賽丹朱、或いは賽商均列伝

 3月18日。

 世間が三連休に入った初日。
 伝説諸氏の降臨はあるのだろうか。
 ただでさえプレッシャーがかかっている昨今。いかにベイトが豊富だからといって、容易にフィーディングに出てくるとは思えない。
 片や“勝ち組”。まとまった休暇があるのなら“オジンにはわからない新しい愛の形”を、メールと金のやり取りより先の段階へ進めようと尽力するだろう。
 片や一流企業にヘッドハンティングされるやり手。世間の休日とは無関係に新規プロジェクトかなんかに忙殺されているかもしれない。
 
 穏やかで温和な休日である。
 日中は多くの釣り人が訪れ、ポイントの確保が困難だろうと予測されるので、ハンドルのがたつきに起因する振動がシェイクするたびにグリップで増幅されてどうにもならなくなるぐらいどうにもならない眠気を解消してから出るのがちょうど良いかもしれない。

 目が覚めれば15時を過ぎていた。
 日は長くなったが、夕刻を臨む時間帯である。
 今回は“実験ネタ”或いは“伝説式保険”を用意できないままの現地入り。ボーズを食らって自尊心が傷付きそうになったら、伝説三輪氏のように泣きキレたり、皮肉と称する僻みの言葉で対応するしかない。
 ちょうど公孫戍こうそんじゅ夏侯章かこうしょうが移動しているところだった。
 上流側で侯嬴こうえいに挨拶は出来たが、魚の気配は希薄だったとのこと。
 公孫戍が向こうの伝説ネタを仕込んできており、偽造一流企業社員証を入れられるパスケースを頂戴する。あとはPC環境さえ揃えれば、通行証を偽造して、電通や森友といった旬の一流どころの関係者を装えるし、KENcraftの社員になりすますことだってできるので、不意に知り合いに出くわした時も鼻の高い思いができる。

 ポイントには下野さん、李立、童威の姿あり。
 昨日は下野さんが4匹、李立が6匹のキャッチに成功し、今日は下野さんが1匹釣ったという。
 そんな話を聞かされたら、薄目を開けた白目状態で「オレはよお、おめえらと違ってガチじゃねえからよお」と、レジェンドⅡのように半泣くしかない。
 釣り人の数は思った以上に少なかったが、新川節を謳うには十分な数は居た。
 明るい上に波も弱い今、巻いて釣りたい朕のやり方は厳しいかもしれない。しかし、巻いて釣るための勢の捉え方を掴んだような感触を得て以降、ボトムのスローな釣りの集中力が無くなってしまった。スティッコーやファットアルバートグラブをスプリットショットリグで引いてみることはあっても長く続けられなかった。 
 そんな時、ワームとはこう使うのだといわんばかりに李立がノーシンカーリグでキャッチ。
 間を置いて童威もキャッチ成功。
 こちらもノーシンカーリグで。

 光量が落ちてからは朕も集中力が高まる。
 「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」とアナザーギレされることもあったが、表層でのキャッチに成功する。
 表層だけがよかったのかというとそうでもなかったようで、ボトムを引いていた童威もキャッチ。
 やがて終了の時刻を迎える。
 炸裂という展開には程遠かったが“釣りという低レベルな競争”から卒業しなければならないほど釣れていないわけでもない。
 最後まで粘り続けていた夏侯章に結果を尋ねる。
 「2回アタリがあっただけだったよ」と言うので、満場一致で「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」と、もうひとつの伝説式で締めくくった。

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実験伝承

 3月16日。

 昨日、施恩より、ドブの様子が伝えられる。
 バチ抜けは起こっていたがルアーでは二本が精一杯で、エサで数を稼いだとか。
 「エサで釣ったのがそんなに不満か?ルアーだってさんざん引いたさ!でも釣れなかったんだよ!」と、泣いてブチキレ電話をしてくるかと思っていたが、伝説三輪氏のように勝手に追い詰められるほどの必死さはなかったようだ。

 この日、開封府に戻ってきた。
 ただの三日空けただけで、長く釣りをしていないという感覚に陥り、不安が生じる。この調子では、思うように釣れないからといって「釣りという低レベルな競争からの卒業式」と、格好つけての逃亡などできないだろう。
 帰宅後、すぐに多摩川へ向かう。

 現地入りしたところ、予報では北風だったが、実際には南風が吹いていた。
 張良、蔡沢の姿を発見。
 張良は一匹釣ることに成功したとのことだが、バスのラインに対する怯えが顕著だったという。
 バスの入りが悪く、プレッシャーが強くかかっているのなら、朕に釣るのは無理だ。
 蔡沢は下流域にマルタの様子を見て回って来たというので、聞いてみれば、状況は朕が見てきた時と変わっていない。
 ウォーターマフィアとその親玉をにくむのみである。

 風の当たる一帯が思いの外よくならないので、移動。
 先客にナマズさんと童威。
 ナマズさんは今日一匹釣れたが、その後長らく反応を得られていないという。
 童威は釣れなかった時の言い訳、伝説式保険を用意してきていた。
 「今日はジャッカルのこれで釣れるかの実験」
 13センチのジャークベイトだった。
 なるほど、このクラスのプラグを引けば「男らしい釣り」と、三輪氏のお褒めにあずかることができるし、釣果を出しても「お前の釣りはつまらん」と謗られるおそれも無い。
 レジェンドⅡの難を逃れたくば、現在の状況に合っているかどうかの考慮は、二の次、三の次なのである。つくづく僭称釣りウマの感覚は恐ろしい。なるほど、自分だけ釣れなくていじけてしまうのも納得である。

 ナマズさんが撤退するころ、蔡沢がやってくる。
 上流側は不発だったようだ。
 陽が傾き、スモールマウスの姿を見たり、ボイルが発生するようになる。
 マニックにバイトは出たが触るのみで、フッキングまでには至らず。
かなり手前にも来ているのが見受けられたので、魚を怯えさせぬようベートをワンダー45に落としてみた。
 キャッチには成功したが、そんな小さなルアーを使って「男らしい釣り」と言えるのか?と、童威が疑問を投げ掛けてくる。
 伝説三輪氏のこれまでの言動を考慮するならば、ハードであれば何であれ男らしいのだ。
 何か勘違いしてねえか?というところではあるが…。

 表層で釣れるならば、ということで、蔡沢が伝説式保険を披露。
 「自作のスイミングジグで釣れるかの実験」だそうである。
 しかし、これは、今ここで釣れるとは限らないが、フィッシュイーターを惹き付ける要素があるというところにあざとさが見える。
 オリジナルの伝説的実験とは、何もわかってないことを誤魔化すための方便だったのだ。

 次の釣果を期待しキャストを続けたが、魚はない。
 蔡沢が撤退し、朕も帰ろうと思っていたが、童威が「釣れるまで帰らん!お前も付き合え!」と、伝説式を発動。
 かつて、この種の故も無い粘りが功を奏したことがあっただろうか。そして、やはり何事も起こらぬまま納竿の時が来てしまった。
 釣果自体は冴えないものに終わってしまったが、さりげなく民が伝説の心を我が心として扱っていたことに安心し、この日は終了となった。

 ※マー語


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無限の岸辺

 3月12日。

 ハンドルのがたつきに起因するどうにもならない振動は、リールをがたつきの無いステラにすれば解消できるということは伝説三輪氏が教えてくれた。
 しかし、ステラを持っていない朕は今日も安物リールで頑張るしゃない。
 帰宅すると、多摩川入りしているという施恩より「釣堀状態」「伝説不在」であるということが伝えられる。
 「15分で準備しろ」と、伝説三輪式で脅されたものの、「オレはおめえと違ってガチじゃねえからよお」と、これまたレジェンドⅡ式で返答し、しばし仮眠をとってから出発することにした。

 夕刻手前にポイント入りしてみれば、釣堀状態は解消されており一安心。
 江三子と童威が居たので「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、お定まりの挨拶をする。
 童威と親しげに話す少年は、先日軽く挨拶したやつだ。王孫賈おうそんかの仲間の斉人だという。
 斉人には蕃人には無い粋が備わっていて、この少年には工芸の才があった。飛びは悪くとも、動きと見た目の良いノイジープラグは自作だとのこと。
 下野さんは、今日はまだ一匹しか釣っていないとのことだったが、昨日は6匹という釣果をたたき出し、他にも童威、蔡沢さいたく、ナマズさんがそこそこに釣れていたとのこと。
 そんな中、夏侯章かこうしょうはバラしのみに終わったというので、朕は夏侯章に近付き昨日の結果について聞いてみた。
 「うん、みんな釣れてたけどオレはダメだったよ」
 期待外れの回答だ。
 そこへ公孫戍こうそんじゅがやってきて「D氏が何を期待してたのか気付いてやれよ!」と突っ込んでくれた。
 朕は梶原一騎ばりに「いいヤツ!公孫戍!」といった。
 「あ、アタリはあったけどバラしちゃったよ」
 時既に遅く「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」と、アナザーギレするタイミングを失ってしまった。
 伝説諸氏の話で盛り上がりつつ、一流企業の通行証を首からぶら下げるなら電通か、東芝か、あるいは豊田商事かというところまで話が進み、ポイント移動。

 移動した先には伝説三輪氏のベイトになりそうな釣り人が何人も居た。
 自分の世界では釣りウマな人の講釈を聞かされ苦笑いしている見ず知らずの釣り人…今日も見ることが出来なかったのは残念としか言いようが無い。
 これだけのベイトが居て何事も起こらないのはプレッシャーのせいであろう。

 陽が傾き、釣り人の数が減っていく。
 公孫戍の肩にも限界が来たようで、一足先に撤退するという。朕は「おめえはそれで悔しくねえのか」と、礼儀正しく送り出した。
 斉人の少年が再び現れ、童威とああだこうだとやっている。そのうちに童威が魚を手にしていた。
 今年見た中でもっともペケニシモなスモールマウスではなかろうか。
 これはこれで記録級だ、ということで喝采。
 コアユをキャストする下野さんは何度かバイトを出していたが、フッキングが決まらない。誰もフォローしてくれないので、朕は下野さんに「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」と、アナザー式でキレてやった。

 表層攻めに徹する朕が「釣れましたか?」「アタリはあるよ」から先へ進めずにいた頃、気付けば童威がまた魚をキャッチしていた。
 この魚もボトムを探った結果だという。
 状況的には表層で良いはずだと信じて疑わない朕は、泳ぎ、サイズ、カラーをこねくり回しやっとの思いでキャッチ成功。
 ここでは自分の釣果に箔をつけるために「今日のオレの仕事は終了」と、伝説三輪語録を用いた。
 ほぼ同時に夏侯章も釣果を得ていたので、釣れないからといってレジェンドたちのように荒れたり、泣いたり、キレたりする者も出ず、平和のうちに終わることが出来たのだった。

 ※マー語

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保険尽くし

 3月10日。

 ワンダー60を買うつもりでカースティングに行ってみたが、ワンダー60は無かった。
 シーバスには小さく、釣堀トラウトやメバルには大きいというイメージのためだろうか。
 そこで、似たような役割を果たすと思われる、スピニングロッドで投げ易そうなシンキングのスティックベイトと、マダイ用ルアーを買ってみた。
 ワンダーならば「手堅さに走って自分らしさを見失ってると思わねえか?」と、伝説式自己批判の対象になってしまうが、実験ネタともいえるこれらのルアーを使えば“冒険心”を発揮したことになるので、この日の釣行のことが知られたとしても「お前の釣りはつまらん」と謗りを受けることは無いだろう。

 豊富な実験ネタ、伝説式保険と共に現地入りしてみれば、ナマズさん、李立、童威、若きベテランの友人氏。
 「おめえらばっかポイント独り占めしてんじゃねえよ!」と、お約束の挨拶。
 どうやらぽつぽつと釣れているようで、期待が高まる。
 到着からさほど待たずして童威がキャッチ。
 これからアルバイトだとのことで撤退する。
 釣果を出してしまった以上「おめえはそれで悔しくねえのか」と、伝説式してやることができないのは残念である。
 更にナマズさん。
 李立。
 若きベテラン友人氏も続く。

 すべてボトム攻めの釣果であり、普段この一帯で釣れる魚よりサイズが良い。次の動きに入ったスモールマウスの一過を捉えたかのようだ。
 「釣れてるやつの真似しねえと、見えるものも見えてこねえぞ」という伝説三輪氏の名言を実践し、キャロライナリグをキャストしてみたものの、巻いても釣れる条件ができているように思われたので長続きはしなかった。
 「みんなワームやってるな。オレはルアーにこだわるよ」と、カッコつけてた人の真似をして表層系プラグを引く朕だったが、反応を得られることは無かった。

 陽が落ちて、日中に釣れた者たちは次々に帰って行った。
 朕は一人残り、日中に釣れた個体とは違うタイプの魚を求め、粘り続けた。傾向として、この魚は総じてサイズが小さい。
 しばらく経つとマニックにバイトが出たが、ジャンプでフックアウト。遠目にもわかる小ささだったが、キャッチ出来ると出来ぬでは天地の開き。
 「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」である。
 しかし、今日はあのルアーたちが釣れるかの実験だったので、釣れなかったとしても仕方のないことであり、自分がヘボいからではないのだ…と、伝説式遺産のおかげで救われた気になって納竿とした。

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でんせつまみれ

 降臨元年3月8日。

 かつて多摩川は登戸に君臨した二人の王は、ついに交わることは無かった。両雄並び立った時代は多くの名言を遺して消えていった。
 別の場所で伝説を見てきた朕と公孫戍こうそんじゅは、この日申し合わせることもなく同時に登戸に到着していた。
 ヘッドハンティングされた風を装う工作の拙さ、見え透いた偶然を装うのはどんな益を見込んでいたのか。
 或いは、身内の者が釣りを再開するという口実を設け、一度は譲ったはずの道具を取り上げることに正当性はあるのか。
 傍目には何の得も無いような行状も、伝説諸氏には非常に重要な事項だったようだ。
 皆、空き時間を設け、釣りを目一杯楽しもうとする者が自然と集まり、世間のしがらみとは無関係に過ごす楽しい場として過ごしていたつもりだったが、彼らにしてみれば、いつぞやの殺人犯が言っていた“大人同士の心の戦い”の場だったのかもしれない。
 そんな思い出などを語りながらキャストしていたが、降臨跡の印象は芳しくない。
 
 移動。
 移動した先にはナマズさんの他二人の先客。
 ナマズさんが「彼らはさっき結構釣れてたよ」という。
 よくよく見れば、この先客は若きベテランとその友人だった。詳細を聞いてみると、調子が良かったのは水が動いている間であり、その頃はバスの群れが目に見えるほどだったという。しかし流れが止まってからはまったく反応が無くなったようだ。
 様子見ていどで来ていた公孫戍が帰るのを機に「なんだ、もう帰るのか。だらしがねえなあ」と伝説三輪式で見送り、朕自身は無いと罵られていた“冒険心”を発揮し、堰下エリアの様子を見に行くことにする。

 堰下からポリ公練習場まで見て歩いたが、マルタは見えることがあってもその数はあまりにも少ない。
 ウォーターマフィアの所業が妨害していることは明らかだ。
 せっかく発揮した冒険心も、貧相な川の流れと、殺意さえ覚える嘆かわしい現実を見せられるのみだった。

 堰上に戻る。
 李立、蔡沢さいたくの姿が見える。
 蔡沢は一本キャッチできたとのこと。
 ふらりと現れ何気に釣果を重ねている、地味ながら腕利きの職人と言ったところである。方々の話を聞き、自ら歩いてみたことから総合すると、今はここでスモールマウスを狙うのが無難のようだ。
 李立が今晩シーバスを釣りに行くのでどうか、と誘われるが、朕は体力的に厳しいということで断った。「だらしがねえなあ」と伝説三輪する十代だが、おそらくその体力的衰えは朕より早くに来るだろう。今は生命力に支えられた一時的な勢いでしかないのだから。

 長い沈黙が続き、光量が落ちてきた頃、若きベテランの友人がようやくバイトを捉える。
 若きベテラン曰く「大きいねえ、あと40センチあれば!」と囃し立てる。その言葉を受けて、朕も撮影にカナモ式を試みた。
 しかし、これが限界だった。
 連日誰かが釣っている。
 消えかけた伝説も、新川では釣れたことの無い大したことねえ連中でさえ釣れているのだから新川で鍛えた自分ならノーシンカーワッキーで…と、再び意欲が湧いてくるに違いない。

 釣り人が次々に去って行った後も、朕は一人残りキャストを続けた。
 プレッシャーが緩和されれば、バスは浮いて来るはず。どんなベイトがベストなのかは試してみなければわからない。
 マニックにバイトが出る。
 自前釣果でページを飾れると喜んだのも束の間。呆気なくフックアウト。
 「アタったとかバレたとか、そういう話は聞きたくねーんだよ!」というアナザー式にもめげずにキャストを続けたが終了の時間が来てしまった。
 「ハードだってさんざん引いたさ!でも釣れなかったんだよ!」な、三輪泣きでの撤退である。

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プロフィール

dragon

Author:dragon
天に替って道を行おうとする人。
玉帝の導きに従い、非凡なる境地を目指している。

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