唾、そして涙へ

 6月13日。

 この日、公孫戍が夕方から空くとのことだったので、中野島で合流することにする。
 ここではPEを組んだラインシステムだからこそ獲れるとか、ルアーをわざとスタックさせてハングオフからのリアクションで釣るとか、ナイスサイズの魚は二匹しか居ないという話も伝え聞いている。
 穴場的なポイントかと思いきや、実はひそかに多くの釣り人が入れ替わり立ち替わりでやって来る所のようである。
 釣り人の村里では、戸を出ずとも、諸々の高説が聴こえてくる。

 朕も公孫戍も、かの伝説人や未満人、唾吐きほどにヘボくはないと自負しているが、所詮、ただ釣り歴が長いだけのアマチュアである。昔覚えた基本を尊重しながらも、俗を離れ、漆園を好きほうだいに遊ぶだけでこれといった才は無く、無知な釣り人、飢えた釣り人を驚かすような新しい技法、法則を編み出すことも出来ず、ただ魚の居そうな所にルアーを通すのみである。
 そして朕はまたしても壁を破れず、ペケニシモ3匹、ナマズ1匹で終了。
 朕より上手の公孫戍はペケニシモからナイスサイズまで11匹のスモールマウスをキャッチ。
 朕は数釣りの壁を今回も破れなかった悔しさのためか、或いは空腹のためか、「でもよお、公孫さんは新川では釣ったことないよな。大したことねえなあ…オォーイ!」と、ブチキレて当り散らし、この日を締め括った。




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彼たちの失敗

 6月11日。

 昨日、公孫戍が中野島でウルティモペケニシモからナイスサイズまで10匹のスモールマウスをキャッチしたとの報が入る。
 朕はしばし無言でいたがやがてその巧者ぶりが妬ましくなり、遂には顔を赤らめ、険を含んだ目には涙を湛え「でもよお、公孫さんは新川では釣ったことないよな。大したことねえなあ…オォーイ!」と、伝説三輪氏のように泣きキレてしまった。
 朕はネタを愛した修羅の心意気を決しておろそかにしない。
 修羅はぐれ者、伝説の二大巨頭が相見えるその日まで、朕は鞭を揮い続けることだろう。

 迎えた当日。
 平日に修羅の降臨は考えられないが、はぐれ者はむしろ平日の方が出現率が高いとか。
 しかし今日は雨が降っている。こんな日に降りて来ることは考えられない。
 登戸の第一、第二ワンドがウォーターマフィアに破壊されて以降、雨による増水は凶と出ることの方が多くなった。
 そこでこの日は、本流の動きとは関係なく流れが定位している中野島エリアに入ってみることにした。
 
 さて、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気を治め、予定通りに中野島エリアへ。

 現地入りしたところ、李立よりメール着信と不在着信があったことに気付く。
 折り返したところ、降臨跡は程よい増水で40アップばかり四連発したとのこと。
 そちらがサイズならこちらは数で勝負よ、と臨んだがウルティモペケニシモばかり3粒という結果に終わる。
 どうしても数釣りの壁を越えられない朕は、職場の悩みを同僚である公孫戍に相談してみた。
 とどのつまりは「おめえはアプローチが成ってねえ」ことによるもので、メソッドとしてのフィネスよりそれ以前のフィネスを心掛けよという指南を受ける。
 解らないことは心得のある者に訊ねてみれば粗方解ってくるものだ。
 「釣れてるやつの真似しねえと見えるもの見えてこねえぞ」と言っておきながら、他人の伎倆を認める度量無く、己の程を知らず、気位だけは貴いこれまでに正解はやり尽くして来たという根っからのバサーの失敗を見てきた朕は、伝説三輪氏のような愚は犯さないのである。





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熱暑乞食屋敷

 6月9日。

 土曜日がやってきた。
 三輪車が健在であることは判明したが、現状では元祖登戸名物を期待するだけ無駄だろう。
 凡人の目から見れば、いつも自分だけ釣れなくて、いじけて来なくなったように見えるが、釣りという低レベルな競争から卒業した金もあるし女も居る勝ち組なのだ。負け組である釣り廃人が屯するような多摩川に降りてきて新川節や野池武勇伝を謳うまでもない。それよりも、釣りを知らない、興味もない人々の前で、釣りキャリアを吹聴していた方が一目置かれるだろうし、鍍金が剥がれる恐れも無い、といったところではなかろうか。
 或いは、釣り廃人たちの来ない流域、フィールドで、今も変わらず謳歌を続けているのかもしれない。
 そんな訳で、伝説ファンには絶望的な状況なのかといえばそれは違う。
 何故なら、もうひとつの伝説は降臨しており、朕は実際にコンタクトできたのである。
 それだけではない。
 実は、李立がかつて堰下エリアで何を釣りに来たのかと尋ねられ、シーバスを釣りに来たと答えたところ「こんなとこにシーバスなんて居るわけねーだろ!」とキレられたことがあるという。そのキレた人物が伝説の人であると知ったのは今年五月のこと。
 我々が知らなかっただけで、降臨は継続的にあったのだ。
 強力ではないが、今、多摩川の伝説ファンには追い風が吹いているといっていい。

 この日は少し早めの、昼食後の出発。
 窟前に着いてみれば、猫肉骨粉劇場が開演されていた。
 追放者の乞食おじさんはきっとこの様子を窺える場所に身を隠していることだろう。
 どれほど言葉で己を飾ろうと現実がその全てを否定している。
 そんな伝説諸氏にも似た面白さを持つ追放者は今どこに、と周囲を見回していたところ、セニョールと張横を発見。
 今日は張横がナイスサイズのスモールマウスを釣ったとのこと。
 朕が「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、釣れない人ならではの汚ねえ唾を吐いていたところ、師匠もやって来る。
 はからずも修羅が君臨していた時代からの釣り廃人集合となった。
 釣り廃人たちはそれぞれの感触を語らった後、朕と師匠は韓流ポイントへ下った。

 韓流ポイントへ向かう途中、公孫戍より、これから夏侯章を迎えに行くとの連絡が入ってくる。
 途中、小田急下に寝そべる追放者を発見。予想通りの動きだ。
 映画三昧だという師匠と映画の話を弾ませる朕だったが、朕の話す内容はあまりにも下品だとの指摘を受ける。
 下ネタが多いのは夏侯章の影響であるといって、全ての罪を夏侯章になすりつける朕であった。
 しかし師匠はいう。
 同じ下品な内容でも、貧賤なる身分のものが話せばいかにも野卑に聴こえるが、貴人が話せば下品ささえも気にならない、と。
 どうにも埋まらない、君子と小人の格差。
 いくら世の嘘つきたちが、やれ平等だの民主主義だなどと謳っても、人それぞれ生まれ持った性は違うもの。卑しい嘘つきたちが先進的な思想とやらを掲げ、時代に合った規範とやらを設えたところで、病はこじれ悪化するだけである。

 韓流ポイント到着。
 ポイントに主君の姿は見えなかったので、しばし師匠と共に夏侯章の到着を待っていたが、そろそろ映画が始まるとのことで師匠は撤退。
 朕は独り、主君の到着を待つ。

 程なくして夏侯章と公孫戍が現れる。
 手マンポイントにバスは見えていて、ルアーへの反応も良い。
 しかし、バイトを得るための決定打は見出せず、朕はこのポイントを諦め、伝説を釣りに行くと言って堰下エリアへ行くことにした。

 堰下エリア。
 足マンキー場から堰直下までを流して行くうちに、中間の瀬落ち込みポイントで二度のストライクがあったが、いずれもリーリング中にフックアウト。
 もうひとつの降臨が起こっていれば「アタったとかバレたとか、そんな話は聞きたくねーんだよ!」と、プレミアをちょうだい出来たかもしれないが、この日、ゾッド将軍の姿が見えることはなかった。

 韓流ポイントに戻る。
 昼間の暑さによる疲れがどっと押し寄せてくる。
 朕が堰下に入っている間に、公孫戍はペケニシモなサイズながら3匹のスモールマウスをキャッチしたとのこと。
 朕は「ああ、そのサイズかあ」と、汚ねえ唾を吐きかけてやれなかったことを悔やんだ。
 既に20時も近い。
 そろそろ僕たちは今恋をしているコンビニへ、という気分だったが、公孫戍は細君に無言の門限を定められている身であるため、門限に間に合うぎりぎりまで釣りをしていたいという。
 釣果を諦めている朕はこの間、夏侯章と漆園の誓い実現のための具体策を論じ合ったり、公孫戍と伝説論を戦わせていたが、遂に何事も起こらぬまま刻限が来てしまった。
 何かと寂しいまま帰るのは切ないものだが、我々は「お疲れえ!」と、口だけは勇ましい伝説三輪式で解散とした。

 窟前に戻ってみれば、窟前の土手に追放者が寝ていた。
 夏の装いになったとはいえ、窟の中は暑すぎるのだろう。
 こんな思いをしてまで果たさなければならない使命とは、夜中にやって来る猫への餌やりだという…。

 ボーズに終わってしまったので「メシなんか食わねえぞ!」と、ブチキレるのもありだが、結局空腹に耐え切れず、容易に言を翻すのはあまりにもみっともない。
 朕は三輪氏のような愚は犯さず、帰宅後素直に空腹に対処した。
 食事を終え、あとはシコるだけだと構えていたところ、公孫戍よりメール着信。
 予定がずれ、鬼の居ぬ間の洗濯が可能な状態になり、独り韓流ポイントに戻り、キャッチしたとのこと。
 勿論朕は「そこまでして釣りてえか」と、そこまでしても所詮釣れないレジェンドⅠ、Ⅱ共通の汚ねえ唾を吐きかけてやった。












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明日にかける希望

 6月8日。

 伝説の三輪車の健在が確認できた今、伝説と伝説の対決も逸脱した夢想ではないと知り、安堵の中にあった昨晩、降臨跡上流に入っていた侯嬴こうえいより、ナマズを2匹キャッチしたとの報が入ってくる。
 伝説の風が止んでから知り合った釣り廃人たちは実に良く釣る。
 他所のフィールドでも多摩川でも、自分だけはほとんど釣れていなかった修羅が今も健在だったらどんな唾を吐いてくれるのだろう。三輪車の健在は楽しい夢想を掻き立ててくれる。

 迎えた当日。
 堰下エリアにもうひとつの伝説降臨を期待するには遅すぎる時間に目覚める。
 そこで、苦手としながらも釣れないこともない居る魚を釣るために中野島エリアに行くことにする。長潮でもあるので、尚更、魚が居るとわかっている場所で技巧頼みの釣りをするのが最善だろう、という訳である。
 スティッコー、ファットアルバートイモを使いまわしがむばってみたものの、結局ペケニシモのスモールマウス5粒で終了。
 せっかくのポイント独り占め状態にありながらも二桁釣果の壁を破れず「オレだってちゃんとやってるよ!」と、伝説三輪泣きする結果に終わる。
 ちゃんとやってたなら、自分だけ釣れずに泣くこともなかっただろうに…。





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三輪、彼に在り

 6月6日。

 一昨昨日のことである。
 朕はその身を娑婆に置いてうつうつとしてこころたのしまず過ごしていた。
 そこへ、日曜日の登戸で50には届かぬが40後半というスモールマウスを公孫戍がキャッチしたとの報が入る。
 そしてその翌日、朕も釣行可能な時間はあったが、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気のためどっぷり眠ってしまい機会を逸してしまった。
 そこへ、公孫戍が韓流ポイントでスモールマウスを5匹、侯嬴こうえいが降臨跡上流でナマズを2匹キャッチしたとの報が入ってくる。
 この釣れる状況にあって、根性が無えために逃してしまった朕は悔しくてならず、「おめえら新川では釣ったことないよな。大したことねなあ…オォーイ!」と、泣きキレた。
 更に昨晩、侯嬴は降臨跡上流で2匹のナマズをキャッチしていた。
 朕は使い古された伝説式で僻むのみだが、もし今でも修羅が健在なら、きっと時宜に適った素敵な僻み文句が出てくることだろう。
 結局、「多摩川のナマズはトップ引いてくるのがパターン。つまらねえ釣りだ」と、伝説三輪式を流用するしかできなかった。

 伝説の三輪車が健在であることを知ったこの日、夕刻から五本松に入る。
 雨と地勢、時期を考えればここでまとまった数のナマズをキャッチできるのではないかと考えてのこと。
 予想通り、日没と共にナマズがやってくるのが見え、水面、水面直下で三度のストライクを得ることができた。が、アタったとかバレたとか、そんな聞きたくもねー話に止まる。
 しかも、すべて針掛かりさせていたためにポイントを潰してしまったかのような気配。その後、次の個体が現れることはなかった。
 せっかくの好機を逃してしまったのは腕のせいといわねばならないが、新川で鍛えた僭称釣りウマとしてはそんなことを認めてはいけないだろう。
 朕は釣り廃人たちにこの結果を伝えると共に「釣れなくても関係ありましぇ~ん」と、涙目になりながらも強がって見せた。
 すると、本降りになる前まで中野島エリアに入っていたという公孫戍より返信あり。
 4匹のスモールマウスのキャッチに成功したとのこと。
 これを見て、先ほどの偽りの強気は呆気なくめくれ、「おめえばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、泣きキレてしまった。

 そもそも何故、修羅は後年、あんなにも己を取り繕うことに必死だったのだろうか。多摩川史に於ける一大ミステリーである。

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プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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