二面楚歌

 5月5日。

 以前「五月五日は是非多摩江に屈原の霊を弔いたいものだ」と、大先生がいっていたことにより、この日、アブガルーシャ・バイタルスティックS662Lを引き渡すことになった。
 奇しくも朕はこの日、伍子胥を供養するつもりでいたのでちょうどよい機会だった。
 更には、この日は朕が敬愛して止まぬ孟嘗君の生誕日でもある。
 しかし、これらの日付は旧暦定まる以前のことであり、加えて現在は西暦に支配されているため、正確なことはわからない。
 かくして大先生がかりそめの皇居を訪ね、バイタルスティック引き渡しと相成る。
 掛け値なしが朕の流儀である。よって、売値は購入時の価格そのままに三万ペリカとした。
 古今の興亡と得失について論じ合いつつ昼食をとり、多摩川を目指す。
 休日ではあるが、登戸に名物降臨の可能性が低いことと、橋の上からいかにも水が止まっているように見えたので、流れのある堰下エリアに入ることにした。

 せせらぎ館に三輪車を発見。
 しかしこれは遠目にもわかる、似て非なるものだった。
 よく釣っていたためにレジェンドΙに石を投げられた経験をもつ紅蝎は、その後継者ともいえる、よく釣る者を突き落としてやろうかと嚇したレジェンドIIを見ることが出来ないと知り、やや気落ちしていた。

 まずは川の一端に触れておこうと堰直下のプールを覗き込んでみる。
 ブロックの陰に40前後のスモールマウスが見える。カバーに身を寄せ休んでいるのかに見えたが、一段低いところからベートの動きを窺っていた。かといって一気に襲い掛かることもなかった。産卵後であるためなのか、単に水深の無い場所であるための警戒状態だからなのかは判別できず。
 どのみち釣り禁止場所であるし、見えるバスに囚われるほど愚昧ではない。

 流れとベートを追い、明るい時間帯に釣れる可能性が高いのはまずニゴイ、上手くフィーディングモードの個体が待ち伏せしていればスモールマウス、サイトできる個体が居ればナマズといった順番だろう。
 多摩川に通い込んだ者なりの見立てを、かつての師匠に得々と語るのは気分が良いものだ。
 そうはいっても外すということだってある。そこで「今日も、今日はスコーピオン201で釣れるかの実験」と、レジェンド的保険は打っておいた。
 レジェンドワードの利便性を理解する紅蝎も「今日はバイタルスティックが多摩川で釣れるかの実験」と、しっかり保険を掛ける。

 堰下エリアの丸見えのシャローフラットには、至るところでアユが見える。
そのサイズは5センチ程度のものから10センチ台までまちまち。
 コイに紛れて違う魚が見える。60オーバーのコイをカバーから追い出している、と、よくよく見ればシーバス!
 釣れる状態ではないとわかっていてもやはり落ち着いてはいられない。
 シーバスは居たがカバー要素という点ではここは日中あまり好ましい所ではない。
 流芯に水量水深のある下流側を目指す。
 その移動途中にニゴイを発見。
 現在、勝者の証として本当に相応しいのか論議が関係機関で再燃している。結論はまだ出ていないが、法案は可決され施行に入るまでから時間を要するもの。
 今はまだ勝者の証として有効である。
 かくして朕は再びBフォロワーの使いどころを示してやった。

 下流の水量豊富なストレッチ。
 上流部は張り出したブロック帯が障がい..となり、攻める術を見出せず、ブロックの切れる下流部を攻めるしかなかった。
 ゴミを拾い集めた流芯のカバー周りにスピナーベートを通したところ、ニゴイがチェイス。
 朕の知る限り、これまでにスピナーベイトを食ったコイ科の話は聞いたことがない。
 どうしてか、コイ科の魚はスピナーベートを追いはするが食うにまでは至らない。
 ナマズやニゴイの話ばかりする朕に、紅蝎がラージは釣れないのか、と尋ねる。
どうしてもバスが釣りたいならスモールを狙えばいい。更にいえばスモールマウスならエリア違いである、と説明。
 「でもよお、おめえは去年釣ったし、少年だって釣ってるじゃねえかよお」と、レジェンド式で返された。
 朕は多摩川バス事情を説明し、そのことによって紅蝎は何故レジェンドIIだけ釣れていなかったのかの理由を悟り、ラージマウスを狙って釣るということを諦めた。
 バイタルスティックの使用感は想像以上に良いという。朕の目利きに今さらながら感心していたので朕は得意気に「オレは今まで腕で釣ったことは無い。すべて優秀なタックルの性能のお陰なのだ!」といった。
 「…それって自慢になるのか?」
 朕は紅蝎の問いを無視した。
 結局、このエリアでは何事も起こらなかった。
 「おめえが良いって言うから来てみたけどよお、釣れねえじゃねえか!」
 紅蝎がキレたことにより、再び堰直下の一帯に戻ることにする。
 光量が落ち、あの一帯にカバー効果が生じるまでまだ時間はあるが、ここにいても「見えてくるものが無いのう」と、レジェンドするのがせいぜいだ。

 堰直下に戻り、所在なくキャストしたり、四方山話で時間の経過を待つ。
 せっかく楚出身の偉人の霊を慰めに来たのに、捧げるのがニゴイ一匹ではあまりにも侘しい。
 紅蝎が「オレが死んだら、顔は布で包んでくれ」と言う。この体たらくではあの世で伍子胥にあわせる顔が無いからだとか。
 いつから夫差になったのかは知らないが、夫差といえば西施。西施といえば美人ということで、ビーバスの嫁は別嬪だなという話になる。
 そしてビーバスの嫁はかつての朕の内縁の妻に似ていた。
 よもやと思い「その女、双子の子連れではなかろうな」と、訊ねると、嫁はビーバスより歳下だということで、朕はにわかに失っていた落ち着きを取り戻した。
 朕が今この場に身を追われたのも、今この場に身の置き所を見つけたのも、すべて西施あってこそなのだ。
 やがて陽が落ち、ポイントも空くが反応は得られない。紅蝎がバラしを演じていたが食ったのかスレなのかは不明。
 この先が無い世代が諦めの境地に入る頃、この先の春秋に富む施恩と李立が現れる。
 早々に施恩がマルタをキャッチ。
 李立はここへ来る前に50、40クラスを一本ずつと、30以下を数本というスモールマウスをキャッチしていたという。
 朕は「突き落としてやろうか」とレジェンド式で、紅蝎は「やられポンキッキだぜ」とマー式でその功を讃えた。
 明日なき中年組はここで撤退。
 朕は「アウビダーゼン」と言って別れた。
 この日『ジャンゴ』を貸したので、いずれわかる日が来よう。

 とりあえずではあるが、連続ノーフィッシュに歯止めがかかり安堵していたところ、李立より釣果写真が送られてくる。
 我々が去った後、更に一匹追加していたようだ。
 いうまでもなく「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と泣いた。
 一方、この日調布エリアに入っていたという義士はノーフィッシュを食らったとのことで「何だ、釣れなかったのか。だらしがねえなあ」と、本当にだらしがねえ人の言葉でねぎらった。

※マー語
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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