登戸明星賛歌

 3月22日。

 引き続き、伝説三輪氏言うところの「低レベルな競争」に挑む。
 神器と奇行をもって鳴らした修羅も、今ではその勇名を歴史に刻むのみ。だからといって滅んでしまったわけではない。現に、元年初頭に、お忍びに近い形であったとはいえ降臨なされたのだ。
 川辺の民は久しく王の帰還を待ち望んでいることも人伝に聞いている。

 この日、公孫戍こうそんじゅが所用の合間を縫って来られるかもしれないとの報を受けたが、朕は例によってハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気のため、時間を合わせることができず、一寝入りしてからの出発となった。

 ポイント入りしてみたところ、童威と蔡沢が居た。
 「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 お約束の挨拶をし、様子を尋ねれば「オレが考え無しにやってると思うか?」と、これまたお約束で返ってくる。
 現在は澄みの入った水だが、昼頃まではドブ臭漂う濁りが入っていたとのこと。これは良くない条件だが、風がシャローフラットに向いている。
 「もしかしたら釣れるかもしれじゃねえかよお!」
 伝説三輪氏のごとき強がりで、朕はシャローフラットの表層寄りを、童威と蔡沢は付近のカバー周りを、と攻めていたがどちらも反応は得られない。
 急激な下降をもたらした昨日の雨と、長潮の影響ということも無関係ではなかろう。童威が超ペケニシモなスモールマウスをキャッチするのみに止まる。
 この魚がそれなりのサイズであったなら次に繋がる想像をかきたててくれるが、いわゆる“嘘つきのバス”である。
 策も浮かばず悩んでいると、蔡沢が「“冒険心”を出しますか」といって堰下エリアにマルタの姿を求めに行った。

 日没後、「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、伝説三輪式の掛け声が背後から聞こえてくる。
 今日はもう来られないかと思われていた公孫戍だった。
 タックルは持ってきていないので童威のスピニングタックルを借りての釣り。
 「ロッドってのはよお、釣り人にとって侍の刀とおんなじなんだ。貸せるようなもんじゃねえのよ」と、最初は伝説式で断るのが作法というものだが、まったくこの節の若い者は礼儀というものを知らない。あっさりとロッドを他人に預けてしまった。
 ほどなくして公孫戍がバイトを捉える。
 寄せてみれば30クラスのスモールマウスだ。
 日頃、童威が「みんな公孫さんは上手い上手いっていうけどよお、あの人ほんとうに上手えかあ?」と、伝説三輪的疑惑を口にしていただけに、ここは是非キャッチしておきたいところ。
 しかし、手元まで寄せておきながら痛恨のバラし。
 もちろん「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」である。

 蔡沢が戻ってくる。
 マルタはまだまだな感じだったが、ニゴイが一匹釣れたとのこと。
 「今日のオレの仕事は終了」と、伝説三輪式をキメる。
 「何だ、釣れなかったのか。だらしがねえなあ」と伝説三輪してやろうと待ち構えていた朕は肩透かしを食らった恰好だ。
 とりあえずとはいえ、ノーフィッシュを回避できたことにより安心して帰れる、と撤退していった。

 一方、朕はあまりの気配のなさに「多摩川はもう飽きた」と、レジェンドⅡのように毒づき、公孫戍は肩が限界に来たと訴える。
 童威はメカニカルブレーキの蓋が無い状態でキャストをしており、案の定トラブルの連続であった。
 見かねた朕は、次回、今後使う予定の無いタトゥラをやろうかと提案。
 躊躇する童威に対し、朕は伝説三輪式で貸すのだから心配は無用と答えた。
 すなわち、自分より明らかに上手くなってきたと感じられ憎らしくなってきたら、弟が釣りを再開するからという口実を設け、脅しも交えつつ自宅まで届けさせようとする、三輪氏が李立に用いた方式である。
 そういうことならば、と童威は快諾。
 キャスティングリールの問題が解決することによって、安心した童威はここで脱力状態になる。
 ここでこの日の釣りは終了となった。
 
 平日にこの面子が揃うのは珍しい。
 釣れていない朕と公孫戍は「メシなんて食ってられるような状況か?」と凄むべき場面ではあったが「釣れなくても関係ありましぇ~ん」と伝説三輪氏のように開き直り(オリジナルはあくまで開き直ったフリだけであったが…)、まだ夕食前だという夏侯章を呼び出し、会食の運びとなった。
 禁欲生活を強いられていた時代に失われたアルコール耐性が、近頃やや回復してきた感があるので、おビールでも飲みたい気分になるが、登戸・狛江間の原付押し歩きは厳しすぎる。
 伝説諸氏を肴に酒を飲むのは格別に美味かろうが、ここはおかずに止め飯を食うことにした。
 そして、いつの日か伝説三輪氏とアナザーレジェンド氏が相見える時に、スペシャルリングサイドで観戦できることを夢見ての解散となった。

 
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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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