伝説跡を遠く離れて

 10月6日。

 朕の最初のルアーフィッシングの師匠は、伝説に列せられる王倫氏である。いうまでもなく、レジェンドΙの称号を持つ人物に習ったところで釣れる釣り人にはなれなかった。
 ヘボ脱出のきっかけを与えた真の師匠は大先生こと花和尚の紅蝎である。
 この日、ひとつには朕一人では吟味しきれぬ“実験ネタ”を渡すため、ふたつには上青のポイントの様子を見るため、登戸よりはるか上流の流域で紅蝎と合流することになった。
 自ら探して選んだポイントではない。他人に教えてもらったポイントなのでボーズを恐れる必要は無い。数々の伝説語録を所蔵する朕である。状況に応じた語録を用いて保身できた気になることができる。

 普段より長い行程を進みポイント入り。
 川岸を歩くと早い段階でナマズの姿を発見。気取られて逃げられたが、まだ明るい時間帯である。この一匹に囚われず、一帯がどうなっているのかを知っておくことの方が重要だ。
 大先生が来る前にポイントを吟味し、良い場所を見繕っておかなければ「新川で鍛えた本気を実釣をもって大先生に示す」ことができない。
 気になるものを見つけてはレンジバイブやタイダルといった飛距離を稼げるベイトで打っていくが反応を得られぬまま夕刻が近付いていく。
 それにしてもSVSインフィニティは遠心ブレーキの進化形と言っていいのだろうか。夏から使い始めてみたが、元のSVSの方が、特に飛距離を求められる場面で使い易くはなかったか。
 やがて千夜釣行的な風景に包まれて行く。いつの間にかすっかり日が短くなっている。

 「おめえ、何処に居るんだよ!?」と、レジェンドⅡのごとくブチキレてはいなかったが、朕の姿が見えない、と大先生から電話が入ってくる。確かにここは土手から見えないだろうからいくらかの説明は必要であろう。
 大先生はおっさんだが、殺鯨鬼のネイチャーボーイであるため、難なく合流してきた。
 レンジバイブ、フラットラップは持っていなかったが流れに強い、サイレントのベイトはしっかり持ってきていた。
 「何だ、ラパラばっかじゃねえか」と、朕は伝説式上から目線で突っ込んだ。

 それぞれにキャストを続けるがどちらも反応は得られない。
 釣れると言われたポイントはここで間違いないはずだが。
 次に上青に会うとき「おめえが良いって言うから行ってみたけどよお…釣れねえじゃねえか!」とキレればいいだけだが、それ以前にこのポイントに呼びつけた朕が、紅蝎に「おめえが良いって言うから来てみたけどよお…釣れねえじゃねえか!」とキレられないかと危惧した。
 そこで朕は大先生のところに歩み寄り「オレはよお、フィールドに立ってルアーキャストするだけで満足なんだよ」と、レジェンドΙの言葉で先制。
 すると大先生「こういう時は“飯なんて食ってられるような状況か?”なんじゃねえの?」と、逆に伝説的指導を受けてしまった。
 キャストの合間、今我々の間で話題になっている殷周伝説で盛り上がっていたが反応が無いまま完全に陽が落ちる。
 所詮我々は女媧じょか氏が黄土に浸した縄から滴れた泥水で出来た人間の方の子孫に過ぎないのだろうな…と、諦めかけていた頃、紅蝎がバイトを捉える。
 さすがは大先生よ、と感心したが、なかなか魚は寄ってこない。
 「コイのスレ掛かりか?」と、大先生は言っていたが、状況からしてナマズであるという確信が朕にはあった。
 こういったことがあって、せっかくのデカナマズをバラした経験があったのでメジャークラフトのロッドを完全に捨て、オールスターに鞍替えしたという朕のロッド遍歴を教えてやった。
 そんな会話ができるほどの時間をかけたファイトの末寄ってきた魚はやはりナマズだった。
 CD9での釣果。
 「やっぱロコの案内って心強いな」と、喜びのかつての師。
 しかし、自分が釣ったわけではないので面白くない朕は「多摩川のナマズはラパラ巻くのがパターン。つまらねえ釣りだ」と、この時フラットラップを投げていたにもかかわらず、伝説三輪式で僻んでやった。
 また、口掛かりのナマズ相手にここまで苦労するロッドに、僻みついでにダメ出ししてやったところ「オレのニーズには合ってる」と、伝説三輪式で返すなどこちらの方も大先生は絶好調だった。
 このポイントで結果が出たことにより、上青にキレて己のヘボさを誤魔化すことができなくなってしまった朕は「自分、根っからのバサーなもんで」と言って、バスにしか興味が無いのだからナマズが釣れないのは仕方がない、という方向に持っていけた気になって納竿とした。
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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