午後、釣りという低レベルな競争に臨む

 5月14日。

 土曜日である。
 伝説降臨を待ち望む人は寡なくないであろうが、王に擬せられる人が軽々しい振る舞いをしてはならないということも知っておかなければならない。
 かつて君臨した主の帰還を心待ちにしつつも、今や登戸に利あらずと判断した朕は、今回も調布、狛江側で「新川で鍛えた本気を実釣をもって示す」ことにした。
 小潮の今日はいっそうノーフィッシュの危険を孕んでいるため、尚のこと伝説式保険を篤く掛けておくべきだが、実験を謳える小道具はセントクロイ・プレミアのスイムベートロッドぐらいしゃ無くなってしまった。
 しかし、まだビッグベイトが特に有効になるような状況ではないし、小場所を攻めるのには適さない。
 それなりにノウハウを蓄えているので、レジェンドIIのような無知なるがゆえの実験はしたくない。
 よって、今回もまた無保険で、軽量のベイトも投げられるオールスターのトラウト用キャスティングロッドにスコーピオン201を載せ、ラインはトライリーン15lbを巻き、BXジョイントシャッドを巻ける仕立てで多摩川に向かった。
 ガゾリンを使えば人食い男爵がうるさいだろうからと、今回も鉄で出発。

 土手を走っていたところ、川岸に見覚えのある姿を発見。
 張横だった。
 忍び寄り「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と一喝。
 度々話に聞く張横の友人、穆弘もこの日来ていた。かくして朕は、掲陽鎮の顔役全員を知ることになったのである。
 なかなか好調のようで、40アップ含むナイスサイズばかり釣れているという。
 波立つ流芯周りは朕にもチャンスがあるように思われたがハードベートは見破られているようで、ボイルが起こるほどの状況にもかかわらずコーリングアップされてくる個体は無く、ライトリグで流す張横がキャッチしていた。
 この釣れ方を見て、朕にはお手上げの魚だと思ったが、それを口にしては侮られるというレジェンドII的思考回路を働かせ「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、伝説三輪氏のように顔を赤らめながら、関心の無いこととばかりに冷静さを装った。

 李立到着。
 登戸には今日も名物が降臨することはなく、師匠がペケニシモなスモールマウスを釣り、公孫戍こうそんじゅが根こリグでウロコを釣り上げたという。
 何と伝説三輪氏の好むネタ満載ではないか。
 このような場に降臨しないのは不思議でならないが、「釣れなくても関係ありましぇ~ん」とお道化ていた氏も、実は内心あまりの釣れなさに泣いていたのかもしれない。
 ナマズ狙いに入るや、李立は抜け目なく「今日はテクナGP70ヘイチでナマズが釣れるかの実験」と、早速伝説式保険を打っていた。
 水路の釣りはナマズの進入を目視されてからが勝負。
 合間、ニゴイの姿を見たり、「もしかしたら来てるかもしれねえじゃねえかよお!」とレジェンドギレしたりしながらキャストをすることもあった。
 李立は他のポイントの様子を見に行くといって、伝説三輪氏に無い、と指摘されていた冒険心とやらを発揮させ移動。
 朕は残り、とりあえず程度のキャストをしているうちにBフォロワーを対岸にきつく引っ掛けてしまう。
 使いどころがわからねえ、と、正解をやり尽くして来たベテランにはどうでもよいルアーなのかもしれないが、朕にとっては多摩川ゲームに無くてはならないベイトであり、釣具屋でもほとんど見ない貴重な物である。ためらいはあったがレジェンドIIいうところの“生ウェーディング”を敢行し回収。

 18時を回る。
 先ほどの浸かりの影響は抜けたようで、薄暗くなるとナマズが一匹入ってくるのが見えた。BXジョイントに頭を向ける動きは見えたが、そのまま消えていった。
 李立が戻ってきたので、移動先の様子を聞いてみたところ、こちらの方がまだ良さそうだとのこと。
 しばらく経つとまたナマズが入ってくるのが見えた。今日のような小潮の日はコーリングアップで食わせるのではなく、シビアにアプローチしなければならないのかもしれない。
 少し沈み気味に感じられていたので、懐かしのがまかつスピナーベートを結び、このポイントでナマズが足を停めそうなスポットを通す。
 猛烈なストライクには程遠い感触だったが、キャッチ成功。
 月の魔力が鈍い日である。普段見える全魚種に活気を感じられない。
 その後、ナマズの進入は見られず、反応も得られず、移動。

 調布。
 「この前釣れたから」というわけで、先日グランドマスターが幾度かストライクを引き出し、ベストキッドがキャッチしたポイントに入る。
 我々はレジェンドワードの応酬を楽しみながらキャストしていたが、李立がバス、ナマズ以外の何かのチェイスを誘うだけに止まる。
 「おめえがいいっていうから来てみたけどよお、釣れねえじゃねえか!」
 「オレだってちゃんとやってるよ!」
 と、言い争いになるが、レジェンドΙの「オレはよお、フィールドに立ってルアーキャストするだけで満足なんだよ」という言葉がこの場を収め、かくして我々はひとまず釣りという低レベルな競争から卒業することにした。

※マー語
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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