天運尽きてのち

 10月29日。

 しばしワークを怠りがちになっていたが、次の新利根釣行に備えてのことであって、レジェンドたちのように「多摩川はもう飽きた」とか「渓流はバスみたく簡単じゃねえからよお」という訳ではない。
 そんな合間にも技量を養うほどにレジェンドⅡに嫌味や嫉み言われるようになり、遂には疎まれるまでに上りつめた李立は当然のようにスモールマウスとナマズをキャッチしていた。
 このような時は「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、レジェンドⅡいうところの“皮肉”なるものを贈るのが賛辞として適切である。


 かくして迎えた当日。
 前回はやりきらず、あまりの気配の無さに「新利根は見えてくるものが無いのう」とレジェンドⅡな音を上げ撤退したが、今回はまた一段季節が進行したことにより、状況が好転しているかもしれないということで、義士を伴い再び新利根を目指した。
 また、今回は前回の遅過ぎたスタートを反省し、五時台現地到着を目標に準備を調えた。

 恒例となっている柴崎の堰からスタート。
 外気は肌寒さを覚えるが水は温く意気が上がる。ライズもそこかしこで起こり、シャロークランク、ジャークベイト、スイミングジグをローテーションしながら一面を流すが反応は得られず。バスの捕食活動が見えることも無かった。
 どうやらここがポイントではないようだ。
 盛んに見えていたライズが見えなくなったことにより移動決定。

 前回は李立が一尾キャッチしたものの、何の手掛かりも得られずに終わった上流エリアへ移動。間を置かずの再訪なら捨てるべきだろうが、あれから二週間が過ぎている。季節の進行に伴う状況の変化も考えられるので今回も様子を見ておこうというわけである。
 一通り見て回ったが、相変わらず粒子の細かい泥が溶け込んだような水色で、ベイトの群れの存在を示す信号も見えず。
 同じ濁り水でも下流側の方が水質が良さそうだ。

 再び下流側へ。
 柴崎よりさらに下流の一帯へ。
 ボートが年中叩いている水域のためフィッシングプレッシャーが高いのは容易に想像できるが、環境が良好であれば魚は居るはずである。
 岸際のカバー、ブレークラインを意識し流しつつ、時には足を止めつつベイトを引いていく。
 秋ということもあり、横に引くメソッドしか用いなかったが、アトラクター要素の強弱は意識し、時にはライトリグも用いた。
 レアリスバイブとエコギア・ストレート5インチのダウンショットにそれぞれバイトがあったがいずれも小型。だからといって反応が続くというわけでもない。正解の魚、とりあえず釣る、そのどちらに於いても外していることは明らかだ。
 それでも、近付いているのではないかという希望を持ってだれずに更なる探索を続けていたところ、義士がファイト中。
 感触からしてアメナマくさいとのこと。
 寄せてみればまさしくチャネルキャットフィッシュ。
 シーバス用として売られているミノーシェイプワームのダウンショットリグでの釣果だった。
 「シーバスルアーは反則だ」とレジェンドチックな僻みを言い、「突き落としてやろうか」と賞賛。
 とりあえず魚の顔を拝めたことに安堵し、このポイントには魚を寄せる何かがあるのかもしれないと期待し打ち続ける。
 しかし、結果むなしく…。

 これまでの感触を語り合う。
 水はまだ温さを感じるほどで、ターンした様子も無い。なのにこの気配の希薄さは何なのか。実は魚が溜まっているエリアを見落としているだけなのかもしれない。
 しかし、我々に刷り込まれた、新利根は魚が薄いという印象は拭いきれず、午後を迎える頃には新利根に魚を探すという当初の目的を諦めるようになっていた。
 こんな時はランカーズでおおよその状況を聞いておくに限る。ついでに前回食い損ねたヤンキー麺を食おう。
 というわけで斬新の郷、土浦へ向かう。

 移動の労を厭わず、土浦入りしたところヤンキー麺には“定休日”の札。
 意気が挫かれるが、めげずにランカーズへ。
 店長に状況を報告したところ、魚は下に落ちていて、今釣れているのは外浪逆浦であり、オールスタークラシックの魚はほとんどそこで釣れた魚だという。
 日帰り釣行の後半に差し掛かった今、さすがにこれから向こうまで足を延ばす気にはならない。
 備前川はどうなのか?既に魚が出て行ってしまった気配だという。
 頭を抱える朕。
 「釣れるかどうかはわからないけど」という前振りが付いた上で、城下川とその周辺の河口一帯にワカサギが集まっているとの情報をいただく。ついでにその付近のオススメの飯屋を教えてもらう。
 今回は散財もほどほどに、霞ヶ浦大橋下流側を目指した。

 霞ヶ浦大橋手前のサンクスは別のコンビニになっていた。さすがにもうケンクラフトのルアーは置いてないだろうな、などと過去を懐かしみつつ大橋を渡る。
 「メシなんて食ってられるような状況か?」と凄んでみたい気分もあったが、レジェンド的故事を無視しなければならないほど我々の空腹は切実だった。
 スー・シオミを彷彿させる店名に心が躍る。
 マイカーで通っていた頃、この地域はただ釣りをするだけの場所だったが、ランカーズに顔を出すようになったらこういう地元の名店を知ることが出来、こちらに来る楽しみも増えた。
 ふと、バスフィッシングに熱狂していた頃から今に至るまでのことどもを思い出し、結局釣りしか残らなかったな、と乾いた感慨が胸中に湧く。
 “昇天必至”と表されたカツカレーではなく普通の定食を注文し、満足いく味とボリュームに我々はにわかの休息を堪能した。

 満足の昼食を終え、城下川河口一帯へ。
 なるほど、ワカサギは寄っていて、ワカサギ釣り師たちがぽつぽつと釣っているのが見え、水面にも無数の波紋が見える。
 魚食鳥が時折魚を追っている。
 ボイルは見えないが、だからといって諦めることもない。かつて本湖が釣れていた時代でも朕はボイルを見たことは一度も無かったからだ。
 岸に打ち捨てられたチャネルキャットフィッシュの死骸の新鮮さを見れば、肉食魚がベイトの群れに寄せられてきたことが想像できる。
 加えてこの日は大潮。
 あまりにも浅くフラットな感触のある一帯の地形だが、日中はバスを警戒モードにさせているだけで、光量の変化や風の発生によってスイッチが入るかもしれない。
 ベイトの群れを見失わなければチャンスはあるはず。確信というほどのものではないが、キャストを続ける上での支えが出来上がった。
 城下川河口から下流側の浚渫船が泊まるポイントまでを流していくうちに夕刻が近付いてくる。
 この間反応は得られなかったが、一番ワカサギが濃く感じられた城下川河口周辺で勝負をかければ一本ぐらいは…と、城下川に戻る。
 『千夜釣行』を思い出させる風景の中で、河口とドック周りを打つ。
 あの水面を沸かすベイトの塊の近くにバスは居ないのか。キャストを続けるも反応は得られず、陽はどんどん沈んで行く。
 夜から朝にかけての冷え込みの影響が強いために広大なシャローフラットは魅力を失っているということを外浪逆浦での釣果が示しているということか。いや、だからといって霞ヶ浦の全てのブラックがあそこに行ってるというわけではないだろう。
 ここがまったく外れの場所とも思えなかったのでとにかく巻き続けたが、遂に完全に日没。
 見ればドック船道周りに常夜灯が点いている。
 かつて北浦に通っていた頃、夕方から夜にかけて必ずバスが入って来るドックを発見したことがある。この動きは水温が低くなるほど顕著で、井の塙ドックが特に優秀だった。
 勿論、ドックの構造と本湖との繋がりがあってのことで、ここでかつてのようなことが再現できるとは断言できないがとにかく出来ることはすべてやっておこう、と船道にダウンショットリグを投入。ただ、石積みや明暗の境界にリグを放りゆっくり引いたり、止めたりするだけの簡単な釣りだが、ついでにボトム形状、構成を知ることのできる便利なメソッドでもある。スポットを限定してなら朕でもこういう釣りが出来るのだ。
 ところがこのドックの船道は意外に浅く、ボトム形状はフラット気味で、ボトムに沈むカバーも薄い。だからといって他にこれといった大きな変化は見当たらないので、とりあえずという感じで続けてみる。
 途中、の店長から電話があり、会話中にバイトが出る。
 悲しいかな、一度に二つのことをこなす器用さを持たない朕はアワセを決め損ねバラしてしまう。小バスではあったがここはきっちり釣っておきたいところだった。
 魚を釣る方法を見つけたのではないか、とも感じたが、車の返納時刻と帰路の時間を考えればそろそろ引き揚げ時である。
 またしても霞水系でノーフィッシュを食らってしまったか、と嘆き悲しんでいたところ李立よりメール着信。
 フェラルキッドは今日もまたブーメランを振るっていたようだ。

 かつてサンクスだった霞ヶ浦大橋のコンビニに寄ってみると、案の定ケンクラフトは無かった。
 「オレは昔霞水系で鍛えたからよお」とレジェンドばりに吹いていた朕は大いに恥じ入り、顔を赤らめながら帰路に就くこととなってしまった。
 「おめえがいいって言うから来てみたけどよお、釣れねえじゃねえか!」と、レジェンドの如くにキレられなかったのがせめてもの救いといえよう。
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ジャンル : 就職・お仕事

tag : 多摩川 ルアーフィッシング バスフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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