嚢中の錐

 1月15日。

 カンパ、キーノ。
 マシンガンとミサイルで大暴れしたマリアッチの仲間を思い出す。
 最低気温マイナス二度の予報ににわかにひるむが、公孫戍こうそんじゅに『極真とは何か』の返礼として『UWFの功罪』を渡さなければならない。
 ところが、古傷の肩を傷めドクターストップがかかり、当日は釣りが出来ないかもしれないとの連絡が入る。とはいえ、人前では超美男子のように「テメェー!何故止めた!?」と、下の者を蹴飛ばすぐらいの気概は示したいという。

 迎えた当日。
 朕はハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気のため、少し寝てからの出発とした。から寒い日で、氷がはっている所を何度か見た。こんな寒い日に…と、思わないでもないが、サマナにとってワークは何よりの喜びである。時間があり、体が動くなら行きしゃない。
 途中、公孫戍より、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない事態が発生し、顔出しも怪しくなってきたとの報が入る。
 「オレにかまうな、上手い連中と仲良くやってくれ」と、伝説三輪泣きで悔しさを表していた。

 降臨跡に三輪車が見える。しかしこれは似て非なるもので、三輪氏の姿も見えない。
 寒さ厳しくともベイトはそれなりに来ている。しかし、いたって根性が無いためにみすみす好機を逃している三輪氏を、朕は悲しんだ。

 水温の安定、あるいは少しでも水温が高い場所を、ということで韓流ポイントに入る。
 ポイントにはセニョール、下野さん、夏侯章かこうしょうの姿。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 と、お約束を発すれば
 「オレが考えなしにやってると思うか?」
 と、お約束で凄んでくる。
 セニョールが40には届かずも、往年のマーのように、ぱんぱん、ころんころんのスモールマウスを釣ったという。
 当然「突き落としてやろうか」だ。
 伝説の時代の作法は降臨の時代にも引き継がれるべきもの。
 これを多摩川の儒ともいう。
 
 夏侯章が誰かと話し込んでいる。
 知った顔かと近付いてみれば、この人物こそ“巻き物ヤクザ”と称される毛遂もうすいであった。
 「毛先生のご高名はかねてより伺っておりました。はからずもここでお会いできたのは光栄の至りでございます」
 朕は身をこごめていう。
 あわてて毛遂と夏侯章が朕を扶け起こし、毛遂がいう。
 「どうかかしこまられませぬよう。人様から大層な呼び名をちょうだいしてはおりますがが、人より多く巻いているだけのことでございまして、私には鮒を釣る力とてありません」
 と謙遜していた。
 なるほど、平原君へいげんくんの上客に収まるだけのことはある、と感心し、公孫戍のランカシャースタイルとは対極を為す、ハイスパートブーンブーンの体現者を知ることができたことを喜んだ。

 夕刻迫る頃、マーバスを手にしてご満悦のセニョールは余裕の体で撤退。
 寒波が来ても釣るてるのだから、と、残留組はそれぞれ新川で鍛えた本気を実釣をもって示そうと躍起になる。
 そして、ほどなくして毛遂がロッドをしならせているのが見えた。
 駆け付けてみればBスイムトリガーに食わせていた。
 レンジコントロールの細かさはまさにフィネスともいうべきもので、魚をルアーに寄せて食わそうという思想の朕には不可能な領域だった。
 しかし「釣れてるやつの真似しねえと見えてくるものも見えてこねえぞ」という伝説三輪氏の名言もある通り、下野さんはこれを実行しキャッチ成功。
 こちらはフラッシュミノーでの釣果。

 17時を迎える。
 光量が落ちてきたならスローな誘いの方がベイトを捕捉しやすかろう。ということで朕はエリアススピナーベートを外し、アームでのボトムの釣りに集中する。
 寒さはいちだんと厳しさを増すが、鉄人夏侯章に言わせれば今日は昨日に比べて全然暖かいとのこと。マッチョ野郎の話なんか、と思っていたが、混沌氏の術を修めている者の感覚は道に適っているようで、かろうじて40というスモールマウスをキャッチしていた。
 更に、朕は下野さんにランディングをサポートしていただきながら、小型を二本と続く。
 江二子が「そのワーム、大切にとっておいたほうがいいよ」と、アナザー式で讃えてくれた。
 どうにか時間を作り、様子を見にやってきた公孫戍が来る頃には全員魚を手にしていたという次第。そして、この日の結果を知るや、「釣りという低レベルな競争からの卒業式…オレには無理だ」と、悔しがっていた。
 レジェンドⅡやアナザーは、無駄に強い自尊心が故、自らを以て居たたまれない状況に追い込んでいった、いわば自業自得だが、公孫戍は傷病によって追い込まれている。
 朕は新たにできた釣友の本復を心から祈った。

 ※マー語


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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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