並行伝説

 12月10日。

 昨日は、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気に負け、終日寝てしまったが、サマナの李立は怠っていなかった。
 朕は、ガチではないはずなのに後輩の釣果にはやけに神経質なレジェンドⅡのように「おめえはしょっちゅう行ってるから釣れるんだ」と、伝説式大人の対応をした。
 伝説式を用いるならば、最近は李立の方が朕より釣行頻度が低いという事実はこの際無視である。

 かくして、より伝説理解の深まったこの日。
 昨日、じゅうぶんに体を養ったことにより集中力の維持に自信が生まれ、バス狙いに於いて確率の高いライトリグ使用をメインとしたスピニングタックルの二本立てで多摩川に向かった。

 この日は江三子と合流する手筈になっていたので、ひとまず伝説跡は飛ばし、韓流ポイントからスタートした。
 北風強く、冷たく、ルアーが思うように飛ばない。
 晴天の土曜日であっても、気候的な厳しさから、伝説三輪氏が降りてくることは望めない。
 出発時は「ライトリグで押し通すぞ」というつもりでいたが、少しでも釣りの醍醐味を楽しみたいと思い、リッジ56Sで流すことにする。
 早々に魚種不明のチェイスが見えたので、にわかに期待が生ずるも単発。
 結局、ライトリグで近場のカバーを丁寧に探っていくことになる。

 昨日の温暖から一転してこの寒風。水中の気候も急変したのだろうか。しかし最低気温は昨日と変わらない。風のせいで釣りがしにくいだけという、メガバスなタフコンデションなだけなのかもしれない。というわけで、反応を得られずとも捨てるわけにもいかない。

 しばらく経つと公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょうがやってくる。
 朕は夏侯章が以前より興味を示していたハンクルのテンガを交誼のしるしてとして献上し、返礼としてエンジンのワームを賜った。
 三輪氏と違ってガチな朕ではあるが、のんびりとアナザーレジェンドの逸話などを聞きながらキャストを再開。
 斉での主権簒奪劇は謀略の末によるものだったが、ここでの主役交代は、楽しみながらも釣るでん氏と、ガチなのに釣れないきょう氏の間に確執が生まれたことによるもののようだ。
 え?アナザー氏と三輪氏って同一人物?と思えるほど、その進退の様が酷似していた。

 田家の二人はライトリグで探っていたので朕は「正解はお前らに任せた」と伝説三輪し、スプリットショットリグを解いて、この風でも少しは釣りの醍醐味が楽しめて、まあまあ根掛かりのし難い小型スプーンでジギングを試みることにした。
 ほどなくしてバイトあり。
 引きに重みがあったのでナマズかと期待し、寄せてみればニゴイ。それでも釣れるかどうかという不安が漂っている中、ギャラリー注視の元でのキャッチなら悪くない、と取り込もうとしたところばれる。
 何故?とベイトを見ればフックが折れていた。
 柔らかくともリフティングパワーのあるフェンウィック、スーパーフィネスの8lbラインといえどもトライリーンで多少大きな魚を掛けても安心なつもりでいたが、釣り堀トラウトセッティングなスプーンのフックは負荷に耐えられなかったようだ。
 こんなしょうもないバラしを二度としないようにと、強いスプーンフックを付けてみたが、その後アタリが出ることは無かった。

 韓流ポイントそのものに倦んできたことにより、伝説跡へ移動。
 朕はアンダーショットリグをメインに、厭きたらスプーンをというコンビネーションで探りを入れた。
 下野さん到着。
 朕と公孫戍は一瞥するのみで挨拶もせず、レジェンドⅡに揶揄されたガチぶりを発揮。
 しかし、ここでバイトを得たのは無為自然の心が無意識のうちに備わっている夏侯章だった。
 ナマズかも、とのことで、ページを飾る写真が欲しい朕はキャメラを構えようとしたが、その刹那ラインブレーク。20lbラインを使っていようが、擦られどころが悪ければ呆気ない。
 己の非は見ず、他人の失敗には容赦無いのが伝説式。
 「何だ、釣れなかったのか?だらしがねえなあ」と、朕は夏侯章を責めた。

 一同を、今日はもうダメなんじゃないか的ムードが覆う。
 ここは「もしかしたら釣れるかもしれねえじゃねえかよお!」と、泣いて根性を振り絞るしゃない。
 風向き的にどうなの?という疑念はあったものの、上流側へ移動。

 伝説跡北門に侯嬴こうえいが立っており、こちらに気付いたので揖の挨拶を交わす。
 李立もこの頃になって現れる。
 朕と夏侯章が反応は得たがばらしてしまった、と、これまでの経緯を話したところ「何だ、釣れなかったのか。だらしがねえなあ」と、伝説の時代の礼で応える。
 こうして積んだ徳の所以か、部下のような雰囲気の若者がお供していた。双子の弟がいるのかどうかは知らないが童威どういといったところか。
 伝説跡はあまりにも気配が無いことと、風が強すぎ、ボトムルアーの操作がままならないので17時の鐘を機に韓流ポイントに戻ることにする。
 歩けば体温が回復するので集中力を持続させることもできる。

 韓流ポイントに入る手前で、コンビニに行く、と言って公孫戍は伝説の間道に消えていった。これはアナザーレジェンドが残した遺産というべきものである。
 さて「新川で鍛えた本気を実釣をもって示す」か、と各各のポイントを目指し、伝説三輪氏いうところの“マゾい釣り”再開。
 伝説跡ほどではないにしろ、寒さ厳しく、波が立ち攻めづらいのはこちらも同じである。
 公孫戍が戻る。
 懐炉で完全防寒態勢を仕込んでいただけでなく、ここに居る全員分の饅頭を買って来ていたのだった。
 朕は「いいヤツ、タイガーマスク!」といって感謝の意を表した。

 寒さに耐えながら、誰か釣るまでと、伝説三輪氏には無い根性を出し続けていたが、あの無口な夏侯章が諦めようか、と言いだす。
 「おめえは根性が無え」と、他人を罵っておきながら、実はいちばん根性の無かった人物が現われなくなった今、ここで諦めても恥にはならないだろう。

 朕はルアーを水に浸けながらも、部屋制、真剣試合、タニマチプロレスといったワードが斬新だったSWSの話題を振ったところ、何と公孫戍は伝説の旗揚げ戦を見に行ったという。
 閑散とした東京ドーム、雰囲気の悪い観客のムード、失笑、ザ・コブラとは思えない打点の高いドロップキックを見せたジョージ高野…などなど。
 天竜の一枚看板で、あとは集客力の弱いレスラーが集まっただけだったからか、活字プロレスに叩かれたためなのか。面白いネタは満載の団体だったと今にして思うものの、儚く時代の外へ消えていった。
 物事に興亡はつきものであるとはいえ、ファンがマスコミに煽られ過ぎたのではないか…と、下野さんが魚を持って現れる。
 何と、ラージマウスだった。
 誰もが半ば捨てている中、よく手にできたものだ、と感心し、レジェンドギレするのも忘れ羨ましがった。
 自分が釣れた訳でもないのに、何故かほっとした空気が漂い、一同解放された気分となって解散した。

 ※マー語
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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