技巧伝承

 5月29日。

 日曜日の釣行機会。
 休日といえば、登戸名物の降臨を期待してしまうもの。これまで吐いてきた威勢の良い大言壮語が妄言でなかったことを示す日が必ずや来ると信じたい。
 しかし、朕はこの日、伝説再拝の夢を捨て、夕刻の出発に備えた。
 レジェンドⅡの居ない登戸はどこか味気なく、また、今あのエリアは釣果を得るための諸要素乏しいため、強いて行く気にもならず、梅雨時期が近いということもあり、五本松エリアのナマズの動静を把握しておくべきだろう、ということで五本松エリアに行くことに決めていた。

 一寝入りして養わねば、と臥所に就こうとしていたところ、博多に行っているというヂョイ兄いより釣果写真が届く。
 例によって自作ミノーでの釣果である。
 シーなどしばらく縁の無い魚。羨ましくないわけはないのだが、ここは「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」という、レジェンドなお約束で返す。
 眠気も手伝い、伝説三輪氏のようにリアル涙目の朕だった。

 かくして夕刻五本松へ。
 さすが休日である。正解をやり尽くしてきたベテランを飽きさせた多摩川ではあるが、周囲を見渡せば川のあちこちに釣り人が居る。何によって釣れたり釣れなかったりするのかを理に則って知ろうとする知性があるならば、釣れないからといって飽きるようなフィールドでもない。
 あちこちを探るようなことはせず、この日はいきなり狙いをつけたポイントに入ることにする。
 ふらりと上流側から見知った顔がやって来る。
 開封府からはるばる州境の漆園をゆるりと西東、といった風情。遊説の方士ともいうべき蔡沢さいたくであった。
 この日は先日のヘア流出事件の核心に切り込み、潮汐にまつわるあれこれについて論じ合う。レジェンドⅠのいう「バカだなあ、道具じゃねえんだよ」の世界である。 
 それでは、と散会し、朕は時が来るのを待った。
 ポイントを観察しているうちにアユが塊になっていく様が目立つようになっていく。コイの出入りが盛んになってきたからなのか、近くに捕食者がいるからなのか。彼らに知性は無い。よって、彼らの行動プログラムに作用する現象が起きていることは確かである。
 何はともあれ、吹きつける風に軀が冷やされ、朕はご不浄に立たれようと移動したところ、流れが通り抜ける超浅瀬にナマズの姿を発見。
 不浄のことも忘れ誘いをかけたところ、フラットラップ8にバイト。しかしフッキングを決められず、ひとつの可能性を潰してしまった。
 ここは連日プレッシャーを与えているにもかかわらず、それでも来ずにはいられない、ナマズにとって魅力的な条件のある場所。しばらく間を置いて次の個体が来るのを待つ。

 蔡沢が現れる。
 下流側の、流芯とフラットが接するポイントでスプーンにバイトがあったとのこと。おそらくナマズではないかという。
 しかし、そろそろ帰らなければならないという。
 「おめえはそれで悔しくねえのか?」と、伝説三輪氏なら言うだろうが、そこまでガチな人は滅多に居ない。朕は「バイなら」といって蔡沢を見送った。

 今まで釣れなかったのは本気を出していなかったから。ネタを楽しむぐらいの余裕が無ければならない。何せオレはおめえらと違ってガチじゃねえのだから。しかし、そう言っている間にも周りは次々に釣っていく。気付けば釣れてないのは自分だけ。新川で鍛えた何とやらで力んでみても、自然の摂理に考えが及ばないので釣れる訳がない。オレが考え無しにやっていると思うか?と反発してみても、ただタックルをどうこうしているだけなので結果は知れている。結局、僻んでみたり、負け惜しみを言ってみたり…。
 そんなレジェンドな失敗を犯さないためにも、現在の環境を知ることに努めた。
 ここに次の個体群が現れるという保障は無い。優良なポイント、条件の揃ったポイントというのは実は思い込みに過ぎないのかもしれない。
 キャストは極端に抑えつつも釣りはしていたというところか。
 そして遂に次の個体がやってきた。
 オーバーハングしたブッシュ伝いに移動しているので、スピナーベートをブッシュ際に打ち込んでいく。
 毎回狙いのスポットにベイトを落とせるほど朕のキャスト精度は高くないが、今回は上手く決まり、本命魚キャツチ成功。
 そして、実は何とか釣ることが出来たという事実に箔をつけるため、その偶然性を覆い隠すため、「今日のオレの仕事は終了」とレジェンド節をぶって納竿とした。
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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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