伝説釣魚台からの風

 7月31日。

 日曜日の釣行機会には格別の思いがある。
 登戸名物降臨に対する期待だ。
 ネタ、実験、修羅……三輪氏はかつて“真夏のクランキン修行”と称し、李立に浅瀬で延々ミッドクランクを引かせていたほどである。今まさに修行に相応しい時期にあるのではないか。
 また、新顔の釣り人も相変わらず登戸にやって来ているのでその威を改めて示すためにもいずれ降臨すべきだろう。
 と、かつて登戸に君臨していたリビングレジェンドの再拝が期待できる日ではあるが、やはりこの日も、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気に襲われ、一休みしてからの出発となった。

 既に登戸入りしていた李立からメールが届いていた。
 預ったものがあるというので添付の写真を見てみれば風来堂のTシャツだった。
 江三子のひとり、公孫戍こうそんじゅが所有するバスバブル時代の遺産だ。
 太公望から続く斉人はさすがに文化というものに通じている。北狄の出である朕には中華の光がまばゆく輝いて見える。
 残念ながら、今日も登戸に伝説三輪氏は降りてこられなかったようだ。名物を一目見たくて訪れた人はさぞがっかりしたことだろう。

 今日も「新川で鍛えた本気を実釣をもって示す」べく調布入り。
 茂みが雨で濡れていたので移動を渋り、激浅ワンドでコイ科を狙う。
 程なくして李立が現れる。
 盛んに反応を得られるというほどではなかったので、伝説三輪語を弄しながら退屈をしのいでいたが、いい加減釣れないのでこのポイントを捨てようかなどと思い始めてきた頃、ようやくバイトが出る。
 デュオのソルト用ペンシルベートで関東巨鯉倶楽部達成。海のターゲット用に作られた頑丈なベイトのはずだが、フロントフックが外され、※1デも傷だらけにされ、魚食ゴイの威力を思い知らされた。
 何はともあれ、連続ボーズに歯止めがかかったことで安心である。
 いずれナマズが入ってくるのではないか、ということでキャストを続けていたが光量が落ちてきても進入の気配が無い。
 やはりこのポイントはナマズの道筋から外れているのだ。この傾向は夜間でも寒さを感じられなくなってきた辺りから顕著である。

 太い流れの通る水門側へ移動。
 この一帯から最適なスポットを探し当てるのは難しいが、魚のストック量は多い。
 ナマズに絞って狙うなら、対岸の茂みに道を通し、足場を作るのが確実だろうがそこまでの気力は無い。また、対岸側からが有利というだけでこちら側が悪いポイントというわけでもない。
 「もしかしたら釣れるかもしれねえじゃねえかよお!」を、こういう場面で使えていたならレジェンドⅡも鍍金剥離の進行をもう少し遅らせることができただろうに…。
 ルアーに対する反応は多いというほどでもなかったが、捕食音が聞こえ、バイトも出ていたので、伝説三輪氏がよく口にしていた“根性”を出すことができていた。
 そしてここでは李立がナマズのキャッチに成功。
 朕は「多摩川のナマズはフラットラップ引いてくるのがパターン。つまらねえ釣りだ」と、アタリがなければどんなターゲットであれライトリグでボトムを取ってしまうというつまらない釣りしかできない人の言葉で僻んでやった。
 更に李立は、どれほどプレッシャーをかけられても一定の場所から離れようとしない賢いナマズに、流されてきた死にかけアユをプレゼンテーションし一本追加。
 ライブベイトの力を思い知らされる釣果である。
 真横で見ていた朕は「そこまでして釣りてえか」と、そこまでしても所詮釣れないレジェンドたちの言葉で謗った。
 他人ばかりが釣るので、朕は伝説三輪氏の半泣きを真似て、“虚仮の一念”などと称してウェイクミノーを巻き倒すことにした。
 とはいえ、ベイトが流れに押されて照準がずれるがためのミスバイトを少しでも軽減してやろうという考慮もあって、直線で引いてこられるベイトの選択というのが本当のところだ。
 さほど待たずして小さなバイトが出る。
 残念ながらニゴイ。
 かつては多摩川勝者の証としてもてはやされたが、今や多摩川ルアーフィッシングでありがちな※2ードでしかない。
 「何だ、ニゴイしか釣れねえのか。だらしがねえなあ」と、李立がレジェンド式で突っ込んでくるので、朕は「オレだってちゃんとやってるよ!」と、伝説三輪氏のように泣きキレて返した。
 釣れたり、釣れなかったりとまあまあの釣果を残しながら進んでいるが、僭称釣りウマの修羅から見れば嫉妬されるに十分な釣果である。
 我々は殺される前に釣り場から去ることにした。

 ※1 ヘボオヤジ語
 ※2 マー語
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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