FC2ブログ

くそでぶん

 10月21日。

 昨日はハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気のため、当初予定していた海ドブ秘部への突入を取りやめることになってしまった。
 金も無ければ女も居ない負け組の朕にはネットゲームをしながら、母親が病気で貧乏している妙齢の女と知り合う機会も無い。ましてやその女が急遽金が要るからといって、即金に替えられるようなステラなど持っているはずも無く、修羅な義侠心を発揮するなどとうてい不可能だ。

 迎えたこの日は、午後から公孫戍が空くとのことだったので、台風後の登戸一帯の様子を見ながら野史の編纂をしようということになった。
 鉄の自転車はいかにも鈍重で、軽快には程遠い。だからといってむちむちコスチュームや短パンモモヒキスタイルで乗るような高級自転車が欲しいとはまったく思わない。
 かくして貧乏長屋を出る。

 登戸に行く前に五本松、旧フェラガモ水路に寄る。 
 と、川岸に下りてみれば多数のヘラ師。入り込める余地は無い。ここは諦めるしかなさそうだ。

 登戸に向かいながら川原を眺めてみれば、あちこちが抉られており、かつて行われた大規模河川工事の際に埋め込まれた構造物が露出するようになっていた。
 これを補修するためにまた馬鹿げた大規模工事が行われるのだろうか。
 おのずから然るべきものをわざわざぶっ壊して得られる経済効果とはそれほど甘美なものなのだろうか。
 他人の犠牲の上に成り立つ繁栄など、尊いどころか恥ずべきもののはずである。
 このことをきっかけに行き場の無い怒りがふつふつと湧いてくるのであった。

 降臨跡。
 狸島、旧第一ワンド周りに魚が居るのは見えるが、ここは大規模自然破壊事業が行われる以前のような魚たちの強力なシェルターではなくなっている。
 他の場所はただ流れが抜けているだけなので、適当なベイトを投げて巻きながら拾っていくような釣りは通用しない。
 水色は良くないが、これしゃ無いだろう、とリーダーを改めて長めに取り、カバーを打っていくことにする。
 
 公孫戍到着。
 朕は辞を低くして尋ねた。
 「戍子じゅし、我らが君は相変わらずおかんむりでしょうか」
 公孫戍は憚ることなく
 「章子しょうしは常に戴冠の君似である」
 といった。
 夏侯章に近い臣がそう言うのだから間違いない。
 朕は内なる徳を湛える者の奥深さを知ると同時に、世に王だの首長を名乗る者は数多く在れども、天子はただ一人だと知るのだった。
 聖人を称える詞は淀みなく出てくるが、降臨跡の感触はやはり良くない。
 茂みの削ぎ取られた狸島。ポンスキーたちがどうなったのかは知らない。餌付けの味が忘れられず、再び現れるようになるのだろうか。どうでもよいことではあるが…。
 カバーを打とうが、巻き返しを打とうが反応は得られない。
 激変から戻らない環境、白濁り。
 多分、今日は釣れない。
 それならば他の場所の様子だけでも見ておこうということで移動する。

 草人墓場から韓流ポイントまでを歩く。
 この見事な変貌振りを見て、復旧工事など余計なことをせず、このまま自然の造化に任せておいた方が良かろうと思う朕だったが、社会に巣食う悪人や嘘つきは、今こそ上納されて溜まっている甘い汁をすする時だと歓喜の声を上げているに違いない。
 多くの人間は、自分たちが生きる根本の資よりも、虚構の資を、他人を犠牲にしてまで大切にするものである。
 現状のまま川が落ち着いてくれるのが理想的だが、人々の強欲がそれを許さないだろう。
 要らぬ世話ばかり焼くくせに、本当に助けが必要な時には掌を返すのが人の世だ。

 ここでも魚が活性化する要素は見て取れず、かといって他所へ移動したとて見込みは無さそうなので、修羅のように泣きながらでも「もしかしたら釣れるかもしれねえじゃねえかよお!」と、日没を待つより無かった。
 結局、どちらも何も得られないまま日没を迎え、伝説やその眷属について論じ合いながら土手道を戻ることになった。
 小田急下の川岸に怪しい人影を見る。
 「戍子、あれなるはかつての猫肉骨粉劇場主宰者ではないでしょうか」
 「今日は真の守人、グランマが来てたのだぞ。追放者の如き似非が居られるはずもなかろう」
 それもそうだな、ということでしゃくれる内実や、狸島に暗躍する影、ウーバーとモギーについて一通り論じ終え、飯でも食いに行こうかと再び歩き出したところ、先ほど川原に居た怪しき人影がこちらに向かってきた。
 驚くべきことにこの人影の正体はその追放者だった。
 朕と公孫戍は驚きと共ににこやかに凝視していたが、かつての主宰者は何事も無いかのように、しかし足早に通り過ぎて行ってしまった。
 二年前まではこちらがまったく興味も無いのに狎れ狎れしく話しかけてきてどうでもいい自慢話をするほどだったが、今や無言の「オレは負けてねえ」アピールをするようにまでなっている。
 勝手に大人同士の心の戦いを仕掛け、勝手に敗れていった者がここにも一人。

 かくして我々は日高屋だか後楽苑かなんかで、ジャンクフードや負けてねえ敗者を肴におビールを飲んでこの日を終えるのだった。

 ※マー語


スポンサーサイト



テーマ : プロレス
ジャンル : スポーツ

tag : 多摩川 ルアーフィッシング

プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

最新記事
月別アーカイブ
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QRコード