誰がために彼は泣く

 12月12日。

 昨日、夏侯章かこうしょうがスモールマウスを釣ったという。
 夏侯章はセンコーばかりを使っていたので、攻め手の足しにしていただきたいと思った朕がテンガを寄贈したのは先日のことだが、その時夏侯章は礼を述べつつも、このようなことを言っていた。
 テンガのことは知っているが「機械ある者は必ず機心あり。機心胸中に存ずれば即ち純白備わらず。純白備わざらば即ち神性定まらず。神性定まらざる者は道の載せざるところなり。」という訳で、数多のルアーを持ちながらもセンコーで通しているのだという。
 なるほど、こんな場面でも混沌氏の術にのっとっているのか、と感銘を受けたものだが、やはりその功は現われていたというわけだ。
 しかし、夏侯章とてまだ修行中の身。にわかに機心生じて正確に測ってみようと測りを当てれば、39cmと一歩及ばぬサイズに止まっていたという。

 昨日、朕はフィールドワークこそ休んだものの、ザ・タックルボックスの実店舗開店準備を手伝ったり、ついでにティンバータイガーとトライリーンを購入し、道行の中にはしっかりと在った。

 かくして迎えたワーク実践日。
 シャッドカラーのツンバータイガーは昨晩のうちにラトル音殺し手術を完了させておりボックスに加え、スイミング用のワームにはトレブルフック付きジグヘッドをくっつけ、バスプロショップス・クランキンスティックを引っ張り出した。
 幾つかの実験ネタを用意し、伝説式保険に抜かりは無い。
 先日、ライトリグの釣りで滅入ってしまった神経を巻きの釣りで復活させるつもりだ。
 スモールマウス狙いのボトムの釣りは混沌氏の術を修める者に分があるのかもしれないが、巻いてナマズを狙う釣りには即物的な進取の精神が有利になる。
 目指すは宇奈根エリア。
 前回行った時は台風後の増水が落ち着いていなかったため、攻めきれずに終わったので、現在の様子をじっくり見ておきたい。また、平日では登戸名物降臨が望めないというのも宇奈根エリア選択の理由のひとつだ。

 現地入りして唖然とする。
 せんずり地蔵は宮刑、女人像は斬首、他の地蔵ははなそぎにされていた。
 彼らは紫微宮の法度にでも触れたのか、あるいは偶像を崇拝するなという一神教の手の者に辱められたのか。
 鬼神が滅んで久しい現代とはいえ、この損壊は風化によるものだと願いたい。

 岸辺に降りる。
 まずは魚の姿を見つけたい。
 陽の当たる温まりやすい浅場にはナマズが姿を見せることがよくある。
 少し濁りの入った水は上空からのプレッシャーを和らげ、魚の警戒心を解く役割を果たしているかもしれない。
 「もしかしたら釣れるかもしれねえじゃねえかよお!」を単なる遠吠えにしないためにも、見る、考えるの作業は欠かせない。
 エリア下流部から上流のベンドまで歩いてみたが、反応は得られず、見た魚といえば数匹のコイと一匹のハゼ類のみ。
 前回来たときより水勢が弱まり、ベイトのコントロールはし易くなったものの、テトラポッドといったカバーの他に、特に気になる変化を見つけられないのは相変わらずで、ナマズはどこを通り、どこで待ち伏せるのか、を想像するための材料が乏しい。

 上下の往復をしているうちにジッターバグのようなナマズ用ルアーを発見。
 動きに自由度を与えているのにダブルフック、夜釣りに使うのにクリアボディー。ナマ師を自称する朕ではあるが、このルアーには不可解が多く、拾ったところで使いこなせないだろう、ということで放置した。

 相変わらず動きの見える魚はコイばかり。
 秋にここに居たナマズたちはどこへ行ったのか。あの時はスモールマウスの姿もよく見られた。
 バスにとってもナマズにとっても現在このエリアが生息環境として好ましくないということはわかっても、その先がまるでわからない。魚はこのエリアに留まっており、好適な環境に変化すれは活動を開始するのか、より良い環境を求め、個体群がエリアを移動してしまうのか、といったことだ。

 移動すべきか否かというところだが、徒歩で行ける範囲のポイント移動は抵抗なくできても、エリア変更となると覚悟が要る。
 ひとつのエリアに固執するなりの理由もあるにはあるのだが、それはそれとして、ここは「オレが考え無しにやってると思うか?」と伝説泣きしておこう。

 果して、何の手応えも得られぬまま、17時の鐘と共に撤退。
 目先の利を追う進取の精神では、所詮、神性を求める道行の玄妙さにとうてい及ばないのだと知るのだった。


スポンサーサイト

テーマ : お仕事奮闘記
ジャンル : 就職・お仕事

tag : ルアーフィッシング 多摩川

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

No title

お久しぶりです。
元気ですか?
例の飲み会がまた来年あるのですが!

連絡先かわりました?

Re: No title

ヤフーから送ったんだけど…。
この数年、これまでを考えた末、もはや釣りに関すること以外に時間と労力を費やすのは辞めたという次第です。
プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

最新記事
月別アーカイブ
リンク
検索フォーム
QRコード
QRコード