消えない足跡

 4月23日。

 先日、ザ・タックルボックスの店長と津久井湖へ行った。
 増水があってからさっぱりだ、との話を聞いたものの「もしかしたら釣れるかも知れねえじゃねえかよお!」と、根性を出してみたが、言われた通りの結果となってしまった。
 もし、伝説の人に「1オンステキサスはやったか?ジグヘッドワッキーはやったか?ビーフリーズは投げたか?」と、責められたなら「エレキのセットを運ぶのを手伝いに行っただけじゃ」と、伝説三輪式言い訳でこちらの至らなさを誤魔化せばよい。
 魚は釣れなかったが、隠者といった趣の中村ボートの主人と、取り巻く世界には窮まることの無い素晴らしきバスフィッシングの味わいがあった。

 そして迎えたこの日。
 伝説式手法を用いれば、どのような結果に終わろうと体面を保てた気になれるが、いくら釣れないからといって「釣りという低レベルな競争」などと、自らがのめり込んだ分野を貶める気にはなれない。
 吐いた唾を呑むのが得意の伝説三輪氏のこと、今日のように晴れた日曜日であれば、新川節を謳いたくてたまらなくなり、再び登戸に現れることもあり得る。
 ベイトを漁り、登戸名物ぶりを発揮する三輪氏の勇姿を想像しつつ多摩川に向かう。

 現地入りし、タックルを準備していたところ猫おじさんに会う。
 「そういえばいじった三輪車の人、全然見ないけどどうしてるのかな?」という。彼もまた登戸名物を知る人物だったのだ。
 感心すると同時に、今日もまた降臨が無かったことを悲しんだ。

 昨日の雨の影響で濁りが入っている。
 しかし、バスがまったくカバーに依存してしまうほどでもないように感じられた。
 南風が吹き付けていたので、朕は降臨跡のシャローフラットに表層系プラグを通すことにした。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 童威だった。
 上流域のマルタ瀬へ行きニゴイをキャッチできたとのこと。
 去年、その価値を大きく落としてしまうほどに釣れていたニゴイだが、今年はどうか。とりあえずのボーズ逃れができるぐらいに釣れて欲しいものである。
 付近でバスをキャッチしている釣り人はいたが、ペケニシモの単発。ボイルも起こらず。
 ということで下流側に移動。

 「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 と、公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょうにお約束の挨拶をする。
 なんと、夏侯章がまたしてもナマズをキャッチしたという。
 六釣行連続でナマズをキャッチできているという。
 今回は黒線香でのキャッチだった。
 朕は「おヒゲはいやざます~」と、伝説三輪氏のごとく、自分はナマズなど興味が無いアピールをした。勿論、そんなポーズを取ってはいても、その無知なるがゆえに釣れていなかったというのが真実なのだが…。

 そういえば下野さんが居ない。
 レジェンドⅡのように、釣りという低レベルな競争から卒業してしまったのか。多摩川はもう飽きたのか。
 しかし、よく釣る人である。釣れないからといっていじけてしまういわれは無い。
 もしかしたらアナザーレジェンド降臨に向け、陰なる工作を行っているのかもしれない。
 伝説諸氏が踊る姿を、誰もが待ち望んでいるのだから。

 夕刻、韓流ポイントへ。
 こちらは降臨跡より水温が安定している。
 このポイントに好ましい風向きではないが、気温が下がったこんな日は、水温とはっきりと感じられる流れが重視されるべきだろう。
 と、キャストを続けるが反応は得られない。
 朕は韓流ポイントを諦め、堰下のマルタを見に行くことにした。

 瀬のポイントに釣り人が立ちこんでいた。
 これではマルタが瀬に入って来れない。
 そして瀬の周辺をうろつくマルタも少ないという印象。
 この瀬で良いのか、悪いのかは瀬に立つ釣り人が去り、更に光量が落ちてからでなければ判断できない。
 しばらく瀬周りにリップレスクランクをキャストしていると、ナマズがヒット。寄せてみれば背掛りだったうえ、型も小さかったので写真は撮らず。おそらく、ミスバイトしたルアーが引っ掛かってしまたのだろう。
 やがて陽が沈み、ポイントに直接立つ釣り人も消える。
 しばらく瀬の様子を眺めていたが、何も起こらないまま時間が経過していく。このポイントはもう抜けてしまったのかもしれない、ということで再び韓流ポイントに戻ることにする。

 風が水面をかき回している。
 マニック、ワンダーを巻き続けたが反応は得られない。
 先日は稚アユの群れが視認できるほどに見られたが、今日はそれがなかった。浅い層の水温が下がってしまったのだろう。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 と、見れば、行方不明になっていた下野さんだった。
 江三子勢ぞろいとなり、それぞれの感触を話し合う。
 公孫戍はステルスペッパーでストライクを得たがバラしてしまったという。
 朕は堰下でのナマズの一件を話した。
 お互い残念でしたな、というところだが「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」とキレるのがここでの作法だ。
 そんな伝説を懐かしむ憩いのひと時も終了時刻が近い。
 表層がダメなら、ということで朕はスティッコーのスプリットショットリグでボトムを引く。
 アナザー氏が居たなら「おしゃべりしてないで釣りしなよ!」と怒られてしまいそうな、だべくり状態でのリトリーブをする一同だったが、それなりに集中力は保たれていて、朕がバイトの感触を捉えた。
 寄せてみれば30クラスのバス。
 「このクラスなら十分でしょ」
 と、皆で浮かれていたが、ラインブレイクの感触と共にバレてしまう。
 8lbトライリーンが何故?と回収してみればラインブレイクはしておらず、フックに捨てラインが絡み付いていた。これに魚を外されてしまったというわけか…。
 一同、しばし沈黙の後「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」と、アナザー氏の物真似をして笑い、残念な気持ちを散らしての解散となった。
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おめえらは一軍、オレは二軍泣き

 4月18日。

 驚くような陽気。
 根性を口にしながら、実はいちばんからっきしな修羅でも楽しめそうな気候である。
 しかし、残念ながら今日は平日。
 ただでさえプレッシャーに敏感になっている大物が出てくることなど望めようか。
 それでも「オレたち今までバスに限らずいろんな魚種狙ってきたよな」と、朕に念押ししてきたことが物語るように、朕と同等、若しくはそれ以上の技量を持っていると思われる節があった修羅である。
 朕程度でもよく釣れているということを見せてあげることが出来れば、降臨を促す効果はあるかもしれない。
 また、ハードベートで釣るのが上、ソフトベイトで釣るのは下、という感覚の人でもあったので、ハードベイトをメインに使う朕が釣果を稼いでいけば再び多摩川にも興を示すだろう。
 新参の釣り人を捕まえては“根っからのバサー”ぶりを謳う登戸名物をまた見てみたいものである。

 伝説三輪氏の降臨など無いと割り切ったうえでの登戸入り。
 平日だけあって、降臨跡に釣り人は少ない。それでも万が一降りてこられても困らない程度にベイトとなる釣り人が居る。やはりこの土地は伝説のための場所なのだと思う。
 南風吹く波立った水面に、朕はマニックやBスイムトリガーを流していったが反応は得られず、ボイルを見ることも無かった。
 下流側に移動しようとしたところ、李立と張良がやって来た。
 張良は先日の土曜日、トップで五匹のキャッチに成功したという。絶対偶然ではない。朕には見えない何かを見ているのは間違いない。
 彼らと同じ魚を狙おうとしても無駄だろう。ここは「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、伝説式負け惜しみを言って逃亡するのが賢明だ。
 そして朕は下流側のポイントでスポットに数回ベイトを通し、反応を得られなかったことで韓流ポイントに移動することにした。

 韓流ポイントにはナマズさんが居た。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、挨拶し、スプリットショットリグ、表層系のローテーションで流して過ごす。
 しばらくして「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」の声。
 童威だった。
 更に「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と続く。
 李立と公孫戍こうそんじゅだった。
 朕が去った降臨跡では張良がボイル打ちを成功させ40アップのスモールマウスを釣り、バス狙いでは張良に敵わぬと見た李立は素早く視点を切り替え、ナマズ狙いにシフトし、キャッチに至らしめたという。
 その鮮やかな手際に感心するも、自分を完全に上回った後輩の技量を素直に認められない僻み体質のレジェンドⅡに倣い、朕は「突き落としてやろうか」と泣いた。
 この一事で賑やかな雰囲気になってくるが、釣り自体は不振で、長らくだべくっていた末、公孫戍が李立から借り受けたタックルでようやくペケニシモを一匹キャッチ。
 不振の中の一本であったのでその功は大きい。しかし他人の功は認めないのが伝説の時代以降の作法。
 「何だ、小バスしか釣れねえのか。だらしがねえなあ」と、謗るのが正しい。
 やがて夕刻迫り、ナマズさんと公孫戍は撤退。
 「オレはおめえらと違ってガチじゃねえからよお」
 「何だ、もう帰るのか。おめえには根性が無え」
 お約束のやり取りは欠かさない。

 朕は先日、その数を増やしていたマルタが瀬付きするのかを見るため、堰下エリアに下った。
 陽が傾いて光量も落ちてきてはいるが、最初の瀬に目立った動きは無かった。
 更に下流の瀬か、と下ってみたがこちらはマルタの姿そのものが見えず。
 最初の瀬に戻れば李立と童威が来ていた。
 童威は降臨跡の小バスポイントのことが気になってマルタどころではないという感じだったので、李立に感触を訊いてみる。
 居るには居るし、アタリらしき感触はあるとのこと。ここでいいのだろうか、と疑念を口にするが、しかし、下流側はもっとひどいと話したところ、ならばここで粘るしゃないという結論に至る。
 完全に陽が沈み、釣り人が居なくなると瀬で暴れるマルタが見られるようになった、が、散発かつ小規模過ぎ、どうにも調子が上がらない。
 それでも卵を狙ってつけ回す魚は存在しており、かろうじてという感じで朕がニゴイをキャッチすることができた。
 既に多摩川勝者としての地位を失った魚種ではあるが、とりあえずノーフィッシュを免れ安堵する朕であった。しかし、このことが三輪氏の知ることとなったら「何だ、ニゴイしか釣れねえのか。だらしがねえなあ」と謗られてしまうことだろう。

 ※マー語

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降臨元年伝説評議会

 4月16日。

 陽気の日曜日。
 温かい日が安定して続いている。これほどの過ごし易さならば、寒さに怯んだ口先だけの根性を茶化されることも無いだろう。そして岸辺には多くのベイトがやって来るのが目に見えている。
 伝説三輪氏が降臨するなら、今日は絶好の日ではなかろうか。
 
 昨日は江三子、童威がいい感じで釣れていたようで公孫戍こうそんじゅはギルまで釣ったと聞く。
 フィールドは違えど、降臨元年元旦に武松に贈ったシャッドダンサーは新利根で炸裂したという話も聞く。
 景気の良い釣果情報を聞き、からペンションの高まった朕は「新川で鍛えた本気を実釣をもって示す!」と、伝説三輪宣言し、多摩川へ向かった。
 そして、出発前に夏侯章かこうしょうは来るなり白線香でナマズを釣ったとの報が入り、一層期待が高まる。

 現地入り。
 案の定人出は多く、入ろうと思っていたポイントも釣堀のごとくであった。
 初老の紳士が40アップをキャッチしているのが見えた。聞けば、馬の背に絡むブレークを意識しスプリットショットリグでドリフトさせていたとのこと。
 このクラスが回ってきているならば、と朕はボイル発生を待った。
 童威がやってくる。
 早朝から始め、既に五匹キャッチしているとのこと。うち一匹はラージマウスだったというので写真を見せていただく。
 「今日のオレの仕事は終了」と、伝説三輪式余裕をぶちかましていた。
 下野さんもやって来る。
 今日はペケニシモ混じりではあるが五匹釣れたという。
 やはり良い日なのだ。
 ボイルに対する期待がいよいよ強くなるが、見えたのは小型の単発だったり、ネストの魚を釣って得意げに振る舞い、乾いた手でいじり倒す蒙昧な釣り人といった残念な光景だけだった。
 そのうち、下野さんと童威はバギーのおっちゃんいうところの“男らしい釣り”を諦め移動してしまったが、朕は「おめえらは根性が無え」と伝説三輪式で罵り、「もしかしたら釣れるかもしれねえじゃねえかよお!」とレジェンドⅡのようにブチキレ、日没間際まで降臨跡で待つことにした。
 しかし、プレッシャーが掛かりすぎてしまっているのか、望まれたボイルは起こらず、ナイスサイズをキャッチしていたのはボトムをドリフトさせていた釣り人だった。
 この釣り人の話を聞いて、ようやくトップは無理だと諦め、江三子らと合流。

 ナマズさんが通りがかり、韓流ポイントで四匹キャッチできたという。
 朕以外の全員が釣れていることにより、朕は気分を露わにし、半開きの涙目で「オレはよお、おめえらと違ってガチじゃねえからよお」と、伝説三輪式皮肉をぶっ放した。

 陽が落ちてから韓流ポイントに入る。
 「釣れてるやつの真似しねえと見えるものも見えてこねえぞ」という名言に従い、朕もライトリグをしばらくやっていたが、魚が動きやすい水温にあり、光量が落ちればいかにセレクティブなスモールマウスだとてルアーに対する判断力が鈍るはず、と集中力が続かず、結局表層系プラグを引いてみたり、グラスミノーを巻いたりしていた。
 ボーズを逃れたければ堰下のマルタに逃れるという手もあったのだろうが、この頃には既に新たに移動しようという気力も失せていた。
 そして遂に迎える終了の刻。
 ここで釣れていたのは公孫戍。
 ルアーとほぼ同サイズのスモールマウスだという。
 しかもこのベイト、伝説アナザー氏をして「そのワーム、大事に使ったほうがいいよ」と言わしめた、タイニーブラッシュホッグであった。
 
 ※マー語

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修羅と泪と僻みと三輪

 4月14日。

 この日、伝説の人に無いと非難されていた“冒険心”とやらを発揮してみようと、マルタの様子を見に行くため、プラグでの釣りをメインに仕立てたキャスティングタックルで多摩川に向かった。

 温かい南風のこの日。
 降臨跡のことが気になったりしたが、まずは東名高速下を荒らしていたマフィアが去ってからどうなったのかをこの目で見ておきたい。
 堰下エリアへ向かう途中、李立とナマズさんに会う。
 共に韓流ポイントでブラックを狙うというので「おめえらには冒険心が無え」と、レジェンドⅡ式で罵り、朕は一人堰下エリアに歩いた。

 マルタは流れの筋に沿うような形で帯をなしている。
 しかし、これほどの数がありながらルアーに反応する個体は極めて稀で、ワンダーに一回バイトしてくるのを見るのみだった。
 他に見た魚といえばコイと、Bフォロワーを追うニゴイのみ。
 瀬付きがありそうな雰囲気はあったが、この日は夜から酒宴の予定がえっており、確かめることができない。
 今後はバス、ナマズは失敗しても、しばらくマルタやエッグイーター相手のゲームを楽しむことが出来るだろうということを記憶に留め韓流ポイントに移動。

 李立、ナマズさんの他、下野さんの姿もあった。
 「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、朕がお約束すれば、
 「何だ、釣れなかったのか。だらしがねえなあ」
 と、李立が伝説式で返す。
 「そういうおめえさんはどうなんだよお?」
 と、朕がバギーのおっちゃんの物真似で問えば、既に三匹キャッチできたとのこと。
 そしてほとんど間を置かず四匹目、五匹目とキャッチしていく。
 「オーエスピーのルアーしか釣れないよ」と豪語する李立に対し、ここに居た一同は「突き落としてやろうか」と、伝説三輪氏のごとく泣いた。

 童威がやって来て、李立と共に降臨跡に移動。
 朕と下野さんは残り、レジェンドⅡには無かった根性を出し、ここで粘ることにした。
 頻度は高くはなかったが、ボイルも起こるようになり、表層系をあれこれ試しているうちに、フェイキードッグにバイトが出る。幸い下野さんは離れたところにいたので「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」とキレられることは無かった。
 しばらくして下野さんがストライクを得る。
 ずいぶんペケニシモな魚だな、と見ればラージマウス。
 他にもこのクラスのスモールマウスが一匹釣れたという。
 まったく釣れていない朕は、釣れない理由をハンドルのがたつきに起因する振動のせいにして己を取り繕い、帰ろうとしていたところ李立が戻ってくる。
 「40アップ釣りましたよ」
 というので写真を見せてもらう。
 ドッグX・コアユでの釣果だ。
 どうやら降臨跡では良型のボイルが発生していたようで、張良はこれより更に大きなスモールマウスを同じくトップウォーターでキャッチしていたとのこと。
 朕は「おめえらこの前までドッグX全否定だったじゃねえか!」と、三輪泣きし、一足先に撤退とした。

 去り際、童威に会う。
 こんなの釣れましたよ、と写真を見せてもらったところ超ペケニシモ。
 完全ボーズの朕は、当然のごとく半開きの涙目で「そこまでして釣りてえか?」と、Ⅰ・Ⅱ共通のレジェンド泣きで讃え、多摩川を後にした。

 ※マー語

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修羅の弁明

 4月13日。

 「新川では云々」に始まり、「我々は修羅である」「手堅さに走って自分らしさを見失ってると思わねえか」「オレはおめえらと違ってガチじゃねえからよお」「オレらは二軍、おめえらは一軍。そういう考えやめねえかあ。オレたちそもそもそういう付き合いだったか」と変化して行き、「釣れなくても関係ありましぇ~ん」と遂に開き直ったと思えば、「ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなった」と、改めて不調の理由を説明。
 殷の紂王は己の非を飾るのが上手く、臣下の諫言を受け付かなかったという。
 紂王は才気ある人だったというからまだしも、身近な伝説でさえも己を飾ることには巧みだった。
 朕にはそんな才気のひとかけらも無く、今は実験ネタとて無い。どうやら今日もまっすぐに多摩川に向かうしかないようだ。

 韓流ポイントからスタートしようと現地入りしてみれば、蔡沢とナマズさんが居た。
 「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、三輪泣きで吠えてみたが、まだ誰も釣れていないとのこと。とんだ赤っ恥だ。
 温暖な南風の吹くこんな日は、降臨跡が良いのかもしれないが、今やあそこでは集中力が続かない。
 蔡沢とここでよく釣れるベイト、釣れないベイトについてああだこうだと論じ合っているうちに、ナマズさんが一匹釣り上げる。
 根掛りに苦しみながらも、サターンワームのファットタイプでキャッチ。
 これを見て「釣れてるやつのマネしねえと見えるものも見えてこねえぞ」という伝説三輪氏の言葉を思い出し、朕もチキクロウやスピードワームといったボリュームのあるベイトからコンパクトなスティッコーに落としてみた。
 すると、さほど間を置かずキャッチできた。
 連続ノーフィッシュに歯止めはかかったものの、この種のメソッドでしか釣れないのは物足りなさを感じる。
 スクールで来ているのか、と期待が高まる中、蔡沢がアンダーショットリグでキャッチ。
 40以上45未満といったところ。
 朕が釣れた魚より断然大きい。
 せっかく連続ノーフィッシュをナイスサイズで止めることができたというのに、サイズで上回られ面白くない朕は「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、僻んでないふりをした。
 とりあえず魚は来てるのだ、更に追加していこうと一同意気も上がるがここまでだった。
 童威がやってくる。
 「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」
 この地での礼法もだいぶん弁えてきた。
 今日は早上がりしなければならないというので、現在反応が途絶えているとありのままを伝えると、早々にどこかへ去って行った。

 陽が沈み、反応の無くなった韓流ポイントを諦め、ウィンディサイドとなる降臨跡に向かった。
 すこし先を見れば侯嬴こうえいらしき人影が見える。
 声を掛けてみたところやはり侯嬴だった。
 「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、お約束の挨拶をし、様子を聞いてみたところ、スモールマウスのストライクを二度得、二度ともばらしてしまったという。
 当然「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」と、アナザー式でキレてやった。
 スタート地点は気配が無かったことにより、一帯のポイントやアプローチ方法を案内してもらいながら探っていたが、バス、ナマズどちらも反応が無く、空腹に耐え切れず、まだまだやる気満々の侯嬴に別れを告げ、一足先に撤退とした。
 幸い、侯嬴はアナザー氏は知るも三輪氏は知らぬため「おめえはそれで悔しくねえのか」と罵られずに、すんなり帰ることが出来たのだった。

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dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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