語録と歩む水郷の秋

 10月15日。

 昨晩、ザ・タックルボックスで仕入れたヤムのクローワームと、紅蠍から預ったキンクーを施恩に渡す。
 15日だけ休日なので、もしかしたら自分は日帰りで霞に行くかもしれないとのこと。
 朕は「若いからといって無理をせぬよう」といった。
 その後、この先合流する李立と史進に「正解はお前らに任せた」と、伝説式保険を掛ける。
 正解は他人に任せているので、自分は奇天烈なことをしてボーズに終わるのも仕方が無い、という方向にもっていくという自尊心の守り方だが、“ガチ”ではないはずなのに、他人が好調で自分だけがノーフィッシュに終われば不機嫌になったり、キレてしまうという脆さはある。

 まだ陽も昇らない早朝のうちに車を借り受け、釣りも上手ければ語録の使い方も上手い李立と合流。
 曰く「今日はベートフィネスが霞水系で釣れるかの実験」だそうで、抜かりはなく、朕のミディアムとミディアムヘビー、オールスターロッドの二本立てを見て「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と言い放つなど、一分の隙も無い伝説三輪式を決めていた。

 開封府外れから外れまでを横断し、史進と合流。
 全員揃ったところで今日の予測を論じ合う。
 これまでに霞水系で得た感触と、伝え聞いた話を総合してみれば、例え月齢的に恵まれている今日明日であってもクールな予感がしない。
 そこで更に伝説式保険を厚くするために「釣れなくても関係ありましぇ~ん」と、おどけておくことにした。勿論、内心は誰よりも釣りたくて“ガチ”なのだろうが…。

 施恩より現地入りしたとの報が入る。結局日帰りで行く事にしたようだ。やはり若者には勢いというものがある、と感心。
 地下生活を脱し、かつてほどの銭はないにしろレンタカーを出して遠征可能な生活環境になってみれば、いつの間にか霞水系への日帰り釣行が無理な自分になっている。

 今回は東関道ルートでの霞入り。
 魚が狭すぎず広すぎずの範囲に居て、他のエリアより釣り易いのではないかと思われた与田浦、外浪逆浦間の水路を打ってみようというつもりでの選択。
 夏であれば既に明るくなっている時間帯だが周囲はまだ暗い。外はから寒くGettの防寒着を持ってきたのは正解だったと知る。
 さて、お目当ての水路であったが水深浅い泥底の、経験上いちども良い思いをしたことの無いタイプのつくりであったため、早々に捨て、隣接する与田浦本湖を打つことにする。
 全体的に水深が浅い与田浦が受ける冷え込みの影響は少なくないのではないか、という懸念はあったが「やってみなきゃわかんねえじゃねえかよお!」満場一致で涙目の伝説三輪ギレを決め、キャスト開始。
 与田浦を一流ししてみたものの「与田浦は見えてくるものが無いのう」であったため与田浦と外浪逆浦を繋ぐ水門へ移動。
 吐き出し中央は深く掘られ両端は捨石の入った駆け上がりという感触。
 朕はジグでボトム寄りをスイムさせ、李立はベートフィネス、史進はカーリーテールワームのスイミングという具合に三者三様で流していったものの誰一人反応を得られず。
 徐々に上流側へ移動しながらしをみ食堂で施恩と合流し、ランカーズに巡礼し、桜川か備前川で果てようと大雑把に計画していたが、こうも早く次のポイントを探すことになろうとは思ってもいなかった。
 やはり霞水系は容易ならざるフィールドである。

 李立が以前、コータローが言っていたという鰐川の沈みテトラのポイントが気になるという。何でも秋から冬に良いポイントであるとのこと。
 もしここで芳しい結果を得られなくとも「おめえが良いって言うから来てみたけどよお…釣れねえじゃねえか!」とレジェンドギレすれば己がヘボいからではない、という方向に持っていけるのだから問題はなかろう。
 史進はあらゆる場面で応用の利く伝説語録の幅広さにひたすら感銘を受けていた。
 
 鰐川のポイントに着いたところ、キャットフィッシュをヒットさせているルアーマンを見る。
 キャットのいるところはバスも居る、というような話も聞いたことがあるので期待を抱き、朕は誰でも打ちそうな一帯をスイムベートもどきで流し、李立と史進はどんどん進みながらポイントを探していく。
 しかしここでも反応は得られない。
 施恩がキャットフィッシュを掛けた際、ブランクにラインが絡まりロッドを折ってしまった、との報が入る。予想外の事態に放心。伝説泣きもできていないようだった。
 こちらも結局何一つ良い兆しを見ぬまま時間だけが経過していった。
 これといった閃きも生まれないので、次のポイントを探す前にスーパープロショップに寄ってみることにする。

 「しまった!小型ミノー忘れてきた!」「西湖はポンプ小屋のところでバイブレーション巻くのがパターン。つまらねえ釣りだ」などなど、伝説語録にまつわるエピソードを語りながらスーパープロショップ到着。
 ミラクルジムは不在だったが、今回のお目当てはBフォロワーよ、と店内を物色したものの、Bフォロワーは無かった。しかし、シャドウラップのスローライジングモデルがあったのでこれを購入。
 
 本湖にポイントを求めても、魚が広く散り、その上魚影も薄いとなれば見つけるのは困難だ。
 やはり狭い範囲内に魚が居るであろう流入河川を集中して打つべきだ、と方針が定まってくる。
 だからといってこれで釣果を得られる保証は無い。
 故に、意見した自分がヘボいわけではないという印象を与えるために各々が「正解はお前らに任せた」とか「まあよお、オレはおめえらと違ってガチじゃねえかよお」といって、伝説式保身を図ることは忘れなかった。

 梶無川はバスバブル時代の頃から叩かれまくってきた流入河川という印象がある朕はあまり気乗りしなかったが、そういった先入観の無い李立と史進はバスを何匹か発見し、李立はバスの脳天にルアーを直撃させたという。
 セガサターンのような妙技だが、結局釣れるまでには至らなかったようだ。
 コイやボラの姿を見ることはあっても、バスを発見することすら出来なかった朕だったが「何だ、釣れなかったのか。だらしがねえなあ」と、伝説の時代を生きる者としての務めを果たした。

 先月釣れかけたから…ということで夜越川に入る。
 こちらはバス以外にも見える魚が居ない。
 このような状況では集中力も続かず、ちゃんとやりきれたわけでもないのに「オレだってちゃんとやってるよ!」と、泣きキレるしかなかった。

 既に昼時。
 施恩と合流し、しをみ食堂へ。
 悶絶級のカツカレーはさすがに誰も注文しなかったが、どのメニュウも満腹必至の内容。美味いので完食は可能だがなかなか手強い。
 満足の昼食を終え、李立は施恩と組んで日帰り釣行に翻意。二手に別れての展開になる。
 初日終了後の酒席も楽しみにしている朕と史進は前回中途半端な探りで捨てた薗部川に入ってみることにした。

 薗部川はバスバブル時代にも何度か手を出してみたことはあるが、これまでに釣れたことの無いポイントである。
 今まではタイミングが悪かったり、攻めが中途半端だったりしただけだとも考えられる。
 今日はじっくりやってみよう、ということで川岸を歩き始めたが反応を得られないばかりか、水の中に一切の水棲生物が見られなかった。コイ、ボラ、ハゼといった魚類のみならず、虫などもである。
 何が原因かまではわからなくともこの一帯の水が、生物にとって快適ではないということを物語っている。このようなところで粘ることはできない。
 反応を得られないからといってジグヘッドワッキーや1オンステキサスを試して粘ってみるというようなことは、これまでに正解をやり尽くしてきたという根っからのバサーに任せておけば良い。
 もはや我々が独力で出来ることは無くなってしまった。こういう時は素直に己の非力を認め、他人の力を借りるのが得策。伝説人の教えには反するが“ガチ”なのでためらいなくランカーズに奔ることにした。

 「また来年にでも」と挨拶して去ったにもかかわらず、約一ヶ月での再訪。
 店長に話を聞くと、桜川、備前川、どちらでも釣れているが陸っぱりなら備前川のほうが良いとのこと。
 ここでもBフォロワーは無かったが、カリブラを発見。
 今回は“ガチ”な買い物だけではなく、バスプロショップスのニセモノ・3インチセンコーも購入。“ネタ”を好む三輪氏も喜びそうな一品だ。

 かくして備前川へ。
 鷺の類がカーリーテールワームにバイトしたまま飛び去ろうとし、空中戦を繰り広げるという珍事があった。
 ギャラリーが居たなら“ネタ”として大いに盛り上がる一幕ではあったが、この時近くに居たのはスマフォいじりに夢中で周りの出来事に極めて鈍感な肥たる娘だけだった。
 なるほど、「人多伎巧、奇物滋起」とはよくいったものだ。
 それはともかくとして、備前川は相変わらず魚影濃く、コイ、ボラ、バスの他、キャットフィッシュの姿も見られる。生き物に満ち、薮蚊までもが現れるほどだ。
 キャットフィッシュやバスのストライクは何度か得ていたがフッキングを決められず「オレだってちゃんとやってるよ!」と泣きが入っていたが、カルプリットの8インチカーリーテール、ズームのシャッドテールワーム、バークレイのシャッドテールではマテリアルが固くて針先が出る前に魚が違和感を覚えてしまうのかもしれない。ならば違和感を覚えた時には針先が飛び出しているぐらいの軟らかいベイトでも試してみるか、ということでバクダングラブをキャスト。
 ついにフッキングが成功する。
 巻きの釣りでの釣果だが、ソフトルアーでの釣果であるため、いわゆる“男らしい釣り”なのかどうかの判定は伝説降臨の日を待たねばならない。
 同じ備前川でも朕とは別のポイントを打っていた史進に様子を聞いたところバズベートでストライクを得たがばらしてしまったとのこと。
 「何だ、釣れなかったのか。だらしがねえなあ」といったところ、「オレだってちゃんとやってるよ!」と、しっかり伝説三輪式で返してきた。
 辺りはすっかり暗くなり、釣りを諦めた我々は再びランカーズに向かった。
 ここではからずも李立、施恩と合流。
 どんな状況だったか聞いてみたところ、仮眠のつもりで昼寝したところレジェンドⅡも顔負けなぐらい“ガチ”で眠ってしまい、気付けば夕方になってしまっていたとのこと。伝説三輪氏が同乗していたなら「何でおめえ起こさねえんだよ!」と、半狂乱で泣いていたことだろう。
 「お疲れサマンサ」としかかける言葉が無い。

 李立らに別れを告げ、我々は美熟女の待つ湖北に向かった。
 募る想いの丈をどうやって告げようかとこころときめかせながら宿に向かう。
 駄菓子菓子!
 我々を迎えたのはおっさんとあんちゃんだった…。
 朕は表にこそ出さなかったが絶句していた。
 すべてが終わった気がした。
 気を取り直し、炭やで蓮根の天ぷらを食し慰めとしたことはいうまでもない。ただし、この日はしをみ食堂での満腹が尾を引き爆食いできるだけの胃袋が無かった。

 10月16日。

 千夜釣行二日目。
 昨日は幸運にも備前川で反応を得られていたが、霞水系の傾向はまったく掴めていない。
 猪木にびんたを食らってしまいそうだが、出る前に負けることを考えていた。
 昨日、新川のJR鉄橋より上流側のエリアもやってみるか、という意見も出たが、もしそこで釣果を得られなければ、新川で鍛えたという熟練の百敗釣師が、鬼の首を獲ったかのごとく大騒ぎし、うざったい思いをしなければならないだろうということで見送ることにした。
 かつて李立は霞釣行の後日、レジェンドⅡに、何で新川に行かなかったのかとしつこく問い詰められたという。
 釣果を得るうえでの基軸は定まらぬ状態ではあったが、昨晩は八時間以上の睡眠時間を取ったので体調はすこぶる良い。
 古くからバスの存在が確認されている古渡エリアに行ってみよう、と湖北を出る。

 まずは朕が初めてトップでバスを釣った思い出の地、大山のスロープに入る。
 小魚の姿は確認されるが、何といってもスロープからの出入りが多い。しかし、そんなことより今は“あの頃”の気分を少しでも味わいたい。
 あの頃はザラを引いていたが、今回はチャギンスプークJrを引いた。
 ただそれだけのために朕は時間を費やした。

 高橋川。
 最上流部から入ってみる。
 水はクリアでコイや小魚の群れが確認される。
 バスの姿をまったく見なかったので、バスは濁りの効いたところに居るのかもしれない、と少し下ってみる。
 しかし濁りの効いた一帯ではあらゆる水棲生物の気配が無い。こんな場所に長居は無用というところだが出発が遅かったことと、細かく移動を繰り返していたことにより、正午まであと一、二時間というところまで来ていた。

 小野川河口部に移動し、釣りのし易い護岸一帯をシャロークランク、スイミングワーム、スピナーベートで刻んでみる。リップレスクランクを引いていた史進がバイトらしき感触を得たという。
 しかし、それだけだった。
 「ハードだってさんざん引いたさ!でも釣れなかったんだよ!」とレジェンド泣きを決め、車に戻ろうとしていたところ、エサ釣り師がキャットフィッシュとファイトしていた。
 史進が捉えたバイトの正体はあの魚だったのかもしれない。
 「頭ん中パニッシャーだぜ…」
 ふと、マー語が漏れる。
 時刻は十一時三十分。
 朝食を摂ってないなかったのでことさら空腹を覚え、純輝を目指すことにする。

 潮来店は昼食時ということもあり、超混雑。諦めるべき状況ともいえるが、前回、神栖店の存在を知った。
 少し遠いが神栖店まで足を延ばしてみたところ、期待通り、こちらにはいくぶんかゆとりがあった。
 湖北の美熟女、ヤンキー麺は今回漏らしてしまったが、霞釣行で味わうべきものを味わうことが出来た、ということで旅としては上出来に思える。
 しかし、朕は旅行が趣味というわけではない。釣りこそが第一の趣味である。
 空腹も癒えたところで再び「新川で鍛えた本気を実釣をもって示」さなければならないだろう。

 横利根から与田浦に延びる水路群を転々としてみたが魚の姿をまったく見なかったことで集中力を保てず、前川にまで迷走。
 至るところでバサーの姿を見る。
 ハロウィンの跋扈には虫酸が走るが、同じ毛唐文化のバスフィッシングはマスコミが手の平を返してもこうして定着していることに喜びを覚える朕である。
 とはいえ、この時、どうすればバスを見つけられるのかまったくわからなくなっていた。

 そういえば昨日から霞ヶ浦東岸のドック周りでワカサギを狙っている釣り師を何人も見てきた。ひょっとしたらワカサギが接岸していてバスを寄せているかもしれない。
 ということでワカサギ釣り師の姿を求めてみる。
 城下川周辺には立ち入り可能なドックが何箇所かあり、ショアラインにはシャローフラットが広がっている。そこにワカサギ釣り師が居たらその付近で粘ってみよう。
 去年はワカサギの大群がこの一帯で溢れているような状況でありながら手応えを得られずに終わってしまったエリアでもあるが、あの時はあの時、今は今だ。
 「もしかしたら釣れるかもしれねえじゃねえかよお!」
 と、泣きながらも続けるしかない。
 ドックではワカサギ釣り師がぽつぽつと釣っているように見えたので、この立ち入り可能なドック一帯で“夕間詰め、最後のチャンスに賭ける”ことにする。
 陽が出ている間は“この前釣れた”チャギンスプークJrや“昔よく釣れた”ピーナッツⅡSR(ラトル音消去済み)でドック外周を流し、光量が落ちてからはマグナムフィネスワームのアンダーショットリグで船道に張り付いた。
 ワカサギ釣り師と話す機会があり、聞いてみると「もっとワカサギが来てればバスも追っかけて来るんだろうけどねえ…今日はワカサギも調子悪いよ」との仰せ。
 絶望的な状況であるということを突きつけられるよりも、ブラックと言わないエサ釣り師のおじさんが居たというのが衝撃的だった。
 常夜灯が水面を照らすようになる頃ようやくバイトの感触を得るが食いは浅くフッキングには至らず。
 史進がこのドックでフィネスをやっていたバサーが20センチ程度のバスを釣っているのを見たという。
 バイトしてきたのはそのクラスの魚か…。
 いや、この際サイズはどうでもいい。とにかく釣りたいのだ。と粘ってみたが、やがて迎える“そして今日も千夜釣行”な結末。

 帰路。
 去年は喜びのメロディーだったハワイアン6も、今年は哀調がやけに響いた。
 純輝で食した麺大盛りも既に消化されたようで空腹を覚えるようになっている。
 「メシなんて食ってられるような状況か?」と凄むべき場面であろうが、真剣に釣りに取り組んではいても性格まで“ガチ”ではない我々は都内に戻ってからしっかりと飯を食い、二日間の霞水系の旅を終えた。
 そして最後に「何だ、二日もかけてバス一匹だけか。だらしがねえなあ」と、伝説式で締め括った。

 ※マー語
スポンサーサイト

テーマ : お仕事奮闘記
ジャンル : 就職・お仕事

tag : バスフィッシング ルアーフィッシング

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

最新記事
月別アーカイブ
リンク
検索フォーム
QRコード
QRコード