前略、橋の上から

 9月18日。

 雨が上がり、熱暑がやってくる。
 のっぺりとしてきて以降の多摩川は、流れが平常に戻るのが早くなった。
 側溝としては上出来だが、生命を育む天然河川として好ましいことではない。

 宇奈根の様子を見に行ってみたところ、アユ釣り師らしき人は何人か居たが、水位水勢は昨日と変わらず。
 キャストすることなく韓流ポイントへ移動した。

 韓流ポイント。
 堰上の一帯の水位はほぼ平常通りになっているが、堰を開放していながらこの水位ということは、まだ全体の流量は覆いのだろう。
 普段はルアーを通して感じることの出来る流れも、今日は目に見えてわかるようになっている。
 水が動いているというのは良いことだが、濁りの質が良くなかった。
 泥濁りではなく、細かい粒子が溶け込んでいるかのような濁りだ。
 それでも時間はじゅうぶんにあるのでじっくり探っていけば、どこか良い場所を見つけられるはず、とキャストを続ける。

 やがて、公孫戍と夏侯章がやって来る。
 朕は布教活動の一環として二人にスティッコーを配布したところ、彼らは過分な日本円を差し出してきた。
 そういうつもりで渡しているのではないと、頑なに固辞する朕であったが、どうしてもというので断りきれず、遂に受け取ることとなった。
 しばらくすると、公孫戍がバスを掛けていたが「アタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!」に止まる。

 突如、夏侯章が落水し、脛に怪我を負った。
 朕と公孫戍はすぐさま駆け寄り「我らが主君を陥れるとは不埒な輩。なんじはその覆いとなっていた枝を伐れ、わしはその岩を斬る」「おう!」と、報復に出ようとした。
 ふと夏侯章を見れば、はらはらと涙を流している。
 「章子しょうし、傷は痛みますか」
 「そうではない、そうではない」
 「では、何故涙など…」
 朕と公孫戍は、夏侯章の答えを待った。
 「寡人わたしは己の不注意から滑落しただけなのに、その罪を着せられ極刑にされてしまうあの二つのものどもが憐れでならんのだ」
 と言った。
 我々は血気に逸った己を恥じ、同時に天下万物に及ぶ君子の孝慈に大いに心打たれるのだった。

 その後も長く反応を得られずにいたので、少し違う条件の場所を見てみようと、深場を備えた降臨跡、オペラ座下の様子を見に行くことにした。

 オペラ座下。
 こちらも流れの状態は好ましかったが、水質は韓流ポイントのものと似通っていた。
 しかし、単発ながらボイルはあり、しばらくは励みとなっていたが、結局反応を得られぬまま時間が過ぎていく。
 夕刻に入っても堰は開放されていた。
 無反応の上、減水が顕著化してきたことにより、韓流ポイントに戻ることにする。
 と、移動しようとしたところソープオペラが開演されていた。
 半作、全作、場末姫の演目と思っていたが、メーデンも居たという。どうやら“いい匂い”がしなかったので去ったと見える。

 再びの韓流ポイント。
 時間の経過と共に水質もいくらか回復していて欲しいと祈る気持ちである。
 日没の時間帯、小魚が盛んにライズする様子が見えたので、ボトムだけでなく表層を流してみることもあった。
 しかし、やはり反応は得られず。

 完全に陽が沈んだ頃、堰操作のアナウンスが聞こえる。
 この頃になると風が強くなり、ルアー操作に難儀するようになっていたが、堰の閉門で何かが変わったのか、公孫戍がバイトを捉え、キャッチに至った。
 スペルペケニシモではあったが、厳しい中の一尾、フィンテール・スティッコーでの釣果である。
 朕も、ようやく伝説式僻みコメントを言う機会が出来たことを喜んだ。
 そして、ここで日中の暑さによる疲れがどっと押し寄せてきて、一同ギブアップ状態となる。

 いつにない疲労感に苛まれての恋するコンビニでのひと時。
 台風前まではそこそこに良かっただけに、尚のこと厳しい釣りが堪えた。
 こんな時にこそ、華麗なるレジェンドランを見て、肚の底から笑い、晴れ晴れとした気持ちで帰宅したいところ。
 とはいえ、物事はそう上手く行くものではない。伝説も自らの存在価値を高める術を心得ているのだろう。期待されていた伝説式疾駆は起こらず。
 かくして、ただひたすら疲れ、打ちひしがれての解散となった。

 帰りの途上、侯嬴こうえい島に、侯嬴らしき人影を見る。
 本人かもしれない。
 朕はあまりにも釣れないのでナマズを諦め、バスにシフトしているが、侯嬴の今年の感触はいかがなものなのだろうか。
 来週の日曜日は江三子との合流だけではなく、侯嬴の話を聞けるかもしれないという楽しみも加わった。




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廃人の明暗

 9月17日。

 若きサマナたちの平日のワークの結果が寄せられる。
 最近は釣行機会のめっきり減っている施恩が、鹿島で波乗りついでにジギングし、釣果を得ていた。
 タックルは朕の物を借り受けてのこと。
 この先、メインの釣りはジギングになるかもしれないという施恩に対し、朕はブラストとジグはくれてやるが、オールスター・スヌークだけは必ず返すようにと念を押した。
 李立は堰下でシーバスをキャッチ。
 今年三人目の達成者となっていた。
 イモのドリフトによるものだという。

 伝説式の僻み文句を返すいとまも無く、ランカーズに注文した6000円分のスティッコーの到着を待って待機していた昨日。
 堰下エリアに入っていた李立、
 堰上に入っていた公孫戍、
 同じく堰上に入っていた夏侯章はそれぞれにスモールマウスをキャッチしていたのだった。
 スティッコーのためであったとはいえ、好適日を逃してしまった朕は「オレにかまうな、上手い連中と仲良くやってくれ」と、伝説三輪泣きするほかなかった。

 かくして迎えた釣行日当日。
 台風の接近と休日が重なるとはついてない。
 昨日から雨が降り続いているのだから、水の動きも変わり、これまでの延長線上の展開というわけにもいかなくなるのではないか。
 ライブキャメラを見れば水位は極端に上がっているようにも見えなかったので、これまで通りのやり方で行けるかという気になり、スティッコーも残り本数を気にせず使える状態になっていたこともあり、多摩川に向かってみることにした。

 橋の上から降臨跡を見れば、水位は高めだが、激流には見えなかった。
 適度な増水ならば、宇奈根にシーバスが来ているかもしれない、もしくは居ついていたシーバスの警戒も解けているのではないかと期待し、宇奈根に入ってみる。

 駄菓子菓子…。
 現地は釣りにならぬほどの大増水。カバーを丁寧に探れば、どころではない水勢。
 ということは登戸エリアが荒れていないように見えていたのは堰の大開放によるものだったのだ。
 登戸エリアが減水の動きに入っているとなると、最下流部となる韓流ポイントに魚が集まっているかもしれない、ということで移動。

 韓流ポイント入り。
 粒は細かいがしとしとと降り続ける雨に、ルアーマンの姿は無く、それでも朕の他に二人の釣り人が居た。
 釣り人には厳しい環境であるから、いたって根性のない修羅が降臨することなど考えられるはずもない。
 韓流ポイントの流れは強かったが、ボトムを取れないというほどでもなく、工夫次第で狙ったコースを引いてくることは可能だった。
 しかし、目ぼしいポイント、記憶しているカバー周りを引けども引けども反応は得られず、岸際でアメリカザリガニを捕食しているガニを見るだけだった。

 結局この日は、多摩川見えてくるものが無いのう状態から抜け出せず、日没を迎えると共に納竿してしまった。




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湯降る

 9月13日。

 この日は、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気に襲われていたので臥していた朕だったが、気付けば公孫戍こうそんじゅよりメール着信があった。
 堰下エリアにいるのだが移動中にペットボトルを落としてしまったので、水を買ってきて欲しいとのこと。
 同じ君主に仕える者として、朕は快諾し、ポイントへ向かった。

 現地入りし、一帯を見て回ったところ公孫戍を発見。
 「おめえどこに居るんだよ!?」とブチキレるのが、今の状況に合った作法である。
 公孫戍は、既にスペルペケニシモを一匹キャッチしており、とりあえずボーズだけは無いという。
 朕はここ数日通ってきた感触と概要を伝え、それぞれに散開。

 しばらくして、公孫戍がファイトしているのが見えた。
 ヤマモトイカに食ってきたとのこと。
 寄せてみれば30半ばのスモールマウスだった。
 場所が合っていればこんなものなのだ、と釣果を確信しキャストを続ける。
 その後、公孫戍も見えるだけで釣れないシーバスに心惑わされていた。

 夕刻近付く頃、公孫戍に夏侯章かこうしょうより電話あり。
 今日の内容を伝えたところ、夏侯章もこれからこちらに来るという。平日に君子がいらっしゃるのはまことに喜ばしいことだ。
 夏侯章が現れる。
 朕と公孫戍は「この川より出でて、四方より来るものは皆我が針に掛かれ」と、まじないの言葉を口にしていたが、これを聴いていた夏侯章は嘆息し、「左へ行くものは左へ行け、右へ行くものは右へ行け、この命令が聞けぬものは我が針に掛かれ」と唱えた。
 かくして陽も落ちる頃、夏侯章がバイトを捉える。
 手前の水中テトラが厄介な存在だが、14lbラインで強引なファイトを可能にしている。
 寄せてみれば60クラスの見事なナマズ。
 「そのワーム、大事に使ったほうがいいよ」の、タイニーブラッシュホッグによるものだった。
 着実にナマズをキャッチしている夏侯章を見て、朕と公孫戍は、
 「章子しょうしの徳至れり。魚に及ぶ」
 と言い合い、感嘆した。
 一方、長らく反応を得られずに居た朕もようやく反応を得る。
 君子やもうひとつの伝説史官が見守る中、70クラスのナマズを寄せ、足場の良いテトラに乗り、魚を掴もうとしていたところ、ラインが視界に入っていなかったテトラに擦れラインブレイク。
 「アタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!」と、非難を浴びる羽目になった。
 もはやバーブレスだったから、という言い訳も出来ない。

 今日は平日であり、ここから僕たちは今恋をしているコンビニから遠い。
 アフターフィッシングの楽しみは週末に、ということでこの日は解散となった。

 ※マー語

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国家と犯罪

 9月11日。

 ナマズに関してはまったく動向が掴めなくなっているので、流れの道筋を追い、フィネスをすれば釣れないこともないスモールマウスを狙うようになってしまった。
 勿論、元来朕はバサーなので、これはこれで喜ばしいことではあるのだが、年間を通して有効なルアー、メソッドが限定的であるというところに物足りなさを覚えているというのも事実である。
 バスが釣れないからと狙い始めたナマズだが、想像以上にゲーム性が高かったことと、何よりサイズが大きいということで、多摩川においては最も魅力的なターゲットとなっていたのも今は昔。第一ワンドと呼んでいた産卵場が破壊されてからというものゲームは先細りしていく一方である。
 ナマズが少なくなってきたのは魚食種のバスや、雑食の大食魚コイのせいではなく、ウォーターマフィアとその親分による環境破壊が決定的な要因だろう。

 「パンが食べられないのなら、ケーキを食べればいいじゃない」
 「バスが釣れないのなら、ナマズを釣ればいいじゃない」
 「ナマズが釣れないのなら、バスを釣ればいいじゃない」
 というわけで、スモールマウスとシーバスの出入りが連日確認されている、伝説三輪氏の勢力圏外へ向かう。

 現地入りすると、既に流芯ブロックには先客の仕掛けが投入済みだったので、やや下流に入る。
 テトラ帯には相変わらずシーバスが見える。よほどここが気に入っているのだろう。これまでに幾度となく釣り人には狙われてきただろうが、離れないのだから良い条件が揃っているのだろう。
 シーバスが消えるとコイ、フナ、スモールマウスが順当に姿を見せるようになる。
 今日は見えるスモールマウスが先日までより少なく、サイズも小さかった。しかし、ワームを沈めれば相変わらず反応は示していた。
 流芯をドリフトさせつつ、見えバスを探しつつ、とやっているうちに増水が始まる。
 塵芥混じりの濁りの中、上流のエサ釣り師がコイをヒットさせていた。
 コイのエサとなるものが新しく生じた巻き返しに滞留するようになったのか、と見ていると、このエサ釣り師が「スズキ狙いの人はよくここに投げてるよ」と言うので、朕はならばとリッジ90Fに結び替え、ブロック帯を打たせてもらった。
 しかし、反応は得られず。
 やはり、ダム放出の塵芥混じりの水は凶であった。

 しばらく経つと、水位水勢が落ち着き、濁りも消え、魚が戻ってくるのが見えるようになる。
 ランカーシティ・2,5インチグラブのジグヘッドリグで巻き、スティッコー、デブアルバートイモにネイルシンカーを挿入し流れの変化を意識してドリフトさせるが反応は得られない。
 ひょっとして反応が無いのはカラーのせいか?と、これまで投げていたスモーク、パープルからウォーターメロンに変えてキャストしてみたところさほど待たずして釣果を得る。
 最初はボトムにスタックしただけかと思うほどの感触で、引っ掛かったゴミを回収するつもりで引いてきたところようやく魚が付いているということに気付く次第だったが、とにかくキャッチできたことを喜ぶ。

 李立より、行くべきか否か迷っているとのメールが入ってきたので釣果写真を送って判断を任せた。伝説三輪氏のように「迎えに行くから15分で準備しろ」などと、脅しに近い強制を朕はしない。

 底を叩く感触は伝わるものの、ラインが流れに押され大きくたわむためルアーの位置は摑みづらいが、次はバイトを捉えることが出来、サイズも上がった。
 サイズは30半ばといったところだが、連日キャッチできていることは大きい。
 伝説三輪式の“○○で○回連続ボーズなし!”を決めて笑いを取れるためだ。

 李立が来てしまう前に釣れるだけ釣っておかなければ、とキャストを続けているうちに様子のおかしいことに気付く。
 増水が終わり落ち着いたかと思っていたら、今度は減水である。
 普段は見えないテトラが頭を出し、1/11オンスシンカーを入れたスティッコーが流れなくなっている。
 ダムの放出量が極端に減らされたのは何故か。そもそも農業を廃れさせた今の社会に、生命の循環を断つだけの堰を維持する理由がわからない。或いはいずれ食料自給率を高めていこうという崇高な計画でもあるのだろうか。

 陽が落ちてくる頃、李立が現れ、水位と流れも戻る。
 ライトリグの釣りに飽きていた朕は「正解はお前に任せた」と、伝説式ヘボ隠しの口上を吐いてミノーを巻き始めた。
 どうせ釣れやしないと諦めながらも、連日見てしまったシーバスが頭から離れなかったのである。

 完全に陽が落ちてからもしばらくキャストを続けていたが、スモールマウスもシーも反応を得られず、李立がガニの猛攻に遭い、ワームが何本か壊されてしまうのみだったことにより、この日は終了となった。






 

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衆人皆望

 9月10日。

 「自分、根っからのバサーなもんで
 トラウト釣堀に来た釣り人相手に、場違いなタックルセッティングを見せ、謎のアピールをしていたレジェンドⅡを今でも思い出す。
 長州ならずとも「あにがやりたんだ、コラァ!」と言いたくもなるが、凡夫に伝説人の心理を推し量ることなど出来ない。
 とにかく今日も新川で鍛えた本気を実釣をもって示すのみである。
 この日も、公孫戍こうそんじゅらと登戸エリアで合流予定であったが、朕は自転車移動の労を厭わず、少し早く家を出て一人宇奈根へ向かった。

 ポイント入りし、一通り見て歩く。
 昨日は60以上と50少々のシーバスが見えていたが、この日見えたのは50台の一尾のみ。しかし元々釣れないと捨てている魚。
 スモールマウス狙いにはボトムをナチュラルイメージでソフトプラスチックを這わせる釣りが有効だと知りながらも、もっと効率的に協力的な魚が釣れやしないかとスピナーを引いていたところ早々にストライクを得る。
 すぐにばれてしまったが、15センチ程度の大きさで白い腹を見せた。木っ端セイゴか。
 あのサイズでもシーバスなら勝者だ、と更に巻き続けていたが、ミスキャストでルアーをブロックの間に挟めてしまい、あえなくロスト。
 小さな見えバスが出入りするスポットを記憶していたのでスティッコーのジグヘッドリグを投入してやったところすぐにストライク。
 サイズはともかく、これでノーフィッシュはもう無いという安心を得る。 
 再びシーバスが岸際のテトラ帯をうろつくようになり、スモールマウスの寄りが悪くなる。
 しからば釣ってやろうとワームを落としたり、巻いてみたり、シャッドプラグを引いてみてみたが、まるで関心が無いように悠々と去っていく様を見るのみ。
 改めてスモールマウスを意識し、目には見えない、流芯に絡むカバーを探す。
 オフセットフックの1/32オンスジグヘッドでは流されすぎるので、いささか大げさな気もしたが1/11オンスネイルシンカーをスティッコーに挿入してみたところ、確実にボトムが取れ、かつ、流れにも乗るのでこれで通してみることにする。
 一応、水面に見える流れの変化からリトリーブコースをイメージして引いてはいるが、実際どのコースを通ってきているのか、カバーがどんな形状でどんな役割を果たしているのまでわかるはずもなく、感触から想像するのみで、運任せにするつもりは無いと言いながらも、実は運頼みの部分が多いのも事実である。
 そんなリトリーブをしているうちに、やがてストライクを得る。
 30半ば程度で特に大きいというわけではないが、バスらしい風貌、お気に入りのスティッコーでの釣果ということで満足できた。
 しかし、まだ登戸でのラウンドが控えているので「今日のオレの仕事は終了!」と、伝説三輪式を決めるのは早い。
 
 韓流ポイント入り。
 既に公孫戍と夏侯章かこうしょうがポイント入りしていたので「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、伝説式で到着を報せた。
 今日の降臨跡の様子を聞く。
 相変わらず琵琶湖ポイントはハイプレッシャーで、そうではあっても登戸名物は見えなかったという。
 誰も釣れず、ただ釣り人だけが多い状況なら、例え実はヘボかったとしても鍍金が剥がれる恐れは無い。
 ましてや今は、朕が捨てているために寄り付かないポイントとなっているのだから、今日は降臨に最適だったのではないか。
 またしてもレジェンドⅡは、秋の荒食いの機会を逸していたようだ。

 昨日と違って、今日ははっきりと流れが感じられる。
 今はだめでもいずれ通る魚に当るはず。
 朕はここでもスティッコーを使っていたが、流速に合わせて、軽いスプリットショットリグで用いた。
 ここでは公孫戍がガニや超小バスの反応を得るのみで、釣るものは居らず。
 釣れないからには何かが間違っているのだ。エリア、ポイントが違っているというのが最大の不振の理由だろうが、我々に大きくエリア移動するだけの気力は無い。
 そこへふらりと蔡沢さいたくが現れる。
 常にさり気なく、控えめな雰囲気を漂わせているが、印象とは裏腹に、実は活動的な技巧派である。
 今日は上流側から流してきたが、まだ釣れていないという。
 
 何の反応も得られず、飽きてきた朕は手マンポイントの様子を見に行くことにする。
 手マンポイントに入ろうとしたところ、ちょうど下野さんが移動しようとしているところだった。
 何事も無かったので、これから降臨跡の様子を見に行くという。
 手マンポイントは、小ブナのライズ、スペルペケニシモのラージマウスが見えていたが、ここでも流れは生きていてもスモールマウスの気配は無い。
 あの小ブナの群れは大型の魚食魚を寄せる力となっていないのか。スモールマウスはともかく、大ナマズが食うにはちょうどよいサイズのスクールではないのか。
 公孫戍、蔡沢もこちらにやって来た。
 夏侯章は一人向こうで粘っているとのこと。
 混沌氏の術を修める夏侯章だが、デジタルキャメラは持っているので、単独の状態で釣果を得ていたとしても安心である。
 陽も傾いてきて、依然反応を得られない朕と公孫戍は釣りの手も休みがちになり、古今の興亡と得失について論じ合ったり、伝説、及び未満の人物評をしたりと「おしゃべりしてないで釣りしなよ!」状態にあったが、少し離れた場所で黙々とキャストを続けていた蔡沢が魚を掛けていた。
 こちらへ来た時はアンダーショットリグを組んでいたので、ボトムレンジでのヒットかと思っていたが、口に掛かっていたのはドッグXだった。
 ドッグXとはまた何と伝説マニア泣かせの選択だろう。
 水面のライズが気になったのでトップにしてみたら出たとのこと。
 「これで多摩川で“二回連続ボーズなし!”ですよ」
 と、伝説式を用い、こちらでも巧者ぶりを示す蔡沢だった。
 朕は蔡沢が義に厚いことに感じ入り、「おめえらこの前までドッグX全否定だったじゃねえか!」と、レジェンドギレでその功を祝福した。
 場所はまったくの間違いではなく、攻めるレンジに問題があったのか。
 「釣れてるやつの真似しねえと見えるものも見えて来ねえぞ
 言った本人はおろそかにしていた名言にある通り、朕と公孫戍もボトムの釣りから表層の釣りに転換した。
 駄菓子菓子…。
 その後は誰も反応を得られることは無く、遠方より来ている蔡沢は一足先に撤退した。

 一人、奥で粘っていた夏侯章がやって来る。
 天から王権を授かっているかのような君子の発言に期待し、SDカードを受け取ろうと構える朕だったが「魚居ねえ」との仰せ。
 長らく結果が出ないことに疲れ、朕と公孫戍は撤退を提案したが、夏侯章は20時までまだ30分も残っている、と聞かず。
 いつも我々は20時を機に納竿としているが、特に定めたルールではない、と諌大夫二人掛りで説得に努める。
 なかなか首を縦に振らない夏侯章に対し、
 「僕たちは今恋をしているコンビニでの滞在時間が長くなれば長くなるほど、伝説式疾駆を拝める確率が上がるのですぞ」
 と説いたところ、ようやく撤退案を受け入れてくれたのだった。

 恋するコンビニでのアフターフィッシングの時。
 尽きぬ話題と共に、もうひとつの伝説降臨を待つ。
 特に、釣果を得られなかった日など、肚の底から笑えることがあると無いとでは、その後の心身の状態が大きく違ってくる。
 しかし、今日ももうひとつの降臨は起こらぬまま時間一杯になってしまった。
 残念なことではあるが、もし思い描くままに事が運んでいたならば、こんな人生は送っておらぬだろうよ、ということで潔く解散とした。





 

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プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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