メシなんて食ってられるような状況か

 6月6日。

 グランドマスター・秦明とのシーバスフィッシングが控えているこの日。出発までの間をエサ釣りで過ごすことにする。
 もうそろそろ良いのでは、と思いつつも師匠に確認を取ってみる。
 釣れる釣れないは別にしても、そろそろ本腰を入れる頃合だろうとの仰せ。
 ならば、とエサ釣りタックルのみで登戸へ向かう。

 現地には師匠のほか、李立とセニョールの姿があった。
 久しぶりに合うセニョールからは“ドン・キホーテ”の綽号を頂戴した。作品に対する愛が本国の人間に認められたのだ。朕は数年前に遍歴の騎士道精神を放棄してしまったが、かの英雄に敬意を表し、ありがたく受け賜ることにする。さしずめ、ドン・キホーテ・デ・タマガワというところか。
 エサ釣りのほうはというと、エサを入れていきながら反応を見るという状態。
 師匠は小物の寄り具合、成長の度合いをチェックすることに終始していたが、朕は“ガチ”なのでヘラ針を付け、ボトム寄りを打っていた。
 まだ好適な状態にはなっていないようで、結局朕がフナらしき魚をバラすのみで終了。
 あの、カみちょうに釣れる快楽はまだ先であることを知らされるのだった。
 当然のごとく、かつてレジェンドに無駄に鍛えられた李立からは「だらしがねえなあ」という罵声を浴びせられる。
 なあに、エサはダメでもシーバスがあるさ。今回の雨で湾奥の水も改善されて、新しい魚が入ってきてるかもしれないじゃないか、ということで第二ラウンドのシーバスゲームに備え、帰宅を急ぐ。

 今回は5センチ~12センチまでのミノープラグ、トップウォータープラグ、リップレスクランクを用意。ドブ攻略に於ける万全の備えで臨む。
 使い込んで性能、特性を把握してきた、魚が居れば必ずや釣れるだろうという自信のベイトたちだ。
 条件が良くなれば、魚たちは驚くべき早さでポイントに入ってくる…実際のところは定かでないが、これまでのフィールドワークで感じていることだ。
 かくして、秦明、李立と合流しドブを目指す。

 まずはホームレス公園へ。
 一級ポイントに入れなければ思い切ったエリア変更も覚悟、と言いたいところだが、ドブに特化したタックル、すなわちトラウトロッド、バスロッドを用いる我々は9、10フィートクラスのロッドで遠投しなければポイントに届かないようなフィールドは厳しい。よって、ホームレス公園エリアのキャスト可能範囲が十分あることを祈りながらの現地入りであった。
 幸いホームレス公園エリアはこちらの望み通りの状態になっていて、李立が開始早々テクトロで30クラスのセイゴをキャッチ。
 水は濁り気味で、表層に目立ったベイトの動きは無いが、視界の届かないところでは盛んなのかもしれない、と期待したがそうでもなかった。
 キャスティングではまったく反応を得られず、再び李立がテクトロでフッコをキャッチ。この個体は居付きを思わせる特徴を持ち、シーはどうやらそれほど入ってきているわけではないのではないかという不安が生じる。
 トシナロファンの李立は「ハイカットだから釣れた魚だと思うよ」とジョークを飛ばし、更にアカエイを一枚追加。フッキング位置、普段エイが潜むレンジを考えれば食いに来たと見ていいだろう。尚、アカエイはジョニー・バレンタインをも凌ぐ強力な毒針を持っているため、恐れをなした朕は写真も撮らず、エイリアンペンチを使ってそそくさとリリースしてやった。
 アカエイが比較的浅い層で釣れたことにより、このポイントの水が全体的に良くないことが判明。ならばということで、ホームレス公園エリアの本命ポイントへ向かう。
 しかし、こちらの期待とは裏腹に本命ポイントの水も悪かった。どうやら湾奥の水は相変わらず悪いままのようだ。
 一応、ルアーの軌跡に光る夜光虫を追尾するもう一筋の光が見えることもあったので下げに入るまで粘ってみることにする。
 厳しい状況である。
 こんな状況下で一筋の光明を見出したのはグランドマスターだった。
 明暗の境界、カバー絡みのワンスポットでのみ活発なバイトが出ることを発見。ワンダーで一度はバラしてしまったものの、ベイトをスーパースプークJrに替え、30クラスのセイゴをキャッチ。
 このスポットにベイトを届かすことが出来れば、と希望が湧きかけたが後が続かず、脈絡の無いオープンウォーターを泳ぐチャギンスプークJrにワンバイト出ただけだった。
 ここまで水が悪いのか…そういうことなら、下げ潮の効いているうちに少しでも水の良さそうな所へ、ということで進入可能ポイントで最も多摩川に近いケミカルワンドへ移動。

 ポイントに入れる状態にあったので、次こそは本気出す、と朕は虚勢を張る。秦明はここではクロダイ狙いにシフト。
 エントリーしてから早々に朕は反応を得、セイゴをバラし、この一帯はホームレス公園エリアと違って魚の往来が盛んなのか、と期待したがそれまでだった。
 排水口周りはどうなのか、と進んでみれば李立が木っ端セイゴをキャッチしていた。このスポットで三本キャッチしたという。
 木っ端でもいいからとりあえずノーフィッシュを逃れたい朕はレジェンドばりに半ベソ状態で「お前ばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、ポイントを譲ってもらったが無反応に終わる。
 ドブ沿岸部は総じて水が良くない、あるいはシーバスにとって快適ではないということか。
 しかし、クロダイにはそれなりに快適な環境なのか、秦明は2本のキビレをキャッチ。
 シーを捨てキビレ狙いにシフトした李立もバラしはしたもののバイトを得ていた。
 やがて潮の動きが止まったのが見た目にも明らかとなりストップフィッシング。
 
 一人ノーフィッシュの朕は「メシなんか食わねえぞ!」とキレたかったが、美味い中華を蹴ってまで打ち込み続けていたため、そんな冗談を言っているゆとりも無く、ブラック牛丼店に駆け込み、今回の釣りを省みていた…はずが、いつの間にかレジェンドの逸話の数々に脱線しての解散となった。

 ※マー語
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tag : ルアーフィッシング シーバスフィッシング

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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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