ガチ人来たらず

 3月21日。

 世間は三連休の最終日。
 天候も良い。
 近郊の釣り人がこぞって多摩川にやってくることだろう。
 国内の釣り人口は増えているのかどうかは不明だが、登戸を見ている限りでは新規入門者らしき人も度々見かける。
 口ほどにもないということは、知る人には知れ渡っていたとしても、かような状況であるゆえ、登戸名物・伝説三輪氏の活躍の場はまだじゅうぶんに残っているのである。特に天候の良い土日祝日などは今でも格好の舞台であるといえよう。
 ハイプレッシャーのフィールドを嫌う朕ではあるが、レジェンド旋風吹き荒れる光景見たさに、まずは登戸へ行くことにした。
 この日はDのロッドにSのリールという村上様仕様。これ一本で何でもやり、何でも釣ってやろうと「新川で鍛えた本気を実釣をもって示す」という構えである。
 李立より、自分は相羽式で行くという返答あり。確かに彼のテクナに相羽モデルがあったような…。

 かくして多摩川入り。
 登戸には予想通りの人出。しかし、残念ながら登戸名物は見えない。詐欺師との甘い一時に溺れているのかもしれない。
 キャスト開始という頃、侯嬴こうえいも現れる。連日バスやナマズの反応を得られるポイントを押さえていて、遂に先日70クラスのナマズをキャッチしたとのこと。
 朕は冷静さを装い、しかし半ベソ顔で「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、伝説三輪氏した。

 南風が時折強く吹き、水面が波立つ。
 表層か、ボトム寄りか。そもそもスモールマウスが入ってきているのか。これを知るための術は未だに、目で見るか、反応を得てという手しか持たない。
 そのうちに、ただ手を変え、品を替えでベイトをキャストしているだけだということに気付き、スモールマウスを諦めることにした。
 第二ラウンドのマルタへ、と、堰下エリアに入ろうとしたところ見覚えのある人影。
 夏侯章かこうしょうとセニョールだった。
 マルタ狙いの釣り人がまだ何人か見えていることだし、ここで挨拶がてら時間潰しをしていこう。
 まずは「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、伝説三輪氏式を一声。公孫戍こうそんじゅも居たので、先日のナマズ釣果に対し「突き落としてやろうか」と、これまたレジェンド式で賞賛。今年は六本のナマズをキャッチしているとか。新たなナマ師誕生である。加えて今日はスモールマウスを一本キャッチしたとのこと。
 すっかりやられた気分になった朕は、実力とは不釣り合いにプライドだけはやたらに高い伝説三輪氏に倣い、「でもよお、公孫さんは新川で釣ったことないよな。大したことねえな…オイ!」といって他人の功を妬んでみせた。
 やや上流に李立と下野さんがいるというので向かってみれば、下野さんが「こいつとんでもないことしてるよ」と、李立を指す。
 見れば、ペットボトルにテナガエビとハゼが入っている。
 ぬうう…相羽式とはこのことだったのか。
 早速朕は、伝説三輪氏の泣き真似をし「そこまでして釣りてえか?」と凄んでみせた。
 しかし、生餌だから簡単に釣れるかというとそうでもない。魚を見つけられなければ、むしろルアーよりしんどいのである。
 堰下エリアを覗いてみれば人も減り、程よく光量も落ちてきたので、朕はマルタ釣りに本気を出すことにした。

 マルタ瀬は朕の独占状態であったが中洲上流を打っていたルアーマンが、無言で朕の打つ瀬に入ってくる。朕の姿が見えないのか、打っているポイントがわからないのか。
 無礼なやつめと思いながらも、トラブルを避けるため、こちらは手を休め様子を見る。反応を得られなかったのだろう。去っていった。
 いよいよ陽も落ち本気を出すべき時、という頃、再び先ほどのルアーマンがポイントに入ってくる。当然、朕がこのポイントを狙っているのは承知のはずだ。
 一度目は様子見、と好きにさせておいたが度重なる無礼を捨て置きはしない。
 朕は無言の教化を行うべく、容赦なくポイントへのキャストを続けた。ラインが絡んだりしたら、トライリーンのライン強度を利用してこちらに引っ張り込んでやろうという気概である。
 そして、遂にやつめひるんだか、立ち去っていくのだった。
 その後は瀬の流れとの戦いだった。流速、スポットの狭さといった都合上、長くルアーをステイさせることが出来ず、立ち位置を変え、着水点を変え、と試みたものの一度も決められず。
 また、決まらないことが癪に障ってならず、いよいよ朕はむきになってキャスト&リトリーブを繰り返す。そんなことを続けているうちに、この日上流エリアに行っていたという義士より、釣果の報が入ってくる。
 マルタの他に多摩川勝者の証、ニゴイまでキャッチしていようとは…。
 ここでようやく、無為自然を尊としとする朕が、無駄に熱くなっていた愚を悟る。
 殊更なことを成そうとするところに失敗の原因があるとか。
 改めて一帯を眺めれば、流れが形作る変化がまだまだある。水温の高さもあって、ナマズだっていけそうではないか、という趣である。
 そして気を取り直して数投したところバイトを得る。
 ナマズの価値には及ばない魚ではあったが、この時既に20時。
 魚を得られたことを足るとし、納竿とした。

 一方、相羽式の結果はといえば「釣れましたか?」「アタリはあるよ」状態に悩まされ、ようやく得た強いストライクをラインブレイクで取りこぼしこころ折れ、泣く泣くの撤退となったとのこと。

 環境が上向き、それぞれが景気のよい釣りができると思われた日であったが、終わってみれば普段通りの、釣れないこともない多摩川だった。
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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