舞台の完成

 10月27日。

 久しぶりの釣行になる。
 伝説跡に入ってみてからあれこれ考えることにして、今日も「オールスターのポッピングロッドが釣れるかの実験」といって伝説式保険をかける。
 近頃、保険使用頻度が高いのは困ったことではあるが、現状を見れば伝説の遺産に頼らざるを得ない。
 更に今日はスピニングタックル。ワームをメインに使うつもりでいるので「フリームスクラスのリールだとハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなかった」という言い訳も可能。
 万全の伝説式保険により後顧の憂いを断ち、現地へ向かう。

 登戸伝説跡に鵜や鷺などの魚食鳥が待機していたので、期待をもって水の中を覗いてみたが、ベイトの動き、規模に特に変化を見られなかった。
 風は吹いていたが、フィーディングシャローに向かっておらず、光量十分にして水はクリア。
 魚の存在は確認出来なかったが、居る、と仮定してフィネスリグを組む。
 今回はアンダーショットリグではなくスプリットショットリグで臨んだ。
 ベイトは初の使用となるもの。
 「今日はランカーシティのウィップスティックが釣れるかの実験」といって伝説式保険にすることもできる。

 ゆっくりと流しながら上流側に向かうと李俊がベントミノーをツイッチしていた。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 これはお約束の挨拶というべきもので、伝説三輪氏主宰の時代を偲ぶものでもある。
 「今ごろどうしてるんですかねえ…」と、三輪氏の消息を案ずる李俊。
 朕は、先日鎮座する三輪車目撃談を語り、このレジェンドⅡと同時代を過ごした者を安心させた。
 今日は何の反応も得られていないということで、時は安閑と流れていたが「そういえばこの前そこでラージ釣ったよ」と李俊がいう。
 これまでの和やかな空気は一変。朕は目を怒らせ、半泣きになりながら「突き落としてやろうか」と嚇した。
 また、三輪氏が伝説になる前の時代から最近の釣行のことを話し合いながらも「オレだってちゃんとやってるよ!」といえるほどにキャストの手を休めず“本気”を出し続けた。
 スモールマウスのボイルを見ることはあったが盛んさを感じず、朕がワームの釣りに倦み、巻いてみたBフォロワーにコイらしきバイトがあったのみ。
 何事もなく夕刻が迫る。

 エサ釣りのナマズさんが現れる。
 ワームフックはどんなのが良いかを尋ねられる。
 これからルアー釣りを始めたいので道具を買いに行くとのこと。
 新規入門者の誕生だ。ルアー釣り初心者はレジェンドⅡの大好物である。ナマズさんはよくこの一帯に現れるので会える確率も高いだろう。
 朕は伝説三輪氏のために喜んだ。

 やがて陽は傾き、李俊は去り、他の釣り人も去って行ったが、朕は一人残り、新川で鍛えた本気を実釣をもって示そうとした、が、日没後の寒さには抗し得ず、「オレはおめえらと違ってガチじゃねえからよお」といって撤退することにした。
 本当は何とか、どんな魚種でも良いから釣りたくて必死だったのだが、朕は伝説の人に倣い「釣れなくても関係ありましぇ~ん」とおどけてみせた。
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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