貴賎

 3月10日。

 天候が下りに入る。
 しかし、一月、二月と違い春に入っての下り。絶望感は無い。
 そういう訳で「おめえは根性が無え」と、伝説三輪氏に罵られていた朕も、寒さに怯まず多摩川に向かうことにした。
 この頃、既に登戸入りしていた義士より釣果の報が入る。
 ズームのクロステールシャッドもどきのアンダーショットリグ。
 レジェンドⅠは「常吉は反則」とのたまっていたし、レジェンドⅡも“男らしい釣り”を好んでいた。そんな彼らの記憶を風化させてはならないという思いから、朕は「そこまでして釣りてえか?」という、そこまでしても所詮釣れない人たちの言葉を贈った。

 登戸下流部にて義士と合流。
 昨日、ザの店長に託された、米国ではスモールマウス狙いで一般的に用いられているというチャートのグラブを使ったスイミングジグを試してみる。
 だが、反応は無い。
 これを見て、このメソッドは多摩川のスモールマウスには通用しないと思ってしまうレジェンドⅡのごとき感想を抱く人も在ろう。
 しかし、釣れなかったのは魚の現在の状態を知らず、ただ釣れるといわれたメソッドをやっていたからだということにある。
 そういった基本的なことを知らないために、正解をやり尽くしてきたベテランでさえ「おめえら、Bフォロワーは良い、良いっていういけどよお、オレには使いどこがわかんねえ」とか「おめえらこの前までドッグX全否定だったじゃねえかよお!」と抜けた発言をしてしまうのだ。
 レジェンドたちは釣り師としてこうあってはならぬということを、時代を超えて教えてくれる。

 李立が現れる。
 状況的に厳しいのか、単にエリアを外しているだけなのか。スモールマウスを釣るのは難しいことなのか、多摩川でスモールマウスを釣るのが難しいことなのか。といったことを論じ合いつつ、あの手この手を試す我々であったが誰一人反応を得られなかった。
 次第に釣りそのものに倦んできて、朕は伝説の列に加えるには少し足りない傑人たちについて語って過ごしていた。
 夕刻が近付き、気持ちはブラックよりマルタに移り始める。
 堰下に移動する前にちょっとだけ、とリップレスクランクをキャストした李立がスモールマウスのストライクを得ていたが足元でバラす。
 アタリすら得られなかった朕ではあったが、レジェンドのように「だらしがねえなあ」と罵った。

 堰下エリア。
 今日は遅くまで居られないという義士は今年のマルタポイントを見ておきたいということで見学のみ。
 スポットが狭く、ベイトのコントロールが困難であるという現状を見ていただく。
 魚が薄い上にベイトのコントロールが思うに任せず、という状況では捨てても惜しくないような三級品は役に立たず、結局、レンジバイブやレアリスバイブといった一流品の出番が多くなってしまう。
 ゴロタ瀬に一級品をぶつけまくり、傷めつくして得られた釣果といえば、朕がマルタ一本、コイ一本。李立がマルタ五本、コイ一本という微妙な釣果。
 魚を得る喜びとタックルに与えるダメージについて考えた。
 ナマズやバス狙いの時の犠牲は仕方のない投資と思えても、相手がコイ科となると損耗はただ勿体なく感じてしまうのである。
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tag : 多摩川 バスフィッシング ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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