったときに「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」とブチキレてしまっては矛盾が生じてしまう。
 そうはならないように注意しながらも、伝説の作法を重んじる朕は「多摩川のナマズはラパラ引いてくるのがパターン。つまらねえ釣りだ」といって僻むことにした。
 僻んでいるわけではないと凄んではいたが、これら名言の数々は僻み根性から発生しているとしか思えないのだが…やはり、レジェンドはいつだってミステリアスだ。

 かくして迎えた当日。
 今日も平日なので、多摩川で最も愉快な釣り人の降臨は期待できない。しかし、上昇機運の今日はバスを刺戟してバイトに至らしめる釣りができるのではないかという期待が持てる。
 G・ルーミスのジャーキングロッドと、赤系プラグ、強めのソフトプラスチックといったものを用意した。
 この日も、例によって、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気に苛まれていたが、既に現地入りしている李立より「メガバス的タフコンデションにある」という報があり、これはチャンスだと確信し、気力を振り絞り降臨跡に向かった。

 南風吹く気温上昇の流れにあって、平日であっても人出は少なくなかった。
 好適とはいえない日でも、ここにはベイトが集まるのだ。登戸名物を受け容れられない日は、年間を通しても稀であるといえるだろう。お忍び的な降臨ではなく、神器三輪車を伴っての完全な降臨こそが理想である。
 「新川ではよお…」
 朕は、伝説三輪氏がベイトを捕食する様子を想像しつつ、川岸に向かう。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、朕が言えば、「オレだってちゃんとやってるよ!」と、李立が返す。
 もう40アップを一本釣ったから写真を見せるという。
 レアリスバイブに強烈なアタックをしてきたという。
 いかにも三輪氏が好みそうな“ネタ”というべきものであった。
 我々はこのネタを見ることのできなかったレジェンドⅡを悲しんだ。

 ふらりと蔡沢さいたくが現れる。
 諸流域を漫遊する士の説は、ここに居ながら天下を知る貴重な情報源である。
 今日は、上昇の流れに乗ってシャローエリアに現れるブラックを期待しての降臨跡選択だという。年改まっても、この朕と同年代の釣り師は盛んである。
 朕と李立は巻き、蔡沢は底を探る。
 この一帯にはアラバマリグをキャストする者さえあった。
 居並ぶ釣り人たちは、ベイトのタイプを問わずアタックしてくるブラックを期待していたのだろうが、期待していた現象は起こらず。
 ならば、通常のフィーディングを行う魚を狙いに行ってみようとそれぞれに散って行った。

 新しい動きに入る途中のポイントを探す朕だったが見つけられず、韓流ポイントへ移動。
 李立が先行しており、ライブベートフィッシングをしていた。
 遅れて蔡沢、童威もやって来る。
 童威は朝にライブベイトで六匹のスモールマウスをキャッチしたという。
 ライブベイトは好調で、李立14匹、童威15匹と圧倒的。
 「オレはルアーにこだわるよ」とカッコつけていた朕はわずか二匹。
 他人にばかりに釣られ面白くない朕は、途中退場する蔡沢に「おめえはそれで悔しくねえのか?」と噛み付き、様子を見にやって来た公孫戍こうそんじゅに「オレが考え無しにやってると思うか?」と凄み、伝説三輪式で紳士的な人に当り散らすのが精一杯だった。

 皮算用では40アップを二、三本釣って18時ごろには家に帰っているつもりだったものが、上手く運ばなかったために、結局20時ごろまで粘ってしまった。自分の不手際で遅れが生じたにも拘らず「帰宅が遅い!」と、朕はレジェンド式でブチキレることにした。

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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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