突き落としてやろうか×2

 5月26日。

 釣るために必要なあれやこれを実は知らなくても“ネタ”といって、あからさまに外していることをやっていれば例えノーフィッシュに終わっても面目は立ち、己のヘボさを隠すことができる。あとは他人に釣られてしまった時に、実は釣りたくてしょうがなかったという本音が露呈して、不機嫌になったり、キレたりしないように気をつけるだけだ。
 潮回りを味方に付けられず、今はこうすれば釣れるという法則的なものもぼやけている朕は、上記の手法に着目し、ビッグベイトタックルで臨むことにした。
 奇しくも、施恩もまたこの技巧に着目していたようで、今日はドムドライバーでビッグベイトをやるという。

 まずは登戸へ。ということで現地に到着すれば、施恩と師匠が居た。
 一帯の水はどんよりとしていて、いかにもアクティブな魚が避けてしまいそうな雰囲気。
 李俊はといえば、水の動く場所を打てる中州へ渡っていた。
 レジェンドには“冒険心が無え”“根性が無え”“視野が狭い”などと罵られていた我々は、当然中洲には渡れず、常に水が動いているエリアを求め、陸地伝いに堰下エリアへ向かった。

 堰下エリアには、小物釣り師とルアーマンの先客あり。
 あいさつがてら、ルアーマンの話を聞いてみたところ、ナマズを一本キャッチし、一本を手元バラししてしまったとのこと。
 ちなみに、と見せてもらったヒットルアーは、やっぱりか、のフラットラップ。
 朕は瀬の落ち込み周辺を打てる位置に立ち、キャストを開始。特に釣れることを期待しているわけでもなく、かといって捨てているわけでもなくという具合で、手持ちのベイトの中では最も応用範囲の広い、シングルブレード仕様のSRフラッシュを選択。
 日が暮れるまではどうにもならないだろうな、と漫然なキャストを覚悟していたところに事件発生。
 尾びれの形が特徴的な60センチ以上はあろうかという魚体が視界に入る。
 今狙ったからといってどうにかなるものではないという意識はあったが、気付けば下流側の施恩に電話していた。
 「シーバス居るぞ!」
 当然駆けつけてくる。
 光量豊富なクリアウォーターのシャロー。
 流れの作りが多少のカバー効果になるとはいえ、ローライト下でのナマズへのアピールに重きを置いたビッグベイトタックルである。狙ったところで無駄であろう。
 よしんば、シーバスをも意識したタックルで備えていようと、ここまで周囲の状況がよく見え、相手が単独の個体となれば、このプレッシャーを打ち破ることはできまい。
 本命はナマズといいながら、バスという響きについ反応してしまう悲しき性…。
 李立がこれから来るというので状況を説明。すぐ行く、とのこと。

 気付けば李立の他に、李立のアドバイスによって初ナマズを手にしたルアーマンの姿もあった。
 師匠撤退後、我々はこの先のプランについて話し合う。
 釣れもしないシーバスに踊らされてしまったことを反省し、ここで粘るぐらいなら、今年はまだ踏み入れていない宇奈根川崎側の様子を見に行った方が、今後のプラスになるのではないかという結論に達し移動。

 今年初の宇奈根川崎側。
 一帯のおおまかなプロフィールは変わっていないが、ポイントごとに細かな変容はある。力を持つようになった部分、強さを失った要素、などなど。また、実際に探りを入れることによって初めて気付くものもある。
 それぞれに散り、一帯を流して行く。

 やがて、ベイト豊富なシャローフラットに隣接する流芯付近で李立がナマズを掛け損ねるが、これは来ている、と続けてキャストしていたところ岸寄りで炸裂音の伴うバイト。
 寄せてみれば何とライギョ。
 これがコイやニゴイなら落胆だが、ードでもライギョなら喜びは大きい。
 無意識だったという、ライギョへの誘いも見事だった。寄せてくるまで誰もライギョだとは思っていなかったのだから。

 ナマズのバイト、ライギョという釣果。
 宇奈根へ来て正解だったか、というところだが、反応は盛んというわけではない。また、闇雲に打って手数を増やしたからといって良好な結果を得られるものでもない。
 そんな手探りの中、李立は確信めいた傾向を捉えていたようだ。
 そして、その言の通り本命キャッチに成功。
 朕と施恩はビッグベイト仕様で来てはいたが、ネタだったから釣れなかったというレジェンド的な恥ずかしいヘボ隠しはせず、それこそ“本気”で臨んでいた。釣るために必要な備えもしてきていた、が、結局は釣ることができなかった。
 仕方が無いので、朕は「今回は宇奈根でビッグベイトが釣れるかの実験じゃ」と言い、施恩は「正解はお前に任せてた」と言って、面目を保ったふりをし、ひとつ頭の抜けた李立の技量を褒め讃え「突き落としてやろうか」という言葉を贈った。

 ※マー語
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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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