エル・ヒガンデ

 1月22日。

 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 朕が娑婆の毒気に当てられていた日、李立がスモールマウスをキャッチしていた。
 更に、娑婆から解放されるも、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気のため、出勤を控えていた日、李立と施恩が多摩川入りしており、釣果を得ていた。
 良い状況だから早く来たほうがいいよとのことだったが、やはり疲労には抗し得ず、「オレにかまうな、上手い連中となかよくやってくれ」と、伝説式で泣く他無かった。

 かくして迎えた釣行当日。
 これまで冷え続ける一方だった日々から上向きに転じた。
 潮回りは長潮でも、気温水温の上昇と南風は大いにプラスであろうと判断し、主にハードベートを引くためのキャスティングタックルと、通常通りのフィーディングを行う個体を狙うためのスピニングタックルのトゥータックルで多摩川に向かった。

 降臨跡。
 厳しい寒さは感じられなかったが、風は予報と違い北風だった。
 李俊とセニョールが見える。
 「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」の、伝説式お約束は欠かさない。
 李俊はこの日、スモールマウスを二本獲得し、セニョールは昨日70超えのナマズをキャッチしたとのことで写真を見せてもらう。
 当然「突き落としてやろうか」と、泣いて凄むことは忘れない。
 伝説三輪式はこの地の作法として定着しているが、始祖の姿は今日も見えなかった。ベイトの数も少なくないし、“根性”が無くてもしのげる天候でもあるというのに残念としかいいようがない。
 或いは、オジさんたちにはわからない新しい愛の形の模索に忙しいのかもしれない。

 実釣開始。
 今の風はシャローを潤すものではないが、先程まで南風が吹いていたという。
 シャドウラップ、ツンバータイガーDC3、バックフローバイブ、MHスピナーベートといったベイトをキャストしていたが反応は得られず。
 上流側に侯嬴こうえいの姿を発見したので、様子を聞いてみることにした。
 今年に入ってナマズを一本キャッチしたとのこと。最近のお気に入りということで見せてもらったのはデプス鉄板。朕の細工と違って、侯嬴の細工は丁寧である。
 ルアーいじりの話をしているうちに江三子、張横、童威たちがやって来た。
 キャストしながらそちらへ向かう。公孫戍こうそんじゅは現在休養を余儀なくされている身であるため、魔界倶楽部に於ける星野勘太郎的ポジション。びっしびし行かせたのがよかったのか、下野さんが巻きの釣りでバイトを捉えていた。
 40アップと言い切るには微妙なところだが、突き落としてやるには十分なサイズ。周囲に居た者たちは皆伝説式で僻んだ。
 やや時間を置いて、今度は侯嬴がバイトを捉えていた。
 キャメラを構えて駆け寄ってみれば、TDバイブのワンノッカーモデルへのヒットだという。ナマズか或いはバスか…と、寄せてみればニゴイ。
 何が釣れたのか、と釣り人たちが寄ってくる。
 今はただノーフィッシュを逃れただけ、という価値しかないニゴイだが、このヒットが思わぬ喜びをもたらした。
 何と、江三子と侯嬴は元同級生であったことが判明。数十年ぶりの再会というが、そこに同じく同級生であったアナザーレジェンドが居ないのはいささか寂しくもあった。
 彼らが昔を懐かしんでいる間に、ふらりと現れたのは蔡沢さいたく。しばらく釣りに来られなかったのは仕方がないにしても、伝説の降臨を拝めなかったことを心底悔やんでいた。
 幸運を逃したという悔しさがその集中力を高めたのか、釣り人が居並ぶ一帯でナイスサイズのスモールマウスをキャッチに至らしめた。
 こうして釣果を得ることによって生み出される、皮肉と称した負け惜しみ、僻みの類を聞きたかったに違いない。
 朕は蔡沢の心中を察し「多摩川のバスはボトムをワーム引いてくるのがパターン。つまらねえ釣りだ」と、伝説式で僻んでやった。

 陽が落ちる。
 朕と江三子、童威、蔡沢は韓流ポイントに移動した。
 しばらく反応を得られず、釣果を得られていない者たちは「オレが考え無しにやってると思うか?」と伝説式で泣いていたが、釣果を得ている下野さんと蔡沢は余裕があった。
 蔡沢など公孫戍と多摩川ヒストリーに花を咲かせている。「おしゃべりしてないで釣りしなよ!」と、アナザーギレするしかない場面であるが、公孫戍と蔡沢はほどなくして撤退。
 休養中の者と、釣果を得た者相手では「おめえはそれで悔しくねえのか」と、伝説三輪できないのが悔やまれる。
 彼らを見送りしばらく経った頃、「来た」という声があがる。
 キャメラを構えた朕が下野さんの元に駆け寄るとスモールマウスをキャッチしていた。
 上流側に入っていた夏侯章がやってきて言う。
 「全然ダメ、今日は釣れないよ…」と、うなだれている。
 しかし、下野さんがついさっき釣ったということを知るや「突き落としてやろうか」と、元気を取り戻す。
 ライブベートフィッシングに興じていた童威だが、いつの間にか置き竿にして消えている。
 「多分、シコりに行ったな、あいつ」と笑っていたところ、童威の竿が震えていた。
 童威を呼び出し取り込み開始。安物ロッドというだけあってなかなか魚が寄ってこない。コイでも掛けてしまったか、と寄せてみればなかなかのニゴイ。
 ボーズを逃れただけでも十分とは思うが、やはりバスかナマズであって欲しかったというのが正直なところ。

 その後も、根性を口にする者には無い根性で集中力を保つ我々だったが、ついに終了の時間が来てしまった。
 何の反応も得られなかった朕と夏侯章は「オレらは二軍、おめえらは一軍…そういう考えやめねえか」と、泣いて釘を刺しての解散となった。

 ※マー語
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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