斬新の郷を往く

 8月24日。

 久しぶりの楽和との合流の機会を得た。
 当初は福島県小名浜や鮫川に『釣りロマンを求めて』というつもりであったが、台風の影響で海が荒れ、ソルトゲームには厳しいだろうということで海は完全に捨て、霞水系と涸沼川でブラックやシーを狙おうというプランに急遽変更となった。
 ブラウントラウト、スモールマウスバス、シーバスの川。未知の幻想膨らむ鮫川に辿り着けるのはいつの日か。もしかしたら生涯辿り着けないのではないかとも思えてくる。あさひや食堂のどんこの煮付け定食は思い出に秘められた美味となってしまうのか、と、一抹の寂しさを覚える。

 23日深夜、楽和狛江到着。
 出発を飾るのが懐かしのChina Drum『Can`t stop these things』とは気が利いている。
 Lagwagon、No use for a name、Strung out、No fun at all…おのずとンションも上がろうというものである。
 `90年代の色褪せないクールなサウンドと共に進む中、人材発掘家でもある楽和より、新人の紹介がなされる。
 これまでに、たかり屋・アルゼンチンキッド、脳みそが一ミリ伸びた男・紫光帝、スペシャルメソッドの遣い手・パーやんといった人物を発掘してきた実績がある。
 仕事人が新たに放つ人材とはいかなるものか、と期待していたが、その期待が裏切られることはなかった。
 行ったことも無いフィールドの激釣れ情報を流し、他人を巻き込む“嘘つきオヤジ”と、W浅野も消し飛ぶ“W糖尿”の三人だ。
 楽和にもし絵を描く才能があったなら、きっと浜岡賢次と双璧を成す漫画家として成功していただろう。

 涸沼川到着。
 本湖は釣れる条件を割り出すにも時間が掛かるだろうから、と始めから川にある変化を狙うつもりでいた。
 空が白み始める頃に着くつもりでいたが、意外にも道中はスムースに進み、まだ暗闇の時間帯に着いてしまった。
 しかし、そんな時間帯であるにも関わらず、我々の他に三人のアングラーが確認されていた。
 岸沿いはイナッコに満ちていて、今にもボイルが起こりそうな気配。
 可能な範囲で歩いてみたところ、至るところでイナッコは濃厚。
 ちょっとした地形や流れの変化を捉えないことにはキャッチは難しいかもしれない。流していくうちに、手応えからして30~40程度という感じのバイトを得るがバラす。しかし、ここで待っていればそのうち釣れるかと期待する。
 更に歩き、目立った変化は無いかと歩くが、暗いことと強風の影響で発見できるものは特に無く、気になったことといえば下げ潮の時間帯でありながら川は上流側に流れていたことだ。
 やがて空が白み始め、ボイルが頻発するようになる。しかし、シーバスの意識は大量のベートフィッシュにロックされてしまっているのだろう。ルアーには一切の反応が無い。
 すぐにシーは去り、完全に夜が明ける。 
 第一の挑戦は失敗に終わってしまったが、ここで朕は楽和に、新人発掘の礼として使えるレジェンドⅡ語を伝授。
 もし、釣れなかったことの是非を問われたら「トップだってミノーだってさんざん引いたさ!でも釣れなかったんだよ!」とブチキレればいい。そうすれば己のヘボっぷりを誤魔化した気になれるし面目も保った気になれる、と。
 いやいや、釣れてなかったことには変わらないじゃないですか、と至極当然の反応が返ってくるが、他のことに回せる頭があったらいつまで経ってもヘボくはなかろうよ、というところだ。
 なるほど、故にレジェンドといわれるのか、と楽和も納得。

 シー第一ラウンドは失敗に終わったが、次はブラックがある。
 ひとまず北浦に行ってみよう。
 国道51号線を南下。
 途中睡魔に襲われた楽和に代わり、朕が車を運転ということに。車に乗るたびに思う。いつかは燃料噴射装置付きの自殺マシーンに乗って税金泥棒どもを退治したいと。
 また、涸沼、北浦間の移動にはから時間がかかるということが判明し、当初は日中をブラック、夜はシーなどというつもりでいたが、このタイムロスが勿体ないと感じた我々は狙いをブラック一本に絞ることにした。

 ついに北浦の橋を渡る。
 国道51号線のランドマークといえば、ポップアイ・アングラーズサイト51だったが、今やその痕跡すら見えない。
 記憶の中ではまだあの頃が輝いている。
 取り戻せ、あの頃の煌きを!というところだが感傷に浸ってばかりもいられない。
 ポイントを目指して走る。荒れた風景がアナーキー道路みたいで素敵だ。
 「トーカッターに聞いてみろ!オレ様はナイトライダーだ!自由に向かってまっしぐら!!」
 やはりブラック狙いの昂ぶりは、シー狙いの時の比ではない。
 マックスは正義感や優しさから瀕死の男を助けたのではなく、ガソリン欲しさから助けたのだ。

 ポイントが近付いてくる。
 このところの気温低下。台風接近による水面の荒れ。真夏から急に下った感のあるここ数日の気象はバスの動きにどんな影響を与えるのかを考える。
 全体的に溶存酸素量は増加傾向に入ったのだから、バスはベイトが豊富な場所を求め動き出すだろう。波によって、上空というプレッシャーが緩和されることにより、オープンウォーターのシャローにも積極的に入ってくるかもしれない。抜けがあったり、間違っていたりしたら都度修正していけばいい。どんなフィールドでも、どんな対象魚でもやり方は一緒だ。
 トップで釣れるからゲームなのではなく、トップで釣れる状況であると見極め、トップで釣るのがゲームなのだ。
 と、楽和に一席ぶったものの、霞水系の魚影が薄いという印象は朕の中で払拭されていないということも明かした。
 現実に、どこまで筋道を立てて続けられるかは、自分事ながら甚だ疑問であった。

 最初のポイント。
 北浦下流部機場周り。
 先月来た時はポンプが動いていなかったが、今回は動いていた。
 こ、これは!?と、田澤、松尾コンビばりに驚き、かつ期待し、朕はボーマーのシャロークランクとハーフスピンで流してみるが反応は得られない。
 楽和はここで転倒してしまい、手首を負傷。得意の遠投とジャーキングが封じられる。
 薄い魚影が散ってしまっていては拾うのは困難か。あるいは攻め方が間違っているのかもしれない。
 次はテキサスリグで目に付くカバー周りを一舐め。こちらも反応が無い。
 大きな水域のほんの一部をざっくりと探っただけで全てを理解できるものではないが、とりあえずここは我々の釣り方が通用するポイントではなかった。
 以前、北浦は回復傾向にあると聞いていたが、この広大なフィールドにホットなエリアを探り当てるのは困難な気がしてきたことと、楽和の右手が使い物にならなくなってしまったことにより、本湖を捨て、水路、流入河川といった少しでもバスの密度が高そうで遠投の必要も無い場所を攻めていくことにする。

 国道51号線を霞ヶ浦方向へ。
 今日が茨城初上陸の楽和が問う。この先に何があるのか?と。
 スーパープロショップがある!
 でも、特に買うものは無いから今回は行かないけどな。近くにある純輝には行くだろうけど、と朕は答える。
 せっかくここまで来たんだからジムに会いてえっす!という楽和の熱い思い。
 ならば行ってみようか、ミラクルステージへ!

 “この町のメインストリート、わずか数百メートル”な浜省気分で潮来駅前へ。
 潮来釣具センター向かいのサンクスは潰れていて、駐車場に入ろうとしていたところジムの不在が判明。
 肩透かしを食らった気分だが、せっかく来たんだし、と店内へ。
 リッピンラップがあれば買っておこうと思ったが、リッピンラップは無く、何でもバズベート化プロップと今ここで使えそうなブルーバックチャートのレアリスバイブを購入。
 店内にはジムの使用済みルアーが販売されていた。女子高生の使用済み下着じゃねーんだぞ、と軽くツッコミを入れたあとよくよく見てみると、本気で釣る時のハードベイトたちだけあって、やはりラパラが多かった。
 日本ではあまり売れてる印象が無いが「本気で巻くだけで釣りたいのならラパラだよ」と、ハジメさんが語りかけているようだった。
 かくして王様は不在だったものの、関東バスフィッシングの本場の空気を楽和は実感していたようだ。いやいや、黄金時代はこんな程度ではなかったよ、と往時を懐かしむ朕であった。

 それではいよいよ“本気”出すか。
 と、向かった先は夜越川。
 昔むかしのバスバブル時代、夏に良く入った流入河川の一つである。
 護岸沿いにウィードマットが茂り、センコーやスピードワームが重宝した。カみちょうに釣れた覚えは無いが、必ず2、3本は釣れていた記憶がある。
 かつてのように、ワームを使ったスピーディーな釣りはできるのか、と川に入ってみればウィードマットは消滅していた。
 それでも密集するアシ、ルアーのパフォーマンスを妨げる千切れ草のことを考えれば、今でもノーシンカーリグが有効なベイトであることに変わりは無かった。
 下流から釣り上がって行く中、しばらく反応を得られずにいたが、見た目にも水が流れているのがわかるオーバーハングのトンネルからルアーを回収しようと巻いてきたときに追尾する魚が見えバイト。寄せてみたところ40アップ確実のフッコのようなラージマウス。崩れかけた赤土の足場に、取り込みをどうしようかと悩んでいるうちにオートリリース…。
 土手に生い茂るブッシュの前に、思うように川岸には入れず、誰かが作った小道を入っていくことしかできず、ポイントに入ったからといって自在にロッドを振り回せられるスペースも無く、茂みに囲まれた窪地でありながら風が通り抜けるのでノーシンカーリグではキャストが決めづらい。
 そんな困難を乗り越えての挑戦も、ただ一尾の反応を見るだけで終わってしまった。
 しかし、流入河川の水は本湖同様に冷たく感じられたのに、夏のポイントで反応が得られた。夏のポイントが生きてるということか。
 陸っぱりで攻められる夏のポイントは小場所だけにプレッシャーで潰れやすいという短所がある。同じような条件の場所を渡り歩くのが賢明というものだろう、ということで移動決定。

 時、既に昼時。
 朕の持論もまだ確信に至るほどのものではないのでランカーズに寄って話を聞き、ヤンキー麺でも食いながら落ち着いて考えよう、と土浦へ。
 移動の道中、土浦市に至るまで斬新な光景、斬新なビジュアルの人々をよく目にした。土地柄というものなのか。
 何はともあれランカーズ到着。
 しばらく行くことも無いだろうから、と先日通販でウェイクミノーを注文したが、ほとんど間を置かず来店してしまった。
 元々、鮫川に行くつもりだったということを話すと、トラウトやるんじゃなかったら行かなくてもいいよとの仰せ。スモールを狙うなら鬼怒川、シーやりたいなら涸沼、青物狙うなら鹿島港で事足りる、と、朕が抱いていた幻想をばっさりと両断。
 やはり知ってる人に尋ねてみるものだ。
 岸からブラックを狙うなら潮来方面。このところの低気圧でバスは浮き気味。表層をゆっくり巻けるベイトで好釣果とのこと。
 夜越川でやっていたことはあながち間違いでもなかったようだ。
 そういうことなら、と次のポイントに一之瀬川を選択。
 チャターとスーパーフルーク5インチを買った後、宿を案内してもらう。朕が当初宿泊先にしようとしていた健康ランドは潰れてしまったらしい。
 料金重視で案内されたのはビジネスホテルトキワ。バスフィッシングに協力的な店だというのが良い。
 早速チェックインを済ませ、ヤンキー麺へ。前のめりな店と評判の同店。ここも斬新の郷、土浦の代表的な店である。
 朕はヤンキー麺では毎回(今回でまだ三回目だが…)レモンのせラーメンを食べている。

 楽和の右手の調子もだいぶ良くなってきたきたようで一安心。
 一之瀬川に行く途中にも水の動く水路を発見しようとしたが、結局一之瀬川までこれといったものは見つけられなかった。
 尚、境川はバスバブル時代の頃からハイプレッシャーのポイントという印象が刷り込まれていたので最初から候補から外していた。
 一之瀬川では夏のポイントで朕が三回、楽和は一回のバイトを得ていたがいずれもフッキングにまでは至らず。
 たっぷりと時間を掛けて攻めてしまった小場所。メソッド自体は朕はマグナムフィネスワーム、楽和はスーパーフルークをスローに引いてくるという弱いものだったが、それでもプレッシャーで潰してしまったのかもしれない。

 「でも、ポイントは夏にいい場所で間違いないんだ。これで間違ってたらオレ、殺されちゃうよ。絶対そうに違いないんだ!…多分」
 稲川ジューンばりに力説し、霞ヶ浦大橋を渡る。
 ここを渡るのは十数年ぶりになる。あのロコスポーツフィッシングは違う業種の店になっていた。
 ああ、麗しのバスバブル期よ…懐古の念は止まらない。
 目指すは梶無川上流部魚止め。

 川沿いのワイルドロードを突き進み、目的地到着。
 釣れはしなくても、プレッシャーのかかりまくったナイスサイズの姿ぐらいは拝めるだろうと思っていたが甘かった。
 流れ込み付近にモエビは湧いていたが、バスどころかボラ、コイの姿も見えず。
 茂みを切り開く術も気力も無くなっていた我々はここでお手上げ。何で魚が居ないのか考えてみることも出来なかった。ネギ畑からの芳香が食欲を刺激し、更に釣りへの執念を萎えさせる。
 「だらしがねえなあ」とか「おめえは根性がねえ」とレジェンドⅡには罵られるような内容となってしまったが、レジェンドⅡでは魚の姿さえ見ることはできなかっただろう。
 「霞ってこんなに釣れないものなんですか」とショックを隠せない楽和。
 「紅蠍大先生とか、李立がいればもう少しヒントが見えてくるかもしれないけど、オレの力ではこれが精一杯です」と、朕はうなだれた。

 土浦に戻り、宿目の前にある桜川をチャギンスプークで流してみるが、あてどない釣りでは案の定というものであった。

 宿の主人に近くの美味い定食屋兼居酒屋を教えてもらったが、朕はすぐに店名を忘れてしまった。幸い、楽和が覚えていたが、ドルゴスレン・スミヤバザルみたいだな、と言っているうちにまた忘れてしまった。
 その店は炭やといった。
 蓮根の天ぷらが評判が良いと聞いていたので、ビールと一緒に注文。
 お通しのおでんがまた美味で、ちゃんとした料理人がいる飲食店の良さを実感。
 「お疲蓮根、お疲蓮根」と、李立に教えてもらった駄洒落をカマしつつ蓮根の天ぷらを「いただきマンモス」…本当に美味い蓮根に小さな感激を覚えた。
 酒がメインの楽和に対し、朕は料理を爆食いし、釣れてもいないのに一日を満喫できた気分になって初日終了。

 ※マー語
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テーマ : お仕事奮闘記
ジャンル : 就職・お仕事

tag : ルアーフィッシング バスフィッシング シーバスフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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