伝説的余韻の下で

 1月5日。

 昨日、義士が堰下エリアに入っていた。
 奇跡に見えることは出来ず、クランクベートでバラすのみに終わってしまったがミスター・プロレスの加護はあった、と敬虔な気持ちを表していた。

 この日は、ザ・タックルボックスの店長、李立と合流予定になっていた。
 どちらも朕より上手の釣り師ではあるが「正解はお前らに任せた」と言っておけば、皆釣れなくても、自分は最初から釣ってやろうという気が無いのだから傷付かないし、正解を求めて釣れなかった者より上であるという形に持っていける。或いは、彼らが釣れ、自分には釣れなかったとしても正解は任せてあるのだから当然の成り行きであり、始めから“ガチ”ではない自分が釣れなかったとしても仕方の無いことに出来、自分の方が上であるという立場は揺るがない。更に自分だけ釣れれば自分が圧倒的に上であることは磐石のものになる。もし底の浅さを見抜かれたとしても、泣いてキレれば良いだけのことである。
 どのように転んでも自分の優位性を保った気になれる伝説三輪氏の遺した魔法の言葉を用いて彼らに相対してやろうとしていた。 

 かくして降臨跡入り。
 北風強く、キャストもままならない状況である。
 奇跡の降臨がまだ天下に知れ渡っていないということもあってか、釣り人はセニョール、李俊、冬だけバサーのみだった。
 聞くところによると、李立は流行り病に罹り倒れたという。店長の姿も見あたらないので電話してみたところ、こちらは流感に臥しているとのこと。これでは釣れなかった時に自分がヘボいからではないという方向に持っていけない…。

 李俊が撤退し、早くからここに来ていたセニョールがマクドで暖を取りたいという。ここで三輪氏ばりに“虚仮の一念”とカッコつけてキャストを続けても希望は見えないだろうということでセニョールの提案に乗り、タックルを携えたままマクド進入。
 流儀と粋を重んずる我々だが、所詮北狄と西戎である。世間的な見てくれには無頓着な蕃人なのだ。
 カフェなどをたしなみ、フィッシュイーター全般や、ミゲル・セルバンテスなどについて語らいながら体を養った。

 韓流ポイントへ。
 依然、北風は強いままで収まる気配が無い。
 しかし、こんな時こそビッグフィッシュが出るのだ、と、伝説の人には無かった根性を振り絞りキャストを続ける。
 釣りの醍醐味であるキャスティングを楽しめるような状況ではないが「もしかしたら釣れるかもしれねえじゃねえかよお!」と、寒風に耐える。
 魚の状態を推し量ることはできなくとも、フィッシングプレッシャーとは無縁の状態であるのは間違いない。

 17時が過ぎ、陽が落ちてゆく頃、セニョールが帰宅。
 人にはそれぞれの都合があるという当たり前を認識しているなら、たとえ釣れなくて面白くない思いをしているからといって「釣れるまで帰らん!お前も付き合え!」なんてキレ方などできない。ましてや、釣りそのものを楽しんでいるならば、仲間が近くに居ようと、単独であろうと気にならないはずである。或いはこんな思想でいるから、最もガチな人に“ガチ”だと揶揄されるのかもしれない。
 その後、空腹と寒さに耐え、粘るだけ粘っただろうと思えた時点で納竿とした。
 ところが帰宅してみればまだ18時半。こんなことが伝説三輪氏に知れたなら、「おめえは根性が無え」と罵られてしまうことだろう…。
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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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