吹きして止まむ

 1月5日。

 昨日、またしても李立がスモールマウスをキャッチしていた。
 朕はこの日、娑婆に身を置いていたため「突き落としてやろうか」と、「ガチじゃねえからよお」と言いながらガチな人のマネをしてその功績を賞賛した。
 
 かくして迎えたこの日。
 潮の動きも良い感じで、暖冬を思わせる釣りのしやすい天候だった。
 人間界の世界的動向と、自然の関係を見れば、これは何やら良くない兆候のように思えてきたりもするが、だからといって何かを為せる訳でもない。今受けられる恩恵を享受すべし、と多摩川へ向かう。

 登戸入りしてみると、まだ冬休みなのか、平日にもかかわらず数人の釣り人の姿が見られた。
 朕はいずれ魚が回ってくる道筋を意識して、細かい移動を繰り返しながらダウンショットリグを引き続けていた。
 しばらく経つと、上流側に李俊とセニョールの姿が見えた。
 話を聞いてみるとアタリは出ているという。少し沖側のほうだ。ここから沖側というとシャローフラット部分か、その付近である。
 このところ連日、日中は春のような温暖が続いている。シャローフラットにその影響が現れているようだ。
 証明するようにセニョールがナマズをキャッチ。ナマ師としては「突き落としてやろうか」とレジェンドせずにはいられない釣果というものだ。
 更に探りを続けていると李俊が魚をヒットさせていた。寄せてみれば40クラスのスモールマウス。
 仲間が釣り、自分だけ釣れないレジェンド状態に陥った朕は、かつて新川に行ったことのある李俊に「でもよお、おめえ新川で釣ったことねえよな。大したことねえなあ…オイ!」と、静から動へのコントラストが妙なレジェンドギレを決めてやった。
 この頃、李立出発の報入る。
 下流部から始めるとのこと。朕は釣果を得たとき、どんな僻みコメントを贈ろうか考えることにした。
 
 光量が落ち始める頃、馮諼ふうけんが現れる。
 先ほどまで、ここから更に上流のエリアに居り、そこで一本、スモールマウスをキャッチしたとのこと。
 荒川、上流エリア、登戸と、狡い兎の三窟を田文のためにではなく、自らのためにうがっていたというわけか。なるほど馮諼だな、とひそかに朕は感心した。
 やがて李立が現れる。
 下流部でしっかりキャッチしていた。ここは「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と賞賛した。
 馮諼は李立の理路整然とした振る舞いに感心し、「是非」と教えを請うていた。
 「釣れてるやつの真似しねえと見えるものも見えてこねえぞ」と、李立にのたまっていた者は、その自尊心が強過ぎるゆえか、既に釣れてるやつになっていた李立の真似をするどころか謗っていたものだが、普通に釣りたいのであれば、どうすれば釣れるかについてを素直に習うものである。
 そして李立の言に従い、馮諼は二本のスモールマウスをキャッチする。
 魚がいよいよ動き出したか。しかし、そこだけがポイントではあるまい。地形の構成を考えれば朕のポイントにもチャンスはある。
 ほら見ろ、こっちにも来たんべ、とバイトを捉える。
 と、寄せてみればスモールマウスではなくナマズだった。
 嬉しい、が、悔しくもある。
 同じ狙いをしているはずなのに、朕と李立では弓と弩ほどに命中精度の差がある。
 「自分、根っからのナマ師なもんで…」「おめえ、多摩川ではスモール釣ったことないよな。大したことねえな…オイ!」レジェンドワードの応酬。
 馮諼は「いつもそんな会話してるんですか?」と笑う。
 朕は李立との出会いから、レジェンド誕生に至るまでを語り、がために幾たびも李立が本気で面白くない思いをさせられてきたことも明らかにした。

 ※マー語
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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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