妄士一たび去りて復た還らずか

 2月27日。

 先日はワークを行う時間がありながら体感的な寒さが理由で、誹り通り「おめえは根性がねえ」状態だった朕だったが、“釣り廃人”と称された李立は、釣られ廃人の僻みを嘲笑うかのような釣果を叩き出していた。
 伝説太史たる朕は、史実を明らかにした上で「あいつはしょっちゅう行ってるから釣れるんだ」と、三輪氏の言葉でその功を讃えた。

 そして迎えた当日。
 今日も「新川で鍛えた本気を実釣をもって示す」べく多摩川へ向かう。
 まだ寒さを感じる時期であるとはいえ、晴天の土曜日である。多くの釣り人が来ることが容易に想像できる。登戸はレジェンドⅡが新川節をぶつのに最適な舞台になっているだろう。
 降臨と新たなる名言を期待しているのは朕だけではないはずだ。

 予想通り、登戸エリアにはバス狙いと思われる多くの釣り人の姿があった。
 しかし、残念ながら登戸名物の三輪車は見えない。
 温かさを感じられない南風は弱く、水質はクリア気味。迷わずスピードワームをアンダーショットリグに組み、流れの通る道筋を探る。
 しばらくすると、公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょう、秦明が現れ、上流側へ入っていった。ここで反応を得られていなかった朕も続いた。
 上流側には李俊、張横、李立、セニョールの他、侯嬴こうえい先生やバイカーの弟子も居た。次いで施恩、武松も現れ、おおよそ登戸のアイコン以外は全員集合状態となっていた。
 確かにこの面子に新川節を吹いたところで一笑に付されるだけだろうが、知らない顔は沿岸にずらりと居並んでいる。「この人は凄い」とか「只者ではない」と思ってくれる人はまだまだ居るだろうから、名物の活躍できる余地は十分残っているのである。
 
 皆本気を出していたが、魚を感じられていない雰囲気甚だしく、伝説の功績と威徳について論じ合うひとときもしばしばであった。
 かといって魚がまったく居ないかというかというとそうでもなく、李俊、張横、バイカーの弟子はせっかくアタリを取っておきながらバラすという場面もあった。
 そんな時、このところ釣行の機会を得られずフラストレーションを溜めていた施恩が、まだ早いだろうけどと言いながらも、「もしかしたら来てるかもしれねえじゃねえかよお!」とレジェンドギレの流用を決め、堰下エリアへのマルタ探索を提案。
 伝説三輪氏には「おめえには冒険心が無え」と、よく罵られていた朕ではあるが、バス狙いの集中力を失っていたので、移動の提案に乗ることにした。

 堰下流域を回る前に、堰直下のプールを覗いてみる。
 見える魚のほとんどがコイというのは普段通りだが、数は少なくともマルタの姿も見えた。
 思い起こせば冬のナマズ狙いのードとして早いうちからマルタが釣れたことがしばしばあった。
 本流筋を歩けばマルタ狙いをしていると思われる釣り人も何人か見える。既にマルタファン待望の季節に入っているのかもしれない。
 我々はポリ公調練場付近まで下り釣り歩いたが案の定、ルアーで釣れるだけの数が上って来ているという感触は無かった。
 しかし、マルタの方はさっぱりでも施恩は40クラスのスモールマウスをバラし、朕はナマズらしきバイトを得るという出来事があり、ひたすら巻いて釣りたいのならここで粘るのもありだと思う場所もあった。
 とはいえ、スモールマウスもナマズもここよりは登戸エリアの方が濃いだろう、ということで我々は来た道を戻った。

 登戸エリアに戻る頃には既に夕刻の時間帯。
 それでも釣り人の数は依然多く、伝説三輪氏の降臨が無いのが不思議なほどであった。
 上流側に戻ってみると、秦明と武松は帰り支度。李立と施恩はカースティングに行くと言い出す。
 「何だ、諦めるのか?おめえらは根性が無え」と、レジェンド式で彼らを見送り、朕は流れの道筋で粘ることにした。
 
 日没後も粘り続けること約一時間。
 一度はバイトを得るも続かず、やがて鼻汁が止まらなくなってくる。
 その様はさながら、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらい、どうにもならない質のもので、ヘボいがために釣れないという事実を誤魔化すには最適の言い訳になるであろうと思われる類のものだった。
 これならノーフィッシュで終わっても面目を保てるわい、と朕も帰ることにした。 

 ※マー語
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング バスフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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