止め処なき伝説

 6月18日。

 昨晩、施恩は再び多摩川へ行ったようで、更に一本のナマズを追加していた。
 これもマッドウェーバーでの釣果との事。
 バズベートは朕が苦手とするベイトのひとつで、これまでにフッキングが決まりキャッチにまで至った魚は八郎潟のブラック一本限りである。あまりにもフッキングが決まらないので、これまでバズベイトを用いるようなシチュエーションではセンコーを始めとした自重のあるワームをノーシンカーでバジングしてきたほどだ。
 しかし、多摩川のオープンウォーターでナマズを狙うにはフッキング優先のセッティングで良さそうだ。店頭で見かけたら一個ぐらいは買ってもいいかな、という気になる。

 さて、この日は義士との合流予定になっていて、既に調布堰下のポイントに入っているとの報あり。
 朕は「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、レジェンドの言葉を拝借して現地を目指した。

 現地に到着したところ、折りよく義士が現れ、早速詳細を聞く。
 アユは濃いが、アユを追う魚の気配は希薄だという。
 しかし、この日の勝負ポイントは五本松に決めていて、プライムタイムと予測される時間帯までかなりの空きがある。
 それなら打てるところは一通り打っていこうと提案。
 「もしかしたら釣れるかもしれねえじゃねえかよお」というやつだ。
 とはいえ、ただ投げ易いところでルアーローテーションを繰り返しながら時間を潰していくレジェンドスタイルとは一線を画した「もしかしたら」を求める探りである。
 増水と南風、ベイトという要素は満たされていたが、ここは水がミタかった。
 それならば、気温低下の影響を直に受けるシャローフラットではなく、太い流れのあるポイントだ、ということでやや下流の水門ポイントへ移動。

 水門エリア。
 風が水面を波立たせている本流筋ということで、朕はスモールマウスがいれば呆気なく釣れるかもしれないと期待し、スピナーベートで表層を一流し。
 しかし反応は得られず。
 朕にはスモールマウスの足取りを追う能力が無いので、ここに来ていなければ終わりである。
 やがて雨がぱらつきだし、空は一層光量が落ちてきたので、GETT聖衣を着込んだのを機に、予定より早く五本松に入ることにした。

 五本松エリアの魚影は濃かった。
 コイ、アユ、フナ、魚種不明の小魚の群れの他、一匹だけだったが、20センチはあろうかというドジョウが水門のほとんど枯れた流れを上ろうとしているのを見た。
 ネイチブ東京人である義士の話では、昔多摩川には沢山のドジョウがいたとのこと。
 河川改修などといって、年中川のあちこちをほじくりかえしては余計なものをぶちこんでいるため、ドジョウも再生産の場所を失ってきたのだ。
 罪を憎んで人を憎まず…とんでもない。罪を犯しているのは人間なのだから、人を憎んで罪を憎まずだ。
 
 さて実釣のほうはといえば、マーマレット、フェイキードッグ、ジャバロンのローテーションにコイ科の反応は良好。しかしフッキングには至らず。
 何か外しているのだろうが、まあ、勝負は夕方からの回遊ナマズよ、と余裕の構え。
 しかし、夕刻に入り事情が変わる。
 予想通り、ナマズは現れ、朕も義士も反応は得られていたが全てが浅いバイト。ゲストがレジェンドのように「ここが良いって言うから来てみたけどよお、釣れねえじゃねえか!」と不機嫌になることを恐れたためだ。
 結局そんな状況のまま潮止まりを迎えノーフィッシュで終了。
 「藤田!正直スマンかった」と、朕はゲストに詫びた。

 何が失敗の原因か思いつくところはあるが、移動手段が徒歩のみのゲストと、チャリでの長距離移動を嫌う朕には五本松が最も成功を見込めるエリアだったので、この結果もやむなしというところ。
 釣れなかったことを自分より上手の者に笑われたら、レジェンドのように「トップもミノーも散々引いたさ!でも釣れなかったんだよ!」とキレればいいだけのことだ。
 そもそも釣りでキレる人物などレアケース。稀有な人物であったからこそ朕はかの偉大なるヘボ釣り師をレジェンドと呼ぶのだ。
 純粋に釣りを楽しみ、釣れなかったことを悔やんだ我々は「メシなんか食わねえぞ!」とキレはせず、普通にメシを食って解散となった。

 ※ロシアンパブ語 「アナタスミタイ(あなた冷たい)」に語源を発す
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tag : 多摩川 ルアーフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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