八月の瞬噭刹駆

8月14日。

 前日、多摩川でブラックとライギョを釣ったという施恩からの釣果自慢が送られてきた。
 彼奴め、着実にステージを上げている。

 この日、朕と史進は皇居のある会寧府へと旅立っていた。
 開封からの道中、FGノットが組めないという史進に、現場でも結べるだけのスキルを養ってもらうべく、猛特訓を課す。
 史進は、実質一日しゃ釣りに没頭できる時間が取れなかったため、ソルトゲームに的を絞っての挑戦となる。FGを現場で組めなければお話にならない。
 特訓の成果もあって、FGが組めるようになり一安心。

 かくして会寧到着。
 到着するなり、この気候ではライギョは諦めた方がいいと悟る。
 皇居入りしたところ、上皇は史進の来訪をことのほか喜ばれ、接風酒を振舞われておられた。

 8月15日。

 帰省の情緒を味わう間も無く、朝から釣行。麻原彰晃。
 史進にとっては唯一の釣行日。
 必釣の思いと共に気は逸るが、今日は大潮明けの中潮。分が良いとは言い難いタイミングに重なってしまった。

 こちらの最高気温は25℃前後の雨交じりという天候にあったが、多摩川は夏の最中という趣のようだ。
 師匠が釣り上げたスモールマウスの写真がおっちゃんぢょんから送られてくる。

 こちらでの釣行に当たって、当初は夏泊半島、下北も予定していたが、滞在できる時間を考えれば不可能。
 そこで、下げの時間帯を十三湖シーバス、上げの時間帯を津軽海峡ブルーランナーという、無理のない精一杯の釣りプランの実施となる。

 十三湖行きはからペンションが上がった。
 何といっても我々は十三湖漁師の末裔。
 あのマンガ、あのフレーズ、はっきりいって嫌いだが「じっちゃんの名にかけて」というやつである。
 非力な軽自動車で峠道をかっ飛ばし、幾三ハウスを傍目に、太宰の故郷を通り、巡礼予定だったライギョ池を一瞥し、一山越えればそこは十三湊。
 実釣にあたっては、鈴木斉の十三湖攻略動画が非常に役立った。
 東北のルアーフィッシングガイド的なマニュアル本では、釣り方と実績については語られているが、予備知識として本当に押さえておくべき要点は語られていない。また、これまでの体当たり的な探り方では状況を理解し、狙いの一尾を得るまでに、年一回の釣行を何年も繰り返さなければならなかっただろう。
 どこへ行こうと、シーはシーだが、シーがいかに効率よく食事を行うかと考えたとき、ドブや川での経験が、かえって事を複雑化させてしまっていたことに気付く。
 シーは純淡水にも適応可能だが、元来海の魚である。この一帯で最も労せず捕食を行うなら、わざわざ淡水域まで入ってくる必要はない…簡単な事実に気付くまで、朕は無駄に歳月を消費していたのである。
 河口部がシーの実績ポイントたり続ける理由を、鈴木斉と実際にフィールドに立つことによってようやく理解できたという次第。

 その肝を押さえている、隣の釣りウマ風アングラーは一時間弱の間にスズキクラスを三本キャッチしていた。
 史進もこれを理解し、スズキをヒットさせる。
 今回は持って帰って食うことが目的であるため、ぞんざいに扱っても構わんさ、と朕が取り込みを買って出る、が、グリップを口に突っ込んだところ、暴れられフックアウト。
 持ち帰り前提なら、魚体に与えるダメージを顧みず、ナイロン網の磯ダモを使ってもいいんだよな、と、リリース前提の体質が身に染みいていることを悔やんだ。なかなか器用には使い分けられないものである…。

 まだ潮止まりまで時間はあったが、ここでの攻略の肝を理解するまでの間に、塩水が効いている層でアピール可能なベイトのほとんどをロストしてしまっていた我々は、十三湖名物しじみラーメンを食う時間も考え、やむなく十三湖シーバスを諦めることにする。

 地元人気店には行列ができていた。都心でも並ぶのは避けるのに、こんな田舎来てまで並んでられるか、と、観光駐車場にある出店で食うことにした。
 しかし、それは全国各地にありがちな、観光資源にぶら下がる、浅ましい商魂むき出しの代物。
 こんなんだったら、来る途中に寄ったローカルコンビニの手作り弁当を買うべきだったな、いい匂いしてたし…などと話し合っていたが悔後に立たずというものだった。

 後悔しているいとまは無い。
 時間は容赦なく過ぎて行く。
 我々は次なるステージ、義経伝説の残る三厩村へ向かう。
 この県には、かのジーザスの墓もある。義経はこの村から海を渡り、チンギスハンとなり、鎌倉幕府に復讐したという伝説を、朕は信じている。

 三厩に向かう道中、寄り道したくなるようなポイントはいくらでもある。
 ソルトだけでなく、トラウトにも探りを入れたい。ルアーに反応する魚は片っ端から、という気分だ。とても一日だけで満足できる地域ではない。
 しかし、嘘つきとビッチが多数派の世では、こんなことさえ思うに任せない。我々は、浄化の雨がこの不埒な連中を一掃してくれるよう、天地神明に祈りつつ、魅惑の田舎道を進んだ。

 雲海広がる峰々を抜け、三厩は竜飛崎に入る。
 海峡の向こうには、蝦夷地がかすかに見えている。
 日本海と太平洋をつなぐこのボトルネック帯は、表現としておかしい気もするが、“常時安定した変化のあるポイント”といえる。
 矛盾するもの同士の調和が存在するところに恵みが宿る…これは、知の領域に於ける釣りの奥義である。
 知の領域をおろそかにするならば、そこに進化は無く、朕の言う“道”とは程遠いものになってしまう。

 海峡に降り立ち、まずは闇雲のキャスト。
 青物を、メソッドとして釣る術は心得ている。しかし、運、巧拙関係なく釣れるようにするにはまだ手探りが必要な段階に居る朕である。
 
 波立った水面から岸に寄るベイトを見つけるのは難しいが、ラインの水切りに対する反応からある程度はわかる。
 回ってくる魚の接岸時間は短い感触はあったが、ベイトフィッシュに前後する形でバイトが出た。
  フックアップからエンズイグリまで持ち込めたのはワカシ一尾のみだったが…。

 史進は釣れていなかったので、その挙動を見ていたところ、ロッドが軟らかすぎてジグを躍らせられていない様子。そこで、張りとパワーがあり、テーパーデザインも優れているカベラス・プラチナムZと小型メタルジグを渡し、魚種、サイズ問わず、とにかく釣れるものは釣ってしまえという戦術に変更してもらうことにした。

 やがて竜飛崎の岸際からラインの水切りに怯えるベイトの気配が希薄になってきたと感じられてきたのを機に、突堤のすぐ先に海流が生ずる今別町の漁港に移動決定。

 ここは対岸に下北半島、左手側には北海道を望むロケーション。
 朕の最初の師匠ばりに「オレはよぉ、フィールドに立ってルアーをキャストできるだけで満足なんだよ」という言葉が出てくるような土地だ。 
 この漁港で朕はノーバイトに終わったが、史進が小物数粒とワカシを釣った。
 
 既に日没も近い。
 帰省するたびに会寧は腐敗、荒廃グローバル化が進み、どんどん魅力の無い地方都市に成り下がっていくような気がするが、それでも街を離れれば、まだ魅力的な故郷の原風景は残っている。
 堪能するには一日では到底足りない。
 娑婆のしきたりを恨みつつ、台場でタックルの塩落しを済ませ、皇居への帰路に就いた。

 8月17日。

 昨日史進は開封に戻った。
 朕も、帰りの準備や諸々のことを考えれば、今日と明日しか釣りに没頭できる時間は残されていない。
 ライギョは既に諦めた。楊林との再会も来年に持ち越しだ。

 夏休み期間とあって、登戸には鉄のナマ師たちが集まっているようだ。
 朕不在の間にも、景気の良い奏上文が送られてきていた。

 朕は、こちらにいる間はソルトに専念しようと、そふえ釣具にメタルジグの補充に行ったところ、ギャロップは置いておらず、店員から聞いた青物情報も芳しいものではなかった。ダメ押しとばかりにリッジを物色したところディープランナーはあったものの、お目当ての90Fはひとつも無かった。
 ますへいはどうか、と覗いてみたが、ここにもギャロップは無く、リーダー用フロロカーボンラインを買うに止める。

 NO USE FOR A NAME、WRONG SCALE、LAGWAGON、STRUNG OUTといった面々は長年親しんだ移動時の友だ。
 今回は三厩までは行かず、今別で勝負をかけることにした。
 正解かどうかは別にして、朕は津軽海峡がブリ族生息の基点であると考え、海峡の海流の影響下にあるゾーンを打てれば良いと思うに至り、ならばから遠い竜飛崎に固執する必要も無いと判断したのだ。

 今別到着。
 高野崎。
 足場の良い磯場が広がる海峡に面した急深の岬。県内ではちょっとした観光スポットで、イカ焼き屋、キャンプ場施設もあり、訪れる人も少ない、便利な場所である。
 とはいえ、ポイントまではなから歩かなければならないのだが。

 海峡に張り出した岩場はフグのチェイスしゃ見られず、また、やや沖に張り出した岩礁がリトリーブコースを制限してしまうことが判明。
 より広範囲を探れる場所を求めて、隣の磯場まで移動。
 キャストしてみたところ、やや沖合に、ラインの水切りに怯えるベイトの群れを捉える。これに確信を得て、キャストを続けたところ、イナダ、ワカシのストライクを得るがどちらも足元でバレる。
 その後、ベイトの気配が遠のき、次の回遊を期待し粘るべきか、次のポイントへ移動すべきか決めかねていたところ、思わぬ事態が発生。
 それは標準語を操る、白豚のごときカップルだった。あろうことか、朕が釣りをしているすぐ近くで海に飛び込んでいた。高密度の脂肪の塊が、1メートル以上の高さから水に落ちる時のインパクトを想像してみて欲しい。
 心臓麻痺で死んでくれればありがたかったが、面皮同様、厚い脂肪を蓄えているだろうから、急激な温度変化のショックにも耐えられるのだろう。
 辺境の地でよそ者の妨害を受けるとは、と気分になったがが、ポイント変更の良いきっかっけにはなった。

 かつてロックフィッシュ狙いで来たことのある堤防へ移動。夏にもロックフィッシュが釣れていたぐらいだから水質が良いエリアなのだろう。
 と、駐車スペースには足立ナンバーのクルマ。
 げ、また豚どもの眷属か…。
 ポイントに向かったところ、テトラの中を打っているルアーマン。
 豚ではなく人だった。彼もまた、こちらの出身で開封在住の、朕と立場を同じくする者だった。
 このポイントは岸寄りにサヨリが濃く、すべてワカシクラスだったが、青物も度々回ってきていた。
 何度かバラしの憂き目を見たが食うには手頃な魚はキャッチできた。
 同郷のルアーマンからは食べごろサイズのメバルをかたじけのうし、盛況とはいえないまでも、楽しい釣りをすることが出来た。

 8月18日。

 今日も再び今別町へ。
 こっちに来てまで、全国チェーンの店に金を落とすのは本意ではなかったが、地元釣具店には置いていないギャロップが置いてあったのはやはりJSYだった。
 また、おっちゃんぢょんいうところのジャネット・ジャクソンポロリを防ぐため、釣堀用のランディングネットも購入。
 今回は、せっかく魚影の濃いところに来ているのだから数釣りも楽しもうと小型メタルジグ用のタックルも準備して向かった。

 この漁港は初めて入る場所。
 陸奥湾と津軽海峡に面し、地磯も混じる素晴らしいロケーション。釣りがし易い上に、変化にも富む好ポイントだった。
 港内には豆アジの群れ。外海に面するテトラ帯周辺にはサヨリが回ってきている。
 まずは小物タックルで、粒サイズのアイナメ、メバルや、アナハゼを釣り二桁を達成した後、青物狙いに移行。
 ワカシクラスを一度掛けるが、ポロリに備えた釣堀ネットも虚しく足元バラし…。
 ここは粘ればまた次が来ると信じ、キャストを続けていたがなかなか来ない。
 何でだ?と改めて一帯を見て回ったところ、豆アジは消え、サヨリの規模も小さくなっている。だからといってこのポイントの可能性は無くなったと判断するのは早計だ。
 しばらく様子を見守ろうとキャストを続けていたところ、劇的な変化が起こる。
 それは、カモメかウミネコの類の群れが一斉に陸奥湾方向へ飛んでいくという現象だ。
 この種の鳥の動きを素直に信じてはいけないのだが、少しでも可能性があるなら、ということで鳥の飛んでいった方向を目指すことにした。
 おそらく、少し離れたところにある、突堤際に海流が生ずるあの漁港周りだろうと予測して。

 と、着いてみたところ、ここに鳥の姿は無かった。
 陸奥湾の更に奥に行ってしまったのかもしれない。しかし、今から新しいポイントを探っている時間は無いし、とりあえず突堤際に海流は出ているし、沖にボイルは見えている。
 しかし、ボイルは朕のキャスト可能な距離にまで来ることはなく、ならば良型のロックフィッシュでも、とボトム付近を意識してリトリーブしたところギャロップをロスト。
 結局どうにもならず、日没を迎えてしまった。

 今年の遠征は終わった。
 ノーフィッシュは無かったが、エキサイティングなシーンに出会えることなく、来る時期を誤ったという悔恨だけが残った。

 8月19日。

 開封に戻る準備をしつつ、娑婆での生活が破綻する前に集めていたX-MENを再読する。
 ローガンやジュビリーのキャラクターは立っているが、Xマンたちの語るヒューマニズムに、どうにもならない欺瞞、おためごかし的なものが感じられ、マグニートーの方が人として正しいのではないかと思ってしまった。
 フラットスキャンの朕も、やがてアバロンに招き入れられる日が来ることを夢見て過ごしていたところ、鉄のナマ師たちの奮戦ぶりが伝えらて来る。
 アバロンには行けなくとも、あの一座に加わることはできるのだ。

 8月20日。

 今年は遂に行けなかった夏泊半島を惜しみながら帰路に就く。
 来年はもっと周到に行こう、と誓い、短い帰省の時は終わった。
 嘘つき、ビッチどもの害毒に冒された地方都市から、悪人の支配する、嘘つき、ビッチどもの巣窟へ。

 帰宅後、早々にタックルの準備を済ませ、多摩川に向かった。
 川を一望したところ、相変わらず一級ポイントは中野島堰下一帯にあると感じられた。
 とりあえずのコイが釣れ、ノーフィッシュだけは逃れられた。

 日没。
 しかし、今日は長潮である。
 少ないながらもバイトは出るが、案の定フッキングにまでは至らず。

 やがて、李立、施恩、武松が合流。
 彼らもまた「釣れましたか?」「アタリはあるよ」から先へは進めず。皆、長潮の現実の前にうなだれていたが、施恩はビッグバドのバイト誘発力に感銘を受け、一人新しい扉が開かれていたようだった。

 8月21日。

 先日送ったタックルが届く日だ。
 草庵にはまた一本ロッドが増えることになった。
 この度の帰省の折、改めてハートランドZ・601MHFBを吟味してみたところ、ワームだけでなく様々なメソッドに対応可能であると思われたので帰りの便に加えたのだ。

 荷物が到着し、ハートランドにカルカッタ200XTを載せる。
 DのロッドにSのリール…懐かしのバスバブル期、村上晴彦的黄金のコンビネーションともいえる組み合わせである。
 まさか『キリン』の世界の感覚を、釣りの世界でも味わうことができようとは、と喜ぶ。

 '90年代バスバブルコンビネーションにゴキゲンの朕は、今日も中野島堰下エリアに向かった。
 爺の『吟じられた遊び』をBGMに河原を進みポイント到着。
 至る所にベイトフィッシュが見られ、コイの動きも盛ん。この中の一尾ぐらいは間違いを犯す個体があるだろう、と一流ししたところ、ルアーを追うコイが現れキャッチ成功。
 しばらくして、李立、施恩到着。
 どうやら施恩は、ビッグバドチューン地獄に陥りそうな気配。この日はナマズとブラックをバラしていた。
 一方、ナマズの通り道を的確に捉えた李立は、しっかりと本命を二尾キャッチ。
 朕はというと狙いが散漫になり、ナマズはノーバイト。

 かくして、あまりにも短い夏休みは終わった。
 浄化の雨が降るまで、明日から再び娑婆の毒気に身を晒さなければならなくなる。
 ぁあ、ため息ロカビリーだぜ…。

 ※マー語
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ジャンル : 就職・お仕事

tag : ルアーフィッシング 多摩川 青森県

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言葉にできないってこういうことです。

絶対に知っておいて損はないはずです。
母子家庭で7歳の娘がいて、何も買ってあげられなかったんです。
もっとはやくこれを知っていれば…。
ただでお金をもらえてしまって…本当に今でも信じられません。
すぐにお金持ちになれます。
冷やかしじゃない人だけにすごいことを教えます。
知りたい人は、banana_ayako@yahoo.co.jpにメールしてください。
連絡してくれた人だけに、驚愕の秘密を教えます。
プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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