風蕭蕭兮登戸寒、妄士一去不復還

 11月6日。

 先日、オチアユの群れを見て、いよいよセントクロイのマスキーロッドやビッグベートが活躍できる状況になっているかもしれないと期待する。
 しかし、現実はなかなかこちらの思い通りにいかないものだ。やはり伝説式保険に頼らざるを得ないだろう。
 朕が翌日を楽しみにしながらも、娑婆の毒気に当てられていた時、李立より伝説跡での釣果が送られてくる。
 先日、朕には手も足も出なかった二魚種を呆気なく釣ってのけたかのような感覚だった。
 朕は持っていないオイスターミノーでの釣果とのことだが、このベイトだったから釣れたというわけでもあるまい。
 上手く機を捉えたということであり「よくぞいたした」と、称賛すべきであろうが、今は伝説の時代である。悔しさに顔を赤らめ「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、泣きキレるのが正しい作法というものだ。

 迎えた当日。
 「今日はマスキーロッドで釣れるかの実験」と宣言し、登戸伝説跡に向かった。
 大型のベイトばかりを投げるつもりで、出発は陽が傾きだす頃とした。
 
 Zプラグ、BBZ-1シャッド、ザブラミノー139F、ラトル音を殺したスーパースポット、レアリスジャークベート120SP、ハイサイダーJr、ミスター・ツイスターのスイムベートもどき、と用意したベイトはこれのみである。
 それぞれサイズが大きく、嵩張るのでこれだけしか持って行けなかったというのが実情だが。

 現地入りしてみると、日曜日らしく釣り人も多かった。
 李俊、セニョール、シャッドマンの姿があったので「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、伝説式で到着を告げた。
 このように、顔見知りの姿はあったが、顔役の姿が無かったのがいささか寂しいところ。
 スイムベートもどきを結んだところ、セニョールがこれを指して、パイクがよく釣れたという。朕は、ロッドはソンクロウだよと、洗練の極みであるフランス式で応えた。

 北風が強く、波立つ水面にシャローフラットの可能性を危ぶむが、波立つ水面からもアユの姿は多く見え、魚食鳥たちもアユを追っていた。
 江三子の一人、下野さんが現れる。
 この風に期待し、ジャークベートを引いているが反応は得られていないという。
 朕はこの一帯で、アユに付いた大型の魚を一匹も見ていないということを告げた。
 やはり風向きが良くないのかもしれない。
 しかし、一方はマイナスでも、それを上回るプラスにこちらが気付いていないだけということは往々にしてあるので「やってみなきゃわかんねえじゃねえかよお!」と泣いてみるしかない。
 やがて公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょう、遅れて李立がやって来る。
 来た当初は、GETTの防寒着は大げさすぎるように思えていたが、今は肌寒さを感じるほどになっている。

 まったく釣れる気がしなくなっていた朕は公孫戍と四方山話に花を咲かせることにした。
 HMKLのテンガのこと、昭和プロレスのこと。また、こんなところでリングスの面白さを論じ合える人が居たという望外の喜びも得る。
 更に、こちらの伝説やあちらの伝説について盛り上がっているうちに寒さはいちだんと厳しく感じられるようになってゆく。
 そこで、朕は伝説のためにひとつ歌を献ずることにした。
 「風蕭蕭しょうしょうとして登戸寒し、妄士一たび去りてた還らず」

 かくして寒さと気配の無さに音を上げた朕は、ポイント移動して粘るという江三子や李立に「オレはおめえらと違ってガチじゃねえからよお」と伝説三輪し、一人多摩川から逃げ去った。
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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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