黄金のデルタ地帯

 2月7日。

 ルアーで魚を釣るための知識は経験年数相応に養ってきたつもりではいたが、近頃まったくそれが無力化してしまったかのような感覚に陥っている。
 「もしかしたら釣れるかもしれねえじゃねえかよお!」と、レジェンド節で多摩川に向かうことにしたが、レジェンドⅡ同様、虚勢に終わってしまうのではないかという不安がつきまとう。
 この日は少しでもベイトを濡らしている時間を多く取り、チャンスを増やそうと思い、珍しく午前中に登戸入りすることにした。

 登戸下流部よりキャスト開始。
 風で水面が波立っていたので、リップレスクランクで素早いサーチを試みる。
 水道橋付近まで流していくが、どのスピード、どのモデルにも反応が出ることはなかった。
 そこで、水深のあるロックカバー一帯をテキサスリグで丁寧に探っていこうとしていたところ、義士が現れる。
 何と、ロッドはライト&マクギル。スキート・リースが使っているのかどうかは不明だが、黄色いブランクが映えている。

 午後に入ると、下流には江三子らしき姿が見えるようになり、こちらには秦明と李立が現れ、見知らぬ釣り人の姿も目に見えて増えてくる。
 これだけ人が集まる日曜日。新川節を語る相手に不自由はあるまい。しかし、残念ながら今日も登戸名物の姿は見えなかった。

 風が再び強まり、李立が言う。上流側のフラットで巻くのが良いのではないか、と。
 水温がそれほど上がっているわけでもないだろうから、まったくフラットな上流側のシャローより、こちらのシャローへの道筋に連なるところで待つほうが確率を高められるのではないか、と思っていたが、現に何ら反応を得られていない。ならば「オレが考えなしにやってると思うか?」と、レジェンドむくれな反論はせず、明らかに自分より上手の者の提言に乗ってみるべきだろう。

 上流側に移動し、一帯をリップレスクランクで流していく。しかし反応を得られることは無かった。
 「おめえがいいって言うから来てみたけどよお、釣れねえじゃねえか!」と、伝説三輪氏ならキレているだろうが、相手は自然の理に則って活動する魚である。
 人間の思惑通りに事が運ぶとは限らない。
 朕は巻きの釣りを諦め、再びカバー周りの釣りに戻ることにした。

 江三子がやってくる。
 彼らと話を進めるうちに夏候章かこうしょうが、ザ・タックルボックスの客であったことが判明。黄金時代の思い出話に花が咲き、更に自慢のルアーボックスも見せていただく。
 「大慶!」と、朕は叫ばずにいられなかった。
 元号がバジラナヤナだか真理に変わるより遥か昔、太古の時代の秘宝である。公孫戍こうそんじゅも話の輪に加わり、話はバスバブルを通り越し、レンタルビデオ黄金時代にまで遡る。
 AVにまつわる身近なエピソード、ビデオスルーのクソ映画といった昭和生まれにはたまらないネタの数々…既にゲームを諦めている状態である。
 しかし、古今の興亡と得失について論じ合っている我々を尻目に、秦明、李立はバイトを得、現れるなり上流側シャローフラットに入りアラバマリグをキャストし出した施恩は小炸裂させていた。
 40アップを含む二本のスモールマウスをキャッチ。
 これを見て、釣れなかった者たちは「突き落としてやろうか」と、レジェンドし、その功を讃えた。

 朕と公孫戍は李立や施恩がよく釣る様を見ていう。
 彼らばかり釣れるのは悔しいことだが、我々では到底及ばない。とりあえず平凡なベテランとしては、こちらの伝説や、あちらの伝説のような人格にだけはならないように気を付けていれば十分でしょう、と。

 陽が落ちる頃。
 ノーフィッシュの続く朕は「釣れるまで帰らん!お前も付き合え!」と伝説三輪氏のごとくブチキレようかと思ったが、自分より上のステージに居る者たちが気配なしと諦めて帰ろうとしている様を見て、「釣れてるやつのマネしねえと見えてくるものも見えてこねえぞ」という、同じく伝説三輪氏の名言を思い出し、朕も真似して諦め、帰ることにした。
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング バスフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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