五人目の達成者

 6月20日。
 
 多摩川ナマ師レギュレーションは鉄のごとく厳格である。
 釣り上げ写真に収めれば、とりあえず一としてカウントされるが、そこに至るまでいかに偶然性を排して得られたかというプロセスを重要視する。
 世間では一のものに九の虚を乗せ、付加価値などと称し尊重されているが、こちらの鉄のレギュレーションでは一のものには一の価値しかなく、十のものは十の実が無ければ十として認めないのだ。
 「いつ、どこで、どんなルアーで、どんなメソッドで、こんな魚が釣れました」という釣果にはまるで価値が無い。
 ジャンキーたちの戒律はかくも厳格である。

 そんな鋼のジャンキーどもが、好適なシーズンを迎えたとなれば釣ってしまうのは当然ともいえる。
 バギーのおっちゃんはフナとナマズを。
 今日も奇手を捨て、オーソドックスを行い、堅に傾いていたようである。

 一方、李立はまごうことなき必殺のナマ師。 
 自然観察者としてのスキルをいかんなく発揮していた。

 6月22日。

 思考浅きゆえ不調の続いていた穆春、遂に得がたき偶然を引き寄せる。

 運頼みというレベルから脱することはまだできていないが、引き運の強さだけは並外れている。テクニック解説も併せて語られていたが、今回は雨後の大潮というタイミングを捉えられたという点がキーだった。
 何はともあれ穆春は成し遂げた。
 汽水を遮る堰を越えてやってきた、純淡水域シーバスを得るという快挙を。
 晴れて達成者の一人に名を列ねるという大功を成す。
 過去の実績ポイントということでこのエリアに固執してきた甲斐もあったというところだろう。

 それはさておき、鉄のレギュレーションに従うゲームフィッシャーたちはというと…。

 プロレスラー的な特性のぢょん、この日はエサ釣りでスモールマウスの仔魚を得ていた。

 これを見て、「釣ったら殺せ」などという輩こそ死に値する。こういう連中はビジターのエサにでもなってほしいものだ。

 そして、オンリー・ガチな格闘家的特性の李立、秦明はというと…。

 チャンプァの左ミドルばりにボイル打ちとサイトを決めた李立。

 スモールマウスとナマズを得る。
 
 秦明はというと、グレイシー打倒を果たしつつも、モンゴリアンチョップを繰り出す桜庭のような茶目っ気を披露。

 本命、ナマズを得た後に、チャグOでマルタを釣るという怪挙。

 6月23日。

 昨年までは「御髯は結構ざます。ミーはフィネスでスモールざます」と気取りつつ、こっそりナマズを釣る、隠れナマ師だったバギーのおっちゃん、ことぢょん。
 しかし、スモールマウスのあまりにも薄い魚影という現実を散々思い知り、憚ることなくナマズを狙う必殺のナマ師と化している。
 見る目の無いヘボ釣り師連中には、ただの変なおっちゃんと思われている節があるようだが、実はこのおっちゃん、新川という特殊フィールドで観察眼、魚を釣る腕をみっちり鍛えたれっきとした釣りウマ。
 得意は奇手だが、しっかり対象を見据えればこのように釣ってしまうのである。

 また、今でこそ知り合い連中は当然のようにローテーションのひとつとして使っているJOY WORKS BAITだが、工芸品ではなく釣具であることを証明したのもこの人である。

 と、ナマズを得たは良いが、相変わらずシーバスへの固執は捨てきれずにいたようで、執拗に狙い、深夜まで付き合わされた李立は半泣きの状態に…。
 今年は李立が釣り、先日穆春にも釣られてしまった純淡水域シーバス。
 早い段階からシーバスを意識していたおっちゃんにしてみれば、後輩二人に先を越されてしまったことが悔しくてならないのだろう。

 丸子堰より下、あるいは海まで降れば普通に釣れるシーバス。しかし、純淡水域となるとまるで価値が違う、値千金の一尾となる。
 故に手にした時の感動、快楽も格別なのだ。

 ラージマウスさえ諦めれば、実に攻略のし甲斐がある優れたゲームフィールド多摩川での、臣下たちの奮闘振りを、連日地下から指をくわえて眺めているだけの朕であった。
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Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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