前田、高田、百田

 12月29日。

 朕にとってスモールマウスは依然掴み所の見えない対象魚だが、李立にはその核が見えているようで連日の釣果。
 さすがだな…と、感心してばかりもいられない。自分は疲労を理由に釣行機会を逸しているだけなのだが「おめえはしょっちゅう行ってるから釣れるんだ」と、伝説式大人の対応をするのが時代に適った礼儀というものであろう。

 さて、迎えた当日。
 この日は伝説跡で義士に、先日ザ・タックルボックスで仕入れたティンバータイガーを渡すことになっている。
 帰宅時、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気にやられていたが、天子として約束を違えるわけにもゆかぬし、公孫戍こうそんじゅもこれから韓流ポイントへ向かうとのこと。
 気力を振り絞り多摩川へ向かう。

 世間が連休に入った晴天の日。寒さは感じられるが、連休に乗じて伝説三輪氏の好物も多く訪れるに違いない。降臨も期待できる日である。
 現地入りしてみれば、午後から南風、最高気温十三度という予報が外れ、寒い北風が吹くという状況。

 韓流ポイント。
 すぐに下野さんが現れたので挨拶がてら昨日の様子を聞く。
 セニョール、童威が好調だったとのこと。
 やがて公孫戍、夏侯章かこうしょうかこうしょうが現れ、次いで義士が現れる。
 義士と江三子は初対面ではないが並んで釣りをするのは今回が初となる。八百長野郎、中牧昭二といったキーワードが繋いだ輪といえよう。
 義士にDC5を渡し「今日のオレの仕事は終了」と言って伝説式保身を決める朕。
 一方、義士は「今日はファルコンのクランキンロッドが多摩川で釣れるかの実験」と言い、伝説式保険を掛けていた。
 実釣こそ振るわなかったが、伝説三輪式野次やアナザー式叱責を飛び交わせ、和やかな時を過ごす。
 しかし、次第にこのポイント自体に飽きが出てくる。
 風向き的にどうか、というものはあったが「やってみなきゃわかんねえじゃねえかよお!」と、誰がというでもなくレジェンドギレし、伝説跡に移動してみることにする。

 伝説跡に入ったところ、ちょうど李俊が帰るところだった。
 今日はニゴイが釣れただけだ、と力なくいった。
 一年前までなら今日の勝者として讃えられていただろうが、修羅を唱えた伝説の時代である今は、ただノーフィッシュを逃れたというだけのことに過ぎない。
 セニョール、冬だけバサー、ナマズさん、見知らぬ釣り人たち…と、休日らしい賑わいを見せる伝説跡。
 李立、童威も現れ、在りし日の、バスバブル期の光景が再現されている。
 しかし、かつての主宰者はこの日も現れることなく夕刻を迎えようとしていた。

 自らを修羅と謂った者は寒さに屈したのか、遂に姿を見ず。その代わりに、ということで自らをはぐれ者と称したもうひとつの伝説の勇ましいエピソードを聞くことができた。
 同列に語られる伝説両者だが勇壮さと行動力に於いては、あちらの方がこちらの方より格段に上だったと知る。
 結局どちらの伝説も見ることが出来なかった義士は落胆しての撤退となる。
 公孫戍は「どうか気落ちしませぬよう」と、ハーリー・レイスの生写真を義士に贈った。

 再び韓流ポイントへ。
 相羽式をマスターしている李立は三本という釣果を叩き出しつつ、日頃朕がスモールマウスに感じている疑問に対し明確に答えるという達人ぶりを披露。
 李立の手下ともいえる童威はセンコーでキャッチ。
 伝説三輪式の僻み、やっかみが行き来する中、公孫戍二匹キャッチとの報が入る。
 ガニはードであるが、ワームじゃなくルアーで釣ったんだから凄いといったところであろう。
 密かにガチだった下野さんが「やつの勝ちだな…」と漏らす。
 朕は李立に教わった、意識すべきスモールマウスの視線をイメージしながらルアーを引いていた。使用するメソッド、ベイトは普段通りだが、リトリーブ時に描く画像が変わった…と、朕がバイトを捉える。
 「ライトリグで釣るのは久しぶり」と浮かれていたところラインブレイク。
 「何やってんですか!?」と、朕をきびしく叱責したのは李立の教化を受けた童威だった。
 そこで朕は「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、半泣きになりながらも強がってみせた。

 20時。
 遂に納竿時刻となる。
 「釣れるまで帰らん。お前も付き合え!」という気力は残っていたが、粘ったところでコイの擦れ掛かりに大喜びして終わるのが関の山だろう。実際、こんなことで喜べるのはレジェンドⅡぐらいのものだ。
 帰り際、李立の自転車にはアナザーレジェンドの生写真がデコレートされていた。
 「呪いの写真だ…」これまで強気一辺倒だった李立がひどく落ち込んでいる。
 唸る李立をよそに、暗がりでほくそ笑む公孫戍の表情が朕には見えた。
 彼の別名はピート・ロバーツ。侮ってかかると絡め取られてしまうということを、格闘技・プロレス界を知らない李立にはわかっていなかったようだ。

 ※マー語

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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